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おりたらあかんの読書ログ

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年間100冊を15年間続けてきました。でも、本当に知らないことばかり!というかアウトプットがまだ少ないなあと感じています。過去に読んだ本は「読書ログ」としてまとめてきたので、それ…
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2022年7月の記事一覧

帚木蓬生「ネガティブケイパビリティ」朝日新聞出版

帚木蓬生「ネガティブケイパビリティ」朝日新聞出版

副題は「答えのない事態に耐える力」とある。

Nagative Capabilityは文字通り「負の能力もしくは陰性能力」なのであるが、本著の定義付けは「性急に証明や理由を求めずに、不誠実さや、不自然さ、懐疑の中にいることができる能力」となっている。

この概念の起源はイギリスの詩人ジョン・キーツにあるという。
キーツはシェークスピアを評して「桁外れにNagative Capabilityを有して

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フィル・マッキーニ「キラークエスチョン」阪急コミュニケーションズ

フィル・マッキーニ「キラークエスチョン」阪急コミュニケーションズ

副題「常識の壁を越え、イノベーションを生み出す質問のシステム」
英題「Beyond the Obvious Killer Questions that Speak Game-Changing Innovation」

本著のゴールとプロセスは明確だ。一つが「当たり前」の再評価、もう一つが構造化された論理的システムとしてのイノベーションの理解。そしてゴールにいたる秘密兵器が「キラークエスチョン」と「

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スティーヴン・ホーキング「ビッククエスチョン」NHK出版

スティーヴン・ホーキング「ビッククエスチョン」NHK出版

副題は<人類の難問>に答えようとある。
100%文系人間の俺には到底理解できないと思いつつ、読んでみた。あまりにも有名だから説明はいらないとは思うが、一応整理しておきたい。

ホーキングは「世界で最も優れた科学者」として名を馳せたが、2018年、76歳で亡くなった。ご存じのようにALS(筋委縮性側索硬化症)であった。
21歳、ケンブリッジ大学院生時代にALSの診断と共に余命告知を受けた身でありなが

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蜷川幸雄「演劇の力」日本経済出版社

蜷川幸雄「演劇の力」日本経済出版社

6年前、80歳で亡くなった熱血演出家。その破天荒な演出は多くの俳優・思想家達をうならせた。市川染五郎、吉本隆明等、超一流ばかり。世界においてもその手腕は高く評価されている。

両親は富山県の貧しい農家出身。五人兄弟の末っ子だ。父親は埼玉県の川口で洋服店をしていた。母親は根っからのハイカラさんで、文楽、歌舞伎、コンサートにずいぶん付き合わされたそうだ。部分的ではあるが、俺の母親も似ている面がある。蜷

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三島清円「門徒ことば」法蔵館

三島清円「門徒ことば」法蔵館

県立図書館でぱらぱらと手に取ってみていたら、俺の永遠の師である鈴木大拙の名前が出ていたので、一気に読んでしまった。浄土真宗とは何の縁もゆかりもないが、こういう偶然の出会いはいろんなスペクトラムがあっていい。引用の中には南北線戦争時の無名戦士の詩があったりシューマッハーの話が出たりとなかなか面白かった。

浄土真宗の教えの相続には2つの流れがあるのだそうだ。一つは本山→末寺→門徒、一つは親から子や孫

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高志の国文学館編「堀田善衞を読む」集英社新書

高志の国文学館編「堀田善衞を読む」集英社新書

副題は「世界を知りぬくための羅針盤」とある。この本を編集した「高志の国文学館」は富山市にあり、令和の名付け親である中西進氏が館長を務めている。この文学館では2020年に「生誕100年記念特別展 堀田善衞―世界の水平線を見つめて」が開催されたりしているが、それもそのはず、堀田氏は富山県伏木市の出身なのだ。

俺は富山弁でいえば「たびの人(他県からきた人)」なのだが、富山県の人たちがこの堀田氏をあまり

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松村圭一郎「くらしのアナキズム」ミシマ社

松村圭一郎「くらしのアナキズム」ミシマ社

アナキズムというとすぐに「無政府主義」となるが、ここいうアナキズムは全く違う視点を提供している。国家の下にあっても、決して烏合の衆にはならず、「自らの生活、公共を守るための知恵を出し、潜在力を掘り起こしていく」ことを意味している。

当然、今自分たちがもっている常識、社会における前提のようなものを根底からとらえなおす作業が出てくる。その作業を起こすための資料としてまず著者はタイやミャンマーにおける

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佐藤洋一郎・渡邉紹裕「塩の文明誌」NHKブックス

佐藤洋一郎・渡邉紹裕「塩の文明誌」NHKブックス


「サラリー」の語源でもある塩。あまりにも身近にあるものだから改めて考えることもなかったが、シュメール文明の崩壊に塩が大きくかかわっていたこと、塩害が如何に恐ろしいものであるか、ということに初めて気がつかされた。

メソポタミア文明において画期的な発明であった「灌漑農業」が実は塩分の集積という塩害を確実に招来していたということ、十分な排水ができない国情になった時、経済に致命的な打撃を与えたというこ

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オルテガ「大衆の反逆」ちくま文庫

オルテガ「大衆の反逆」ちくま文庫


実際には白水社の「オルテガ著作集」で全文をよんだ。以前から「一度は読んでおかんと」と思っていた一冊。オルテガは20世紀初頭に活躍した哲学者、教育者、ジャーナリストであるが、スペインではオルテガ左派、オルテガ右派がその後生じるほど影響力をもった人物だ。

この著作が書かれた背景には米西戦争に敗れ、スペインのプライドがずたずたに引き裂かれたこと、第一次世界大戦後、ナショナリズムやマルキシズムの勢いが

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