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大人になったハロウィン

ハロウィン。もうワクワクなんてしない。

だって私は知ってるから。
この世界に魔法なんて、存在しないと言うことを。

好きな人が、私のことを好きになってくれたり、
仕事が認められてお給料が上がったり、
いい日が5日以上、続いたり、

そんな奇跡みたいな日は訪れない。
だって魔法はないから。

この世界に起こることは、全て要因がある。

だから幸せも自分で作らなきゃいけない。

そう思って久しぶりに美容院に行った。

初めて行く美容院。
20分近く待たされ、
信頼できる美容師さんか分からないまま、髪をザックザック切られ、
ドライヤーで乾かさられた髪はボサボサ、、、

なんだか頼んだ髪型とやっぱり違うなあと思いながら、
最後の仕上げのアイロンに。

この髪型、どうやって自分でアレンジしよう、、
そんなことを考えながら、スタイリング剤がつけられ、鏡を見る。

お願いした髪型を全く同じになった…!

魔法だ…!

家への帰り道、私はルンルンで歩いた。

この世界に魔法使いがいるならば、
美容師さんだと思う。

そう思いながら美容室のページを開くと、
私の髪をカットしてくれた美容師さんは7年目だった。

ああ。そうだ。
この世界にやっぱり魔法なんて存在しない。

このカットされた髪には、
美容師さんが7年かけて手に入れた
努力と血漿が詰まっている。

私の髪は、あの1時間で変わったから、
魔法のように感じるけど、
努力も含めた実際に掛かった時間はもっと大きい。
全てのことに、要因があるのだ。

美味しいものを食べて幸せになることも、
可愛い服を着てテンションが上がるのも、
美容師さんに髪を切ってもらうのも、

魔法がかかったように一瞬で気分が晴れやかになるけれど、
魔法なんてこの世に存在しないから、

私たちはちょっと立ち止まって、
その裏で起きた、自分の知らない世界にある努力を
想像しなくちゃいけないのかもしれない。

そうしたら、今あるものにももうちょっとだけ、
幸せを感じられるようになるかもしれない。

そんなことを考えながら、
ハロウィンに売れ残ったクッキーを
一欠片かじった。

もう大人だからハロウィンにワクワクしない。
だけどまだ、努力を魔法だって勘違いしちゃうほど胸を張って大人なんて言えなくって。
だからきっと、大人も大人の階段を登っている最中なんだ。

ps.近所のおじさんに久しぶりに会った。
自分の記憶より遥かにおじいさんになったおじさん。
「なんだかよくわからない気温だね」って話かけてくれた。
私は相変わらず変な相槌しか返せなかったけど、
話しかけてくれた、そのことがすごく嬉しかった。

どこか穏やかで、いい雰囲気をまとったおじさん。
後からおじさんは最近病気になって、と言う話を親から聞いた。
きっとおじさんも会わない間にいろんなことを経験したんだ。
おじさんだって、大人の階段を登った。
私も将来、あんな穏やかないい雰囲気をまとった大人になりたいな。
そう思いながら、果てしなく続く階段を見上げた。

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