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1on1ミーティングの道具箱 - 第20回 プロのメンターが1on1のヒントとコツを紹介するシリーズ:リフレクション/内省

最終章のサブテーマはマインドセット/心のあり方。リフレクション/内省とは何か、考え方は必要か、役に立つのか、ご一緒に考えていきましょう。マネジャー自身の成長と1on1ミーティングにおいて部下の成長を促し、パフォーマンス向上を支援するリフレクションのヒントとコツをご紹介します。


継続的に結果を出していくには、粘り強さが必要です。
この記事を読む「3分ルーティン」を
ご一緒に続けながら現場で実践していきましょう。



「1on1ミーティングの道具箱 」シリーズ 第20回



現在地





はじめに



私たちは人生経験から身についた
よくない習慣に戻ってしまうこともしばしば。
それは自然なことであり、私を含む誰でもあること。

「1on1ミーティングの道具箱」シリーズで大切なことはこの3つです。



・失敗してもまた挑戦
・自分のペースで継続
・小さな進歩も楽しみ



全編でご紹介する道具(方法、スキル)をジム通いをするかのごとく
一つひとつ職場で実践しながら鍛えていきましょう



対話のスキルは筋肉のように日々動かす必要がある



ラポール・心理的安全性を形成する



3つの聴く態度/姿勢
自分らしく落ち着きと余裕を持てる
話を聞いて相手を否定したり、すぐにアドバイスせずに受け止める
話し手のものの捉え方・考え方・感じ方にそって理解しようとする



「1on1ミーティングのタイムライン」の全体図



参考例



部下/メンバーの成長と自律のため、「気づき」を「果実」とし
”気づかせて引き出す” 考え方、方法、スキルを主要素として構成



最終章 スキルを日々実践する



リフレクション/内省

                                                                                             ❕ ポイント/注意点





リフレクション/内省とは



辞書によると

Reflection/リフレクション内省/省察、熟考、反射などの意味
内省 = 自分の考えや行動などを深くかえりみること

人材育成の観点からは

リフレクション =
客観的に
失敗や誤りのみならず
自分がとった行動や考え方に対して見つめ直し
新たな気づきを得て
次のアクション(行動/行為)に活かし、つなげていくかを
「未来志向」で考えていく



理論的背景



図1.「70:20:10」の法則 = 米国のリーダーシップ研究機関である「ロミンガー(社)の法則



ロミンガー社が様々な経営者を対象に
何がリーダーとしての成長に役に立ったのかを調査。

7割を占める「仕事/業務の経験」を活かし学ぶためには
どうしたらよいのでしょうか?



図2. リフレクションの概念はデューイの経験的認識論とショーンの省察的実践家に由来している




経験的認識論



デューイは経験からの学びを2種類にわける
・試行錯誤的な経験からの学び
思考からの学び(リフレクティブシンキング)
  - 周りの状況の観察
  - 過去の似たような状況で起こったことに関する知識
     - 観察と知識をつなぎそれが何を意味するかについての判断
 この判断に基づいた見通しや展望があってこそ計画が策定できると説く。


ショーンはデューイの理論をもとに
行為の中のリフレクション
行為について/行為後のリフレクション
ふり返えるタイミングが異なる2つのリフレクションを提示。

実践思考能力をもつ実践家=省察的実践家という人物像を定義。

ショーンは経営学のみならず教育学にもパラダイムを大転換させる
衝撃を与え「ショーン・ショック」と言われることも。

詳しくみていきましょうか。



図3. ショーンの2つのタイミングが異なるリフレクション



不確実で不安定で矛盾に満ちた現場に身を置き
直面する問題は科学的に証明されることばかりでもなく
技術的合理性で割り切れることは案外少ない。

だから省察的実践家は何らかの状況に置かれたとき、
あらかじめもっていた知識や身についた考え方に基づいて解決しようとするのではなく課題を自ら設定し、解決し、ふり返る
このプロセスが省察(内省)的実践

ショーン自ら「行為の中でのリフレクション」には弱点があると指摘。

混沌とした現場に身をおいて次々と起こる問題に対処し、行為と内省を
くり返していると全体の方向感覚を見失い「問題の場当たり的な解決者
に陥ってしまうからだ。

行為について/行為後のリフレクション」は同様に重要。

行為後のリフレクションはときに痛みを伴う。
失敗経験を内省することはときに葛藤を引き起こしたり、それまで
信じていた知識や前提=持論を問い直す★ことにもつながりうる。
このプロセスを「アンラーン/unlearn」という。

改変/一部抜粋「リフレクティブ・マネジャー」 中原淳氏・金井壽宏氏著 2009



学んだことを忘れること?学ばないこと?アンラーンは学びの否定ではなくこれまでに学んだ知識や身につけた技術を振り返り、さらなる学びや成長につながる形に整理し直すプロセス。学びによる知識や経験をよりよく
活かし、長い期間活躍し続けるためのとても重要なステップ。


アンラーン(持論の問い直し)について関連する
図4.アージリスの「ダブルループ学習」と
「行為について/行為後のリフレクション」の重要性に関連する
図5.コルブの「学習モデル」を引き続き見ていきましょう。



図4. クリス・アージリス HBS 1980年代半ばに作成。次の10年で効果的ツールへ発展



シングルループ学習

行動によって得られた結果から問題解決を図り、その過程で学習する。
シングルループをくり返すことで改善に改善を重ね目標達成を目指す。

ダブルループ学習

行動はどんな前提(従来からの考え方/やり方)から引き起こされたものかというところまで戻って考え直し新たな行動や手法をあみ出す
ダブルループ学習が生み出す価値は既存の枠組みや前提が変わること
アンラーン)で本質的な問題を発見したり大きな変化を生み出せること。

変革/改革を目指すのならダブルループ学習をぜひおススメします!



図5.


ショーンの「行為について/行為後のリフレクション」に関連して
コルブが概念化した「行為後のリフレクション」

学習とは知識を受動的に覚えて応用するのではなく
自らの経験から独自の知見(持論)を紡ぎだすこと

この学習観に基づきコルブが打ち出したのが
・経験/実践
省察的観察/リフレクション
・概念化
・実践
4つのステージからなる「経験学習モデル


コルブの経験学習モデルの省察部分をさらに深掘りしたモデル
ギブズが提唱したリフレクション学習サイクル

図6.を使ってもう少し詳しく見てみましょう。



図6. 学習サイクルはバルマンによってアップデートされた 2013



特に💭の問いに注目してください。


❕ 
記述・描写のプロセスが事実をベースにしたステップだとすると、
感情の表出は主観をベースにしたステップといえるかもしれません。
ビジネスの世界では個人の主観/感情といったものは敬遠されがち
ですが、リフレクションを個人の価値観や信条まで有意義に深めるには
不可欠なステップ
であり問いであると考えます。



時系列に理論やモデルを追ってきましたが、ここまでいかがでしょうか?
リフレクションの全体像が見えてきましたか?


リフレクションの重要性は認識できているものの、
そのプロセスを細分化してモデルにまで昇華されたことによって
リフレクションを具体的に実施できるようになるでしょう。



対話と記述



対話


対話は他者を理解すると同時に自分自身についての理解を深める
リフレクションの機会になります。

他者と話すときは自分の話を他者にうまく伝わるように、他者が理解
しやすいように話す必要に迫られるので、さまざまな概念整理を行います

つまり、リフレクションが深まるとともに自ずと概念化ができ
行動/経験が真に自分のものになっていきます。



記述


他者との対話によるリフレクションは簡単で受け容れやすいですが
書くことはより深いレベルのリフレクションにつながります。


❕ 記述によるリフレクションの学習ポイント

経験の描写:ふり返りたい場面について5W1Hを使って具体的に描写
感情:その状況の中で抱いた感情どんな気持ち思いになったか
評価:自分の行為/行動は何がよくて何が問題であったと考えるか
分析:その行動について自分自身に気づいた事どんな知識を適応したか
学び:総合的に考え他にできることはなかったか。必要な知識やスキルは
行動計画次に同じような状況になったとき、どんな行動をとるか



あなた/マネジャーが自身のリフレクションと
1on1ミーティングでの部下のリフレクションを促すための
ギブズの「リフレクション学習サイクル」に沿った
「問い」の例をみてみましょう。



図7. 話す・書く



経験から学び、気づきを言語化、見える化する。
日記などでも使える2つのフレームワークをご紹介します。



図8.



KDA



・ノートのページをKDAの3つのスペースに区切ってそれぞれの欄に
 書き出す方法
・付せんを使って思いつくままに書き出してから、それぞれに分類する方法
・タイミングはプロジェクトなどが終った直後、記憶の新しいうちに
・終わるまで待つ必要はなく、期間中に定期的にふり返りより良くしていく
・紙とペン。パソコンやスマホのメモ機能を使えばいつでも簡単



関連資料:メンターの「あんちょこ」# 3 理論をまなぶ



PDCA


PDCAサイクルは品質管理など業務管理における継続的な改善方法
C = Check がリフレクションにあたります。日常生活にも活かせます。



リフレクションを進めるのにダイアリー(日記)も効果的です。






いかがでしたか?



次回、10/2 第21回

最終章 スキルを日々実践する 「(マネジャーの)ジレンマ」
マインドセット/心のあり方、考え方をご一緒に考えていきます。



「1on1ミーティングの道具箱」シリーズを通して

複雑な状況をうまく処理したり、
コミュニケーション(会話/対話)を円滑に進めたりするために
一本やりではない、成熟したコミュニケーションができる「道具」を
身につけた「フレキシブルなマネジャー」を目指しましょう。



ポイント



リフレクションを通して経験から学び自分のものにする



メッセージ



ヘンリー・ミンツバーグ
カナダのマギル大学経営大学院のクレゴーン記念教授およびINSEADの組織理論学の教授



マネジャーが自分自身の経験の意味を理解するためには、多忙をきわめる日々のなかで、スピードを落として、一歩後ろに下がって、じっくり
振り返りをおこなう必要がある。

マネジャー育成は、現場の活動と落ち着いた場所での振り返りの間を
マネジャーが行き来しながらおこなうことが望ましい。

『マネジャーの実像』(日経BP社)



with all of my thanks and friendship



お知らせ

         


10/9 (日)「1on1ミーティングの道具箱」シリーズ 公開 お休み



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