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2024年2月の記事一覧

リズム

たどたどしい
貴方の日本語が
やさぐれた僕の
背骨に染みる
それは完璧な
リズムみたいに
體の中を延々と
駆け巡り
燻っている僕の
心を燃やした

何も見えない

半裸で人を襲う気違いが
テレビジョンのモニターから
とめどなく流れて
皆は他愛の無い話をして
終わらない仕事を続ける
大切な物は何も見えない
どれだけ生きようがそれだけは
変わりようの無い事実だった
本当の事は何も見えない
私も貴方も等しく同じく

不確かな真実

罪を与える事に
奔走するザアカイ
清貧を説きながら
幾ら金を掻き集めても
生活苦に陥るキリスト
久遠の十字架に
張り付けられながら
クレマチスの丘を
進むのは御免だと
声を張り上げ
民衆に叫ぶユダ
本当の罪人は
巧妙な罠の様に
隠されて見えやしない

人に為りたかった獣

山から下りた獣は
人の生活を横目で眺め
森へと帰る生活を
続けている内に
人への羨望を深めていった
如何すれば自分は
獣から人に為れるのか
考える内に獣は
少しずつ変わっていった
その鋭い牙や爪
容姿さえも変貌させて
限り無く人へ近い何かへ
獣はその姿を変えていった
それでも獣は
純粋な人には為れず
慈悲無きハンターに狩られ
その命を散らして死んだ
人でもなく獣にも戻れず
名も無き怪物として

無数の光

無数の光に包まれて
世界を破壊するヤマザキ
デイドリーマーを
口遊みながら
彼は淡々と全てを
壊し続けるのだろう
死の四騎士を再現しながら

ダダリオ

古びた
ガットギターを鳴らす
頬に傷のある
ダダリオの弦を愛する
ブルースマンは
十字路で悪魔と
取引をしたらしい
その演奏は
気が狂いそうになる程
何時も素晴らしく
確かに人とは思えなかった
本当の事は
何時も見えなくて
皆が騙されてしまう
どうしてだろうね

スイート・レディ

アルラシッドホテルの
スイートルームで
冷たいレモンティーを飲む
冷血な彼女は
他人の感情が分からない
生まれた時から
何不自由なく育てられ
生きて来た事さえ
当たり前だと信じている
彼女はスイート・レディ
与えられた物の
全てを喰い尽くし
何れ自分のこめかみに
ピストルを押し当てて
トリガーを引く刹那
彼女は何かを思うのだろうか
せめてその気持ちが
安らかである様にと
僕は祈る事しか出来ない

嘘吐きな唇

貴方は今日も
その嘘吐きな唇で
誰かを騙す
貴方に散々
夢中にさせてから
貴方は冷たく
突き放す
そして次の
誰かを探して
同じ事を
繰り返すだけ
満たされない
安い心の隙間を
少しでも埋めようと

幸せには為れない

咲いたばかりの
花を摘む引き籠り
悪魔と取引する
コールガール
太陽に背を向けて
殺人を犯すヤマザキ
誰も彼も
幸せには為れない
死なない限りは

葬列

許されざる者を
殺した男
罪深き者を
赦す女
鬼火がちらつく街を
逃げ切れずに
警察官と撃ち合い
命を散らした

荒んだ風

ラクダの毛皮を
着こなすパンクス
夜の街を歩く人達は
荒んだ風に
背中を押されて
今にも狂いそうな
表情を隠さない
誰もが何かに
為らなくてはいけない
この国の中で
演じるのを止めた
真冬のパンクス