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【一休宗純】高僧?破戒僧?彼の魅力を語る(草稿)

●はじめに

「一休宗純」
彼については「少しだけ」と断りながら紹介したり、「道歌(ここでは仏教について説いた短歌のこと)」を引用させて頂いたりもしました。

その度に彼の生涯についてまとめた紹介記事を書いてみたいなぁとは思っておりました。
彼は、若かりし頃から尊敬する人物のひとりでした。

●元旦だというのに

人生について、仏教のスタンスについて、彼から受けた影響は少なからずございます。
そんな彼について印象深いエピソードをひとつ紹介させて頂きます。

その日は元旦ということで、人々はごちそうに舌鼓をうち、派手な衣装に身を包み「めでたい」と年初を過ごしていました。

そんなお祝いムードもなんのその。
かの一休宗純は空気を読むどころかボロボロの衣を纏い、しゃれこうべを載せた竹の杖で街を練り歩くのでした。

その時にこんな歌を詠んだといいます。
「門松や 冥土の旅の 一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」と。

●正直やりすぎだと思いますが

その話だけを聞くと、「ずいぶんひねくれた坊主だ」と思わなくはないのですが、これは当時の世相も関係していたようです。

当時は乱世で、仏教の世界は堕落していて、栄華に酔いしれる者がいる一方で困窮した庶民が苦しんでいるような時代でした。

苦しんでいる庶民を救うのが仏教で、その使命を担うのが僧侶であるにもかかわらず、権威主義的で我欲を満たすことに腐心しているような現状に憤りを感じていたのでしょう。

だからこそ「浮かれている」富裕層の自宅に押し入ってはしゃれこうべを突き付けてそれを戒めたみたいです。

●パフォーマンスに長けた高僧

また、目立つ太刀を引っ提げて往来を闊歩していた時もあったそうです。
「なんで禅僧のあなたが刀なんか持って歩くのですか?」
と町の人々に問われた時、こう答えたそうです。

「いやこれは木剣で何の役にも立ちません。でも今の僧侶たちも同じようなものです。肝心な時に役に立たないのですから」

わざわざ木刀を持ち出し街を歩いてまで、身体を張って皮肉を言う、およそ徳の高い禅僧らしからぬパフォーマンスじみた真似をしてのけ、反権威主義を地で行く高僧。

それが一休宗純です。

●慕われた破戒僧

そんな一休宗純。彼は悟っている上で煩悩を隠さないスタイルで庶民の人気が高かった親しみやすい人物です。

以前「仏にも なり固まるは いらぬもの 石仏らを みるにつけても」という道歌を紹介させて頂きましたが、これは蜷川親正(通称新右衛門)と道歌を詠みあっている際に詠んだ一句だそうです。

蜷川親正は室町時代の武士で一休と親交の深かった人物です。
アニメ「一休さん」に出てくる蜷川新右ェ門のモデルです。

ただ、蜷川親正が一休宗純との親交があったのは、実際は彼の晩年頃だそうです。

肉も食べれば酒も嗜み恋愛もする。
かと思えば漢詩も詠めて仏法を修め博識でもある。

彼を慕う人々も多かったらしく、不思議な魅力を持っていた方だったようです。

●あの時代でよく言えたものだなと

そんな彼の歌をもう一つ紹介させて頂きます。
「ゆく水に 数かくよりも 墓なきは 仏をたのむ 人ののちの世」

流水に数字を書こうとしてもムリなんですけど、そんなことより「墓なきこと(儚きこと、に掛けている)」は「仏様どうか助けてください」とすがることだと説いている(皮肉っている?)んですね。

他のお坊さんからのヘイトがすごかったんじゃないかなと思います。
「よくそんなこと言えたな」とも思います。

ある意味、正直者だったんでしょうね。
「悟っていても欲望はありますよ。だから酒飲んで魚食べます。結婚もします」と。

●市井に生きる高僧

一休宗純は説法というより、生き様や(道歌を通しての)庶民との交流などで「仏の道」を説いた方なんだと思います。

彼の言動から、少なくとも「戒律を厳守し厳守させ、仏法を過剰にありがたがり、禁欲に徹すること」は悟りではないのかなと思います。

それからこんな風にも思います。
「出家していない一般の人の役に立たずして何が仏法だ、何が僧侶だ」という思いが彼にはあったのではないかと。

彼のやることなすこと全てを賞賛するのもどうかと思います。
なぜなら当の本人が、「仏をたのむな」と言っているくらいですから。

特定の何かを過剰にありがたがることもないのだと思います。

ですが、私はそんな一休宗純という出鱈目な高僧が好きだったりもします。

●参考文献

『心が軽くなる!一休宗純の生涯と7つの名言: 人間らしく生きる』
外川浩平 著

36ページとテキスト量も少なく読みやすいです。
一休宗純の一生と人となりが簡単にまとめられた書籍です。

温古堂文庫 『仏教説話4 一休和尚』 大屋徳城 著

先述した書籍より詳しく一休宗純について述べられています。
一休宗純と蜷川親正との交流で詠まれた道歌(短歌)が多く載せられている書籍でもあります。


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