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事実は小説より奇なり「赤い十字」

<文学(36歩目)>
事実は小説より奇なり。なのですが、取りあえず「スターリン」なる者による影響が人々の愛をすりつぶしたのかを考えてみる。

赤い十字
サーシャ・フィリペンコ (著), 奈倉 有里 (翻訳)
集英社

「36歩目」は「1歩目」と同じくベラルーシのサーシャ・フィリペンコさんの傑作です。

素晴らしい才能の方で、今後も継続して読み込んでいきます。

この作品は、史実の沢山の記録や資料を委ねられたフィリペンコさんが、文学にしたものです。「記録」から読み取れるものを「伝える」ことについて、フィリペンコさんの様な才能があれば・・・と強く感じました。

旧ソヴィエトの国々とは、第二次世界大戦中にナチスドイツにぶん殴られ、戦後はスターリンに虐げられた国々と理解はしていましたが、出来の悪い脳の理解は「事実」の前にすっ飛びました。

驚異的な理不尽に直面した時に、人間がどの様な行動をとるのか?この行動を伝えるために、フィリペンコさんは、人類の課題となる「老い」「アルツハイマー型認知症」を利用しています。この組合せにより、「事実」からフィリペンコさんが伝えたいことが大きく炙りだされています。驚きの才能です。

そして涙腺崩壊に要注意。私は、電車の中で涙を流してしまいました。

つまらない凡人の感想ですが、「全体主義」という悪夢にならないためには「コスト意識」が重要だと思うものです。

「全体主義」の悪夢とは、「絶対的な独裁者」を放置したことによる。

でも、ナチスドイツもスターリン時代の旧ソヴィエトも、そして共産党下の中国でも。大日本帝国でも、客観的に「コスト意識」で考えると指示はメタメタです。

猜疑心と純化により、「コスト意識」が無い施策がガンガン出てくる。

(例:監視する対象者を監視する工作員、その工作員を監視する工作員。。。。これって、「コストは無限大に安い」が前提でないと成り立たない。つまり「コストを無視」するので出来るのです。気をつけよう!大義ばかり振りかざして、「コスト」を考えられない偉い人!です)

この辺りが、究極まで進むと本作品内のスターリン体制の旧ソヴィエトの諸国になります。

あ・・・こわっ。現代日本でも小さなヒトラーや小さなスターリンや小さな毛沢東って、どんどん出てきそうですね。

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