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蔵元日記

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旭酒造会長桜井博志の日記です。
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#蔵元日記

蔵元日記vol.531【WEOY世界大会への参加記】

蔵元日記vol.531【WEOY世界大会への参加記】

安倍さんの暗殺事件で日本だけでなく世界がショックを受けたこの数週間でしたが、無情にも時は流れ様々なことが起こります。今回は、本来事件の前に書かなければいけなかった、モナコで開催されましたWEOY(世界アントレプレナー年次大会)の参加記について書きます。

それは特別な体験でした。このアントレプレナーとは起業家と訳されることが多いと思いますが、ただ単純に起業したからこういわれるのではなくこの大会にお

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蔵元日記vol.505【山田錦は捨てるところなし】

蔵元日記vol.505【山田錦は捨てるところなし】

獺祭が徹底的に精米された山田錦だけで造られるということは皆さんご存知と思います。近年では平均精米歩合も31%台になっています。ということはコロナ禍で生産の落ち込んだ昨年でさえ8,000トン強の山田錦を使用しましたから、その米粒の中心部分の2,500トン弱が酒造りに回され、残りの6,000トン近い米粒の外郭部分は米ぬかになるという計算になります。

一見、勿体無いように見えますが、どっこい、山田錦の

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蔵元日記vol.504【前回の宿題・獺祭がしなければいけない事】

蔵元日記vol.504【前回の宿題・獺祭がしなければいけない事】

(2021.2.13東北地震の前日に書きました)

具体的には、まず設備投資。昨年暮れに酒の搾り機(フィルタープレス)を2基増設しました。今まで8基だったからこれで10基になったわけです。近年、あるタンクの醪の搾るタイミングが来ているのに、搾り機にまだ他の醪が入っていて空かず、伸ばさざるを得ない事がありました。結果として、タイミングを逃して搾られた酒は、行き過ぎてたり若すぎてたりして、満点の品質と

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蔵元日記vol.503【前回の修正加筆】

前回の蔵元日記「終息しないコロナウイルス」の編で少し言葉足らずの点があり、読者の方から指摘がありました。それは世界のワイン市場の構成についてお話していた箇所で、「そしてフランスがなければカリフォルニアもチリも今とは違った形になっていたと思います。(イタリアだけは無くても関係ないかな)」、この下線を引いた箇所です。

確かにここだけ取り上げてしまうと「イタリアのワインは存在しなくていい」と言ったかに

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蔵元日記Vol.502【終息しないコロナウイルス】

終息しませんね、コロナウイルス。共産党政権下の中国はともかくとして民主政権下の台湾やニュージーランドが感染者数を抑え込んでいること、またお隣韓国と比べてもはっきり多い日本の感染者数(人口比で約二倍)。民族的弱点があらわになっているようで日本人としてはちょっとショックですね。

とにかく首相が悪いとか、自民党が悪い、いや厚労省の対応が悪いとか、危機感をあおるだけの知事やマスコミが悪いとか、犯人を作っ

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蔵元日記vol.501【2021新年ご挨拶】

蔵元日記vol.501【2021新年ご挨拶】

明けましておめでとうございます。
今年もより獺祭らしく努力したいと思います。

世界はコロナ禍で大変な状況です。1~2年で簡単に元に戻るとは思えません。だからこそ、今の状況を受け入れて、今、旭酒造にできることをしたいと思います。今年もよろしくお願いします。

ちなみに、昨年12月26日から発売になったモスバーガーの獺祭シェイクは、好評で売り切れが出ている店もあると聞いています。獺祭の甘酒を使ってシ

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蔵元日記vol.499【サザビーズ結果】

蔵元日記vol.499【サザビーズ結果】

前々々回の蔵元日記で獺祭をサザビーズのワインオークションに出品したと報告いたしましたが、結果が出ました。出品した6本の内、2本が843,750円、3本が810,000円、1本が759,375円で落札されました。

ちょっと凄いですね。おそらく飲食店の価格とかでなく日本酒の単体の価格としては史上最高と思います。「値が付かなくて赤っ恥を描くかな」と危惧はしていたんです、ホッとしました。

この獺祭はど

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蔵元日記vol.498【達人になりきれない方のために】

蔵元日記vol.498【達人になりきれない方のために】

前回の蔵元日記【酒飲みの達人】 https://note.com/dassai/n/nc116aa497a48?magazine_key=m68e45294b26a を読んでいただいた方で、「なかなかここまでできなくて」と言われる方のために、蔵元が勝手流ご指南を。

やはり、栓を開けた後はお酒の酸化は進むばかりですから、一升瓶の購入は3~4日で飲みきる自信がなければできれば避けていただきたいとこ

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蔵元日記vol.497【酒飲みの達人】

蔵元日記vol.497【酒飲みの達人】

前々回の蔵元日記( https://www.asahishuzo.ne.jp/diary/004634.html )を読んだ方からこんなお便りをいただきました。

(以下から始まります)

蔵元日記を読んで、、、
 
「一日一合」で「一期一会」

私は獺祭の180m瓶を何本か、丁寧に洗いへ乾燥させています。

新しい獺祭を開けたら、3本の小瓶にすり切りまで酒を入れ冷蔵庫で保管します。風味の劣化を防

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蔵元日記vol.496【サザビーズ】

蔵元日記vol.496【サザビーズ】

世界最古のオークションハウスであるサザビーズ香港に獺祭を出品しています。以前から「ワインと比べて日本酒の弱みは高額な商品がないところ」「世界でワインに伍していくためにはそのマーケットに切り込んでいく商品をつくることが不可欠」とよく話してきました。その第一歩が「その先へ」だったわけですが、いろんな方から「その先へのその先はあるのか?」と聞かれていました。

私たちのその問いに対する答えが今回のサザビ

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蔵元日記vol.495【新生獺祭続き】

蔵元日記vol.495【新生獺祭続き】

前回の蔵元日記・新生獺祭編を読んだ方からメールをいただきました。「昔の滋味のある酒は、磨きが80とか70だったということでしょうか。その旨み?を取り入れた新生二割三分、どんなお味・香りか?気になりました!」というものです。ありがとうございます。ぜひ、試してみてやってください。

ところで、僕が思っている「太古の酒」というのはもう少し古いものなんですね。室町時代には今の酒造りの基本的技法を確立してい

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蔵元日記vol.494【新生獺祭】

蔵元日記vol.494【新生獺祭】

最近の新生獺祭シリーズの「磨き二割三分」と「45」、どちらも酒としての仕上がりに自信があります。まず、きれいな香りとともに入ってきますが、口の中での味わいは何層かの複雑性にあふれていて、皆様をきっと魅了すると思います。

このお酒は、最初は築地の国立がんセンターの研究部長として在籍しておられて現在は東京医科大学の教授として研究に携わっておられる落谷先生の示唆で始まりました。(最近コロナ重症化を判別

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蔵元日記vol.493【獺祭BARオープン】

蔵元日記vol.493【獺祭BARオープン】

2013年に東京・京橋に開店した獺祭Bar、所期の目的を達成したからと一旦閉店しておりましたが、装いを変更して東京駅丸の内側の新丸ビル7Fにて10/1の17:00よりオープンいたします。(営業時間17:00~24:00)

この店は本来6/23にオープン予定でした事からお分かりのように、東京オリンピックで来日する外国人観光客に獺祭というか日本の魅力をアピールしようとして企画したものです。ところがご

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蔵元日記【読売新聞・時代の証言者そして「獺祭の挑戦」】

蔵元日記【読売新聞・時代の証言者そして「獺祭の挑戦」】

読売新聞8/18の朝刊からリレー連載の「時代の証言者」コーナーで私個人のこれまでの恥多き人生と、これも失敗続きの経営者人生が28回連載で掲載が始まりました。最初の第一回はニューヨークの酒蔵の話から始めて「超」かっこいいのですが、しかし、(このメールを読まれているタイミングですと、すでに二回目以降も掲載されているでしょうからご存知の通り)、それ以降は「超」かっこ悪い!!のです。

この周囲に翻弄され

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