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金融市場を脅かすグリーンスワンの存在 (環境金融)

最近米ハイテク株の上下乱が「クジラ(後にソフトバンクや追随した個人投資家と判明)」によっもたらされたとの話が話題になっているが、金融市場には他の動物も時々現れる。その中でも近い将来いつか、金融市場に「グリーンスワン(緑色の白鳥)」が現れるのではと囁かれている。

グリーンスワンとは

グリーンスワンとは、地球温暖化等の気候変動が将来、私たちの生活を大きな悪影響を及ぼし、金融市場を大きく乱す金融リスクの呼称である。金融マーケットにおけるブラックスワンの一種である

ブラックスワンとは、マーケットにおいて(1)めったに起きず (2) 事前にほとんど予想できず、(3) 起きたときの衝撃が大きい事象のこと。従来、すべてのスワン(白鳥)は白色と信じられていたが、オーストラリアで黒いスワンが発見されたことにより、鳥類学者の常識が大きく覆された。これにちなんで、確率論や従来の知識や経験からは予測できない極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与えることをブラックスワンと呼ぶ。具体例としては2008年のリーマンショック、最近では2016年6月の英国EU離脱、12月のアメリカのトランプ大統領当選などが挙げられる。(参照: SMBC日興証券)

いかにして「気候変動リスク」を数量化するか

「気候変動リスク」は簡単に数量化出来ない

現に中央銀行の中央銀行と呼ばれるBISの論文においては、

“Traditional approaches to risk management consisting in extrapolating historical data and on assumptions of normal distributions are largely irrelevant to assess future climate-related risks.”(過去のデータや正規分布の仮定に基づいた従来のリスクマネジメントのアプローチでは、将来の気候関連のリスクを評価検討することは全く出来ない)と断言されている。

なぜか?

通常のリスクマネジメント場合リスクを及ぼす原因の変数なり、同様のリスクが過去に生じた際の確率や影響のデータが分かっている。しかし「気候変動リスク」はそれらの応用が不可能に近く、独自のモデルを構築する必要があるからである。しかしその気候変動の経済モデルをたてる上でも様々な不確実性が伴う

例えば、

(1) 社会経済的不確実性

・私たちに人間がこれからどの程度環境問題を懸念し 社会生活を変容させていくか

・どの程度の政策がいつ推進されていくか (パリ協定など)

・もし気候変動が生じた場合、どの程度かつどの様に私たちはそれを対処するのか、できるのか(環境被害が今後より緊迫した時、果たして、私たちは従来のライフスタイルを一変させることができるのか)

(2)科学的不確実性

・気候変動が私たちの地球にどの様な影響を及ぼすのか

・パラミーターがどの程度か (どの程度の温度変化でどの量の森林がなくなり どの程度生態系に影響が出るのか)

(3)時間軸の不確実性 

経済インパクトを求める上で時間軸は重要である 5年後に1兆ドルの損害が出るのと 100年後に1兆ドルの損害が出るのでは現在その問題を解決するために必要な投資の額が異なる

(4)技術開発の不確実性

気候変動を和らげるための技術開発はどの程度進んでいくのか

極端な話 10年後に地球温暖化を止める技術が開発されるのであれば、今私たちはさほどこの問題を深刻に捉える必要がない


グリーンマーケットへの道筋

ではいかに私たちはこの「グリーンスワン」のリスクを金融マーケットに取り込んでいくのか

投資家レベルでは、

・グリーン債への投資

・持続可能な開発目標SDGsを意識している企業のグリーンな株式への投資 (ESG投資等)

つまり金銭的利益だけでなく社会的利益も考慮する「責任ある投資家」を増やす


金融マーケット全体では、

金銭的利益と社会的利益を近づける必要があると思う

例えば、金融商品の価格設定において社会的コストも考慮するなど


金融市場のカラーチェンジの必要性:ブラウンからグリーンへ

2008年金融危機以降「金融システムの強靱性」が叫ばれており バーゼル規制を始め多くの「金融システム」全体を安定させるための施策が施されてきた。しかし依然として金融市場に「環境問題リスク」は十分に検討され、金融商品の価格設定に取り入れられていないと感じる。

しかしながら、今年はコロナの影響もあり、グリーン関連の株なり債券がマーケット全体より多少アウトパフォームしている。個人的にはこれからより一層ブラウンな金融資産と比較しグリーンマーケットがホット(もっと...)になっていくと予想する。

私たちはCOVID-19という「ブラックスワン」を経験したことで、「新しい生活様式」が求められる今日、将来より大きく長期的な影響を及ぼすとされる「グリーンスワン」についてももっと真剣に検討していく必要があると思う。


ps 金融市場においてクジラなり白鳥なり海洋生物に喩えられるのは 金融市場が「フロー」によって成り立っており荒波を連想させるからだろうか...だとしたら 将来もし私が金融市場で働けるのならば、その荒波に必死に抗う昆布にでもなるのだろうか 


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