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小熊秀雄という詩人を知っていますか

先日中野重治の本を読んでいたら、小熊秀雄について書いている文章に出会いました。興味を覚えたので、「小熊秀雄詩集」を購入して読んでみました。これが、なかなか良かったのです。

小熊秀雄は昭和前期のプロレタリア詩人の一人ですが、他の詩人とは違って、思想をストレートに訴えるのではなく、普遍的な人間性に迫る深さがあります。これは現代でも十分に通じるものです。

小熊秀雄は肺結核のため39才で若死にしました。詩のほかにも童話、小説、絵画、美術評論など幅広い才能を持っていました。芸術への思いが強かったために、生活は貧しいままでした。石川啄木に似ているといえるかもしれません。

「読者よ/薔薇は口を持たないから/匂ひを持つて君の鼻へ語る/月は、口をもたないから/光りをもつて君の眼に語ってゐる/ところで詩人は何をもつて語るべきか?」(しやべくり捲くれ)
「生きることが/こんなに貧しく/こんなに忙しいこととは/お腹の中の/私は想像もしなかったのです」(孤独の超特急)
「なんて私は私を蔑むことが/不足しているのか/そのことのできない間は/私の生活は/私の芸術は/犯罪にすぎない」(階級の教授)

小熊秀雄はもっと評価されていいのではないでしょうか。

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