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本のはなし

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読書記録や、本をめぐるエッセイをまとめています。
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#読書感想文

最近読んだ本たち(2024年5月分)

最近読んだ本たち(2024年5月分)

2024年5月の5冊5月前半は落ち着いていて、本を読みつつゴールデンウィークを満喫できた。

後半は忙しかったので、読書はやや失速。毎月言っているけれど、「もっと読みたいなあ」と思った。

ひと月に50冊読みます! なんていう方はどんな暮らしをしていて、どんなふうに読んでいるのだろう。羨ましい……!!

『傲慢と善良』 辻村深月

ベストセラーになった小説をわたしがタイムリーに読めることは少ない。

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運ばれるわたし

運ばれるわたし

読書が能動的な営みであるかと聞かれたら、わたしは「ノー」と答える。かといって、読み手は受け身に徹しているかというとそうでもない。

先月、『夜ふかしの本棚』という本を読んでいたら、朝井リョウさんが『雪沼とその周辺』(堀江敏幸)を紹介されている箇所にあたった。

そこには、好きだと感じた文章はその人を運んでくれるという意味のことが書かれていた。優しくも鋭い読書論が、心に残って仕方がない。

『夜ふか

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読書のコスパ

読書のコスパ

小説を一冊、読み終えた。物語からテーマがはっきりと浮かび上がってくるような作品だった。だらだらとストーリーが続くのではなく、背景にある筆者の考えに手が届きそうな感覚があった。こういう作品に会えたとき、表現力ってすごいなあ、といつも感じる。

そんななか、思春期に出会った「わけわからん小説」たちを思い出す。

梶井基次郎の『檸檬』も謎だったし、カフカの『変身』も意味がわからなかった。わたしは思考が浅

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最近読んだ本たち(2024年4月分)

最近読んだ本たち(2024年4月分)

4月は出会いの月とよく言われるけれど、ほんとうにそうで。いろいろな方面で新しいつながりができてよかったなー、としみじみしている。

月の前半は娘たちが春休み、または午前中授業ということで、限られた時間内で仕事に追われた。それでも、ちょっとは本を読む時間を確保できた。よし!

残るは「エクササイズをしたあと眠くなってしまう問題」だ。「筋トレしてから本読もうっと」などと思っていると、睡魔に襲われて読め

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最近読んだ本たち(2024年2月3月分)

最近読んだ本たち(2024年2月3月分)

2月はのんびりするつもりが、結局なんだかんだであわただしく過ぎていった。とりあえず確定申告を無事終えられてほっ。

3月もあまり読めず(春休みだから?)。

1冊、どうにも合わなかった本があった。タイトル非公開のままレビューを書きたい。

『絶対悲観主義』 楠木建

2022年に読んだものを、もう一度読んだ。ちゃめっ気とユーモアが見え隠れする文章がとても好きだ。

「心配するな、きっとうまくいかな

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最近読んだ本たち(2024年1月)

最近読んだ本たち(2024年1月)

1月は怒涛の月。なぜか毎年そうなる。いろいろな人が、新年の抱負とともにスタートダッシュを決める時期だからだろうか。とくに抱負を立てない意識低い系としては、ちょっと気おくれしてしまって、まごつく。そして、雑務がたまっていくのだ。

2024年1月の4冊『これが生活なのかしらん』 小原晩

これめっちゃおもしろいよ、と友人に貸し出していたのが、戻ってきたばかり。いや、おもしろいという表現は不適切かもし

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最近読んだ本たち(気ばかり走った12月分)

最近読んだ本たち(気ばかり走った12月分)

年が明けた。時が過ぎるのは早すぎるといつもぼやいている私は、年末が近づいた頃からへんに開き直ってしまっていた。「まあ、もうすぐ2024年になっちゃうよ。しゃーない」。そう思っていたので、年越しは落ち着いて迎えられた。よかった。

ただ、12月は忙しくて気が急いてしまい、あまり本が読めなかった。

『悲しみの秘儀』 若松英輔

悲しみにフォーカスしたエッセイ集。11月に義父を亡くして、ぼんやりとした

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最近読んだ本たち(ゆっくりさんな11月分)

最近読んだ本たち(ゆっくりさんな11月分)

時の流れは早いと毎月書いていて、自分で嫌になる。悲しいくらい同じことを書いている。けれど今月も書く。ほんと、早いよねえ。だって、11月もすごい勢いで過ぎていったから。

気持ちが上すべりする原因がたくさんあった。本を読んでいる場合じゃなかろう、との心の声もときどき響いた。それでも少しは読んだ。ときに読書は現実逃避のための手立てだ。そしてときに本は心を救う道具でもある。「いいなあ、本って」と思わされ

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最近読んだ本たち(バタバタ、でもまったりな9月分)

最近読んだ本たち(バタバタ、でもまったりな9月分)

なに、もう10月なの。やだこわい、なにそれ。

最近、そういうことばかり呟いている。だって、あと3ヶ月で今年が終わるなんて、どういうことなのか理解しがたい。理解したくない。

年始の抱負は立てない派の私でも、今年のお正月には「いい年にするぞ」なんて意気込んだ。

はたしていい年になっているのかどうか確信が持てないままに、10月。おそろしいことだと思う。月日って残酷だ。

『小津安二郎 老いの流儀』

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生きていく人たちの物語

生きていく人たちの物語

フォローさせていただいている菅野浩二(ライター&編集者)さんによる短編小説集『すべて失われる者たち』が出版された。

以前から、noteに執筆されていた短編小説たちを拝読していた。

重苦しい描写があれば胸がぎゅうっと縮こまるように感じるし、やりきれない心情を描いた場面ではため息が出てしまう。いい意味で心に波を立てる文体と表現にいつも「ああ、筆力ってこれなんだ」と思っていた。

今回出版された『す

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最近読んだ本たち(見返り美人な7月分)

最近読んだ本たち(見返り美人な7月分)

7月はわりと有意義に過ごせた気がする。仕事も子育ても、勉強も。

「あんた、ちょっといいひと月だったでしょう」と振り返ってにやりと笑ういい女みたいな、そんな月。なかなかの見返り美人でいらっしゃった。

『欲望の見つけ方』 ルーク・バージス

発売当初から読みたかったのに、買おうとするたびに売り切れだった。やっと買えて、手もとにやってきてくれた。嬉しい。

「模倣の欲望」理論を提唱したルネ・ジラール

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女らしさについての雑感あれこれ

女らしさについての雑感あれこれ

ジェーン・スーさんと中野信子さんの『女らしさは誰のため?』を読んだ。

女性性やジェンダーについて論じる書籍は数あれど、これはカジュアルな対談形式で「女らしさ」を扱っているところがとても意義深いと思う。いまいち納得感を得られない項もあれば、「あー、それ! それよ!」とページに向かって叫びたくなる箇所もある。女子会に参加しているノリで「女らしさ」について考えられる。

とくに、社会から求められる「女

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最近読んだ本たち(走り去った6月分)

最近読んだ本たち(走り去った6月分)

6月はいきなり台風による大雨に見舞われた、気がする。1か月も経つと記憶がおぼろげになるのが悲しい。

以前、5月は逃げていったと書いたけれど、6月は走りさっていった。手もとに一瞬たりともとどまらぬ時の流れ、どうにかならないものだろうか。

『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』 宮崎伸治

村井理子『本を読んだら散歩に行こう』のなかで紹介されていた一冊。もちろん私は出版翻訳家ではないけれど、読

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最近読んだ本(逃げていった5月分)

最近読んだ本(逃げていった5月分)

「2月は逃げる、3月は去る」なんていうけれど、4月も5月も、とんでもなく早足で逃げていった。もうゴールデンウィークがのっけからリズムを狂わせにかかっていたので、どんくさい私にはどうしようもない。

そんなこんなで、5月に読んだ本たち。

『むらさきのスカートの女』今村夏子

おもしろいのひと言。奇妙なスタートに心を持って行かれたと思ったら、そのままラストまで突っ走ってしまった。夜中の1時に読み終え

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