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認知症も発達障害も脳の機能に関係するが、似て非なるものだという話


同居していた義父を、結局私は10年間介護しました。

義父は元々は物静かな温厚な人で、私にとても優しく接してくれました。
一緒にいる時は心が癒されるので、大好きな義父でした。

しかし、60代後半から性格が変わり始めました。
ネガティブな発言が徐々に増え、いつも不満を口にするようになり、
周囲の人の事は考えられなくなってドンドンわがままになっていきました。

6、7年も経ってからようやく義父の状態の正しい原因が判明しました。
前頭葉委縮による認知症「前頭側頭型認知症」だったのです。
すでにその頃の義父は、以前の優しかった義父ではなく、私に思いっきりわがままをぶつける、困った舅になっていました。

認知症というとアルツハイマー型を想像しますので、物忘れや徘徊、トイレの問題が浮かぶかと思います。ところが前頭葉委縮による認知症は、記憶力は全く衰えません。道順も過去の出来事も正確に把握できています。

発症時はトイレ問題はありませんでしたが、
徐々に出来なくなっていきました。困った事に意思はしっかりしているので、「オムツなんかしない!」「年寄り扱いするな!バカにするな!」
と、異常になってオムツや尿瓶の使用を拒否し続けました。
失敗は徐々に増えるので、対応が大変でした。

しかしなんと言っても一番の特徴は「こだわり」が異常に強くなる事です。


①何時にこれとこれを食べる(食べなければいけない!)
義父の場合は朝食は6時半、昼食は12時、夕食は18時きっかりです。1分でも遅れると大声で怒り出し、酷い時は私に向かって物を投げつけました。

食べるおかずやデザートも決まっていました。私が1品でも買い忘れると、やはり大騒ぎになりましたので、結局私は買いに走りました。

②衣服もこだわりの物があり、靴下や下着にいたるまで、毎日お気に入りの物しか身につけたがりませんでした。

義父がお風呂に入ったすきに、私は着ていた物を全て洗濯機に入れるのですが、お風呂からあがった義父は真っ裸のままパニックになりました。
私が用意したきれいな下着や衣服を着ようとしません!
バスタオルや毛布にくるまって、洗濯物が乾くまでギャーギャー言い続けていました。
いつまでも裸では風邪をひきますので、義父を力いっぱい押さえつけ、無理やり替えの服を着せました。

③「これが欲しい!」そう思うと、我慢ができなくなりました。
私が義父に「誕生日に一眼レフカメラをプレゼントしますね!」と言ったところ、その日の夜中2時頃、眠れない義父が私の部屋をノックしてきました。
「今日、何時に買いに行くんや?」「早く連れて行ってくれ!」

以上の事から考えても、前頭葉が委縮すると羞恥心が無くなっていき、人に対する気遣いの心も無くなっていくのを感じました。


義父の発症時は「鬱」と精神科でも診断されました。
何度か病院を変えて最終的にMRI検査で認知症とわかった時には、
義父はすっかり別人になっていました。
しかも萎縮は進んでいくので、状態もドンドン悪化しました。


一方、発達障害は、脳の各部位の機能や神経伝達回路がうまく機能していない状態です。
しかし、「できない」訳ではなく、情報処理の仕方を練習したり、自分なりの方法で対処するコツをつかめば改善していくことが多いことがわかっています。 ※(福祉保健局東京メトロの記事の一部を引用しました)


「こだわり」が強いという面だけで見ると、
前頭側頭型認知症と発達障害の状態が似ている面もありますが、同じではありません。

認知症は悪化の一途ですが、発達障害の場合は周囲に適応できるようになることが期待できます。


たおたおです。よろしくお願いします。


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