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アナキスト 金子文子
①「常磐の木―金子文子と朴烈の愛」(キム・ビョラ)を読む
1923(大正12)年に起きた「朴烈事件」の当事者である朴烈と金子文子の、少年少女時代から逮捕・収監、文子の獄中自殺、朴烈の戦後出獄までを描いた、韓国人作家の小説である。
「作者のことば」として、巻末に著者はこう書いている。「アナキストであると同時にニヒリスト、テロリストでありながら詩人であり、一人の女を限りなく愛したが、結局喪わざ
私の読書室へようこそ 2
1「約束された場所で」(村上春樹)を読む
地下鉄サリン事件の被害者及び遺族の証言を集めた「アンダーグラウンド」に続き、今度はオウム真理教の信者(元信者)の気持ちや主張を聞き書きしてまとめた本である。オウム真理教に入信した動機や内部での生活の実態が8人の信者(元信者)たちによって語られている。
著者は「あとがき」にこう記している。「彼らは、自分たちが人生のある時点で、現世を捨ててオウム真理教に精
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○「金閣寺の燃やし方」(酒井順子)を読む。
1950(昭和25)年7月2日、当時21歳だった一人の修行僧(林養賢)の放火によって金閣寺が焼失した。この事件を題材にして、三島由紀夫が「金閣寺」を、水上勉が「金閣炎上」を書いた。本書は、二人がなぜこの作品を書いたのか、その背景を両者の生い立ちからたどって、内容を比較分析したものである。そこには対照的な二人の精神世界があった。
「理をもって、表から養
小熊秀雄という詩人を知っていますか
先日中野重治の本を読んでいたら、小熊秀雄について書いている文章に出会いました。興味を覚えたので、「小熊秀雄詩集」を購入して読んでみました。これが、なかなか良かったのです。
小熊秀雄は昭和前期のプロレタリア詩人の一人ですが、他の詩人とは違って、思想をストレートに訴えるのではなく、普遍的な人間性に迫る深さがあります。これは現代でも十分に通じるものです。
小熊秀雄は肺結核のため39才で若死にしました
私の読書室へようこそ
○「『無』の思想」(森三樹三郎)を読む。
学生時代に読んだ本だが、改めて読みなおしてみた。あちこちに傍線が引いてあったが、その個所は今読んでも同じように共感できた。それだけ私にとって印象深い本、ということだろう。中国の老荘思想系譜を無為自然と有為自然に分類し、それがどのように変遷したかをわかりやすく解説している。
老荘思想が日本の禅宗、親鸞、本居宣長、芭蕉にも影響を与えているという指摘は新鮮
1960年代の青春風景
○安保闘争と岸上大作
1952年4月、サンフランシスコ講和条約とともに日米安全保障条約が発効した。この時の条約は、アメリカが日本に軍隊を駐留させる権利を確保しながら、日本の安全に対する義務は負わない、という片務的な内容であった。1957年に首相となった岸信介は、これを双務的な条約に改定しようとアメリカと交渉を行った。
しかし、この安保改定をめぐっては国民の間に大きな反対運動が巻き起こった。国