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連載小説【知られざるアーティストの記憶】

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連載小説【知られざるアーティストの記憶】の本編を収録します。
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2023年9月の記事一覧

【知られざるアーティストの記憶】第13話 バンド・デシネの夢を語る彼に、マリは代替医療の提案をした

【知られざるアーティストの記憶】第13話 バンド・デシネの夢を語る彼に、マリは代替医療の提案をした

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第2章 入院2クール目と3クール目の間
 第13話 バンド・デシネの夢を語る彼に、マリは代替医療の提案をした

「あなたはバンド・デシネを知っていますか?」
マリはこの時、バンド・デシネを初めて聞いた。バンド・デシネとは、フランス語圏の漫画芸術のことで、彼はその作画をやりたいのだと言う。

芸術と美術は違う、芸術にとって大事なのはテクニックではなくて思想だ、そして、

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【知られざるアーティストの記憶】第12話 サムゲタンにリボンをかけて

【知られざるアーティストの記憶】第12話 サムゲタンにリボンをかけて

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第2章 入院2クール目と3クール目の間
 第12話 サムゲタンにリボンをかけて

それはカルディコーヒーで売られている、3,4人前はありそうな大きなレトルトのサムゲタンだった。サムゲタンが好きだけれど自分で作りはしないマリが時々食べたくなると買うものだった。半透明の袋に入れて細く赤いリボンをかけ、天使のレターセットに書いた思いとともに彼のポストに押し込む。

彼が自

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【知られざるアーティストの記憶】第11話 視線のぶつかり合う距離で

【知られざるアーティストの記憶】第11話 視線のぶつかり合う距離で

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第2章 入院2クール目と3クール目の間

 第11話 入院2クール目と3クール目の間 その5.視線のぶつかり合う距離で

2021年6月5日、彼は玄関の前で掃き掃除をしていた。マリの姿を認めたその目は好意的。柔らかく微笑んで
「この間はありがとうね。」
と言った。おそらく6月2日の朝に屋根の上の彼に手渡した手紙のことを言っているらしかったが、内容については特になかっ

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【知られざるアーティストの記憶】第10話 二人に共通する二つ目のキーワード

【知られざるアーティストの記憶】第10話 二人に共通する二つ目のキーワード

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第2章 入院2クール目と3クール目の間
 第10話 二人に共通する二つ目のキーワード

スナガマリの父親は経済学者だった。雑学も含め様々な分野に造詣が深く、人情やユーモアを愛し、常に広い視野で物事の本質を見つめ、論理的で正しいことしか言わない父はずっと、マリの家族において絶対的な存在だった。父に惚れて結婚した年上の母も、マリとその3つ下の妹カナエも、みな父を尊敬し、

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【知られざるアーティストの記憶】第09話 彼が愛した女性、彼とマリの共通するキーワード

【知られざるアーティストの記憶】第09話 彼が愛した女性、彼とマリの共通するキーワード

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第2章 入院2クール目と3クール目の間
 第09話 彼が愛した女性、彼とマリの共通するキーワード

マリのこの質問も、唐突で不躾だったかもしれないが、もうすでに腹を割っている彼に対して遠慮する必要はないように感じられたし、何よりもそれはマリの関心事だった。

「そんなことはないよ……。」
彼はこの質問に対し、さっきまでの勢いを失した。痛いところを突いてしまったのかも

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【知られざるアーティストの記憶】第08話 性欲を性愛にアウフヘーベンしなくては

【知られざるアーティストの記憶】第08話 性欲を性愛にアウフヘーベンしなくては

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第2章 入院2クール目と3クール目の間

 第08話 性欲を性愛にアウフヘーベンしなくては

突然の彼からの問いかけに、マリはおそらく咄嗟にうまく答えられなかった。いつものように黙ってしまったか、
「それは、近所ですから……。」
というようなうやむやな言葉で流してしまった。
「私に執着しないでください。」
彼はうつむいたままでそう言った。

「ところで、あなたがやっ

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【知られざるアーティストの記憶】第07話 過剰なラブレター

【知られざるアーティストの記憶】第07話 過剰なラブレター

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第2章 入院2クール目と3クール目の間

 第07話 過剰なラブレター

「おかえりなさい。」

2021年5月末、待ちに待った彼が退院してきた気配を察知するとマリは、すぐに彼の家を訪ねた。甘いものが好きなら好みが合うかもしれない、洋菓子はどうかしら、と今度はお気に入りのフランス焼き菓子店でバスクチーズケーキを二切れ買ってきて差し入れた。二切れなのは同居の弟の分も忘れなかった

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【知られざるアーティストの記憶】第06話 二人の縞模様の時間、二度目の入院の前日にマリは彼の名字を知った

【知られざるアーティストの記憶】第06話 二人の縞模様の時間、二度目の入院の前日にマリは彼の名字を知った

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第06話 二人の縞模様の時間、二度目の入院の前日にマリは彼の名字を知った

彼が白血病を発症したのは2021年2月のことである。1月末のある日、原稿に向かっているときに、「魂が下に引き抜かれるような感覚」を覚えた。その後、体調がなんかおかしい、なんかおかしいと自覚しながら病院に行き損ねるうち、38℃を超す高熱を発症した。買い物に出ないわけにいかず、熱のある状態で自転車で買い物

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