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短編小説

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茎を、切る

茎を、切る

 貝殻にあなたがびっしりと書いた文字の、そのかたちをよく覚えている。句読点の苦手なハルらしく、まばたきほどの隙間もなく敷き詰められた言の葉のその痛みが、ただ貝殻らしくひかりながらそこにあった。私の手にいっとき乗せられて、それから海へ帰ったんだ。それからハルも帰ったんだろう。今夜はどうやってかえろうか。わたしの白い椅子を延々ひいてくれるようなやさしい少年のくるぶしを夢想して、それからは、近くの薔薇を

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花纏

花纏

 夜を脱いだら朝になるはずなのに、ときたま夜を纏ったままの人がいて、そういうひとはすこし梨の匂いがして、近くによるとなんだか安心する。なだらかな丘をてっぺんから吸い込んだみたいに。ぼくは今日もそういう憩いを求めてさまようけれどなかなか見つからない。諦めて黒い革のソファにまるまれば、照りつく日差しが窓を透過してぼくに降り注いだ。
 わたしの猫は目覚めると家をゆっくり歩き回る。そうしてしばらくして、や

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