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2022年12月の記事一覧
「愛するということ」を補強するーミニ読書感想「エーリッヒ・フロム」(岸見一郎さん、講談社現代新書100)
岸見一郎さんの「エーリッヒ・フロム」(講談社現代新書)が勉強になりました。100ページ程度の短い分量でまとめた「一気読みできる教養新書」を銘打つ「現代新書100(ハンドレッド)」シリーズの一冊。フロム氏の名著「愛するということ」のファンでしたが、その内容を補強できるコンパクトな内容になっていました。
「一気読みできる教養新書」と聞くと昨今話題の(問題視する声もある)「ファスト教養」の一種だと見る
連累と歴史への真摯さーミニ読書感想「過去は死なない」(テッサ・モーリス・スズキさん)
歴史学者テッサ・モーリス・スズキさんの「過去は死なない」(岩波現代文庫、2014年6月17日初版発行)が非常に勉強になりました。戦争責任とは少し異なる「連累」という考え方と、歴史の「真実」よりも「真摯さ」を追求する大切さを学びました。
連累(インプリケーション)とは、戦争責任とは少し異なる。著者は以下のように説明します。
もう70年余り以前の戦争の行為について、心の底から「今を生きる私たちの責
ホモ・デウスになる覚悟はあるか?ーミニ読書感想「セックスロボットと人造肉」(ジェニー・クリーマンさん)
ジャーナリスト、ジェニー・クリーマンさんの「セックスロボットと人造肉」(双葉社)が(言葉は適切か分からないが)面白かったです。タイトルが非常に刺激的ですが、性愛、食、そして妊娠出産、死(人生の最期)という人間の根源的な四つのテーマについて、劇的な変化をもたらすテクノロジーの現在地を取材して回った好著です。
ロボットと性愛を交わし、生身の人間は必要ない。高級牛肉を工場で、細胞から生産する。人間では
この本に出会えてよかった2022
今年も決して楽な一年ではありませんでしたが、傍らにはいつも本がいてくれました。世界全体が激変する一年でもありました。その激動に困惑する頭と心を整理してくれたのもまた、本でした。中でも「この本に出会えてよかった」と思える10冊を選び、紹介したいと思います。
思い起こしてみて、素晴らしい本は、また別の素敵な本を連れてきてくれるとしみじみ感じました。それぞれが結び付く関連本もなるべく触れていきたいと思
幸せ志向を脅迫的だと感じる人へーミニ読書感想「ハッピークラシー」(エドガー・カバナスさん、エヴァ・イルーズさん)
心理学者エドガー・カバナスさん、社会学者エヴァ、イルーズさんによる「ハッピークラシー 「幸せ」願望に支配される日常」(みすず書房2022年11月1日初版、高里ひろさん訳)が面白かったです。テクノクラシー、メリトクラシーなどの言葉があるように、ハッピークラシーは「幸せ至上主義」「幸せ支配」とも言える造語。ポジティブ心理学など近年の前向き志向を痛烈に批判します。「市場価値を高める」といった昨今のバズワ
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