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#孤独

白い朝

ラム酒を
飲み過ぎた夜は
白い朝が
ちらつきながら
私を迎えに来る
それは遠い
過去の様に
曖昧で
何時も思い出ずに
私は独り
白い朝の扉を開ける
どんなに
寂しかろうとも

クロッカス

中身の無い歌を
垂れ流すラディオ
僕にだけ聞こえる
ロックンロールを
掛けてくれないか
心が壊れそうな夜は
狂った風が吹き荒れる
街に足を向けられず
揺籃に籠る僕に
クロッカスの花を
たわむけてくれないか
見えない何かに怯える夜は

原色

不眠症に苛まれてる
夜中のコンビニエンスストア
信号機の光が目に染みて
歩行者に突っ込む赤の他人
美しい事は何時だって
掌から零れてしまう
そう書き残して死んだ詩人
人は生まれつき原色なのだと
患者に言い聞かせ
水の様にラム酒を飲む精神科医
皆孤独なのだから
その瞳を閉じてはいけない
悲しみは燦々と降り積もり
何時までも消えやしないのだから

演者

お気に入りの仮面を付けて
私は夜の蝶に為る
誰にも言えない秘密は
背中の裏に鍵を掛けて
何時も通り踊りましょう
札束を落とす愚かな人達を
手の中で転がし終えたら
孤独な部屋へと帰りましょう
被り続けた仮面を脱いでも
もう素顔など何処にも無いけれど

甘露な毒を

怠慢な社会で
甘露な毒を飲む
うだつの上がらない
平社員は
少しずつ変わって逝く
急に体を鍛え
裏で銃を手に入れ
その日に備える
会社の上司を
皆殺しにする日の為に
カレンダーに
印を付けながら
暗い部屋で
孤独にほほ笑む
テレビの中に咲いた
サルビアに向けて

スイート

自分を慰める
言葉を探す共犯者は
言い訳の中に
埋もれて死んだ
簡単な仕事で
大金を稼ぐ悪人が
孤独な夜に笑っても
心の穴は埋まらずに
両手を汚し続ける
顔の無い他人を使って
せめてスイートに
抱かれて眠れ
夢の中だけでも良いから

サバティ

残酷な現実から
逃れる様に目を閉じて
眠れない日々を過ごす
孤独な少年は今日も
パソコンの前に座り
プログラムを打ち続ける
違う次元に繋がって
悪魔を召喚出来る日が
来る事を願いながら

孤独な道化師

街中で芸を見せる
彼を横目で眺めても
足を止める者はいない
みな何かに急かされ
漂流者みたいに消える
この世の果てで
息を切らし彷徨う
孤独な道化師
彼は涙を流さない
疾うの昔に感情を
安く売り飛ばしたから

野蛮な女

自分が
気に入らない全てを
許さない
野蛮な女
デスコティックに
誘われる事無く
孤独に
老いてしまった
卑しさを
隠せない儘

雨に泣いている

死ぬ事の無い酉が
雨に泣いている
吹き荒れる風に押され
私は哭いている
気に掛ける者など
何処にもいない儘
私達は何時までも
雨に泣いている

モチーフ・レプリカ

中性の雨が
降り続く街を
歩くレプリカハンター
禁製品の装備で
體を固めて
レプリカを探し壊す
それが仕事だから
限り無く人に近く
決して人に為れない
彼らは擬態しながら
その牙を研ぐ
生まれた理由を探して
人とは分かり合えず
闇の中で火花を散らす
借り物のモチーフだとしても

酷い傷痕

誰かの過去を
暴くマーロウ
それがどれだけ
酷い傷痕でも
彼は気にしない
目を逸らさずに
それを記憶する
時に疎まれ
命を狙われても
真相を調べ続ける
降り続く孤独の針に
體を突き刺されようとも

灰とロマンティカ

振り返れば何も無く
振り向いても還れない
灰とロマンティカには
孤独すら届かない
ただ慟哭だけが
無限に響き続ける
安い胸が壊れようとも

悪魔のドラマー

孤独な夜に
街を埋めるノイズ
戒厳令の中
悪魔のドラムが
街の隅々へ鳴り響き
皆狂気に駆られ
真実を見失う
壊れた人形の様に