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本の感想まとめ。カバー写真は所属サークルHYGGEの合同誌。
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#本好きな人と繋がりたい

9月の読書記録など

9月の読書記録など

月初の文学フリマ大阪が終わって以降、脱力傾向にあったけれど、少しずつ力を取り戻している。文フリに向けての創作・編集・当日の活動と大きなアウトプットですっかり空っぽになったのだ。

おかげで、先週今週と大変にインプットが捗った。読書も資格勉強も買い物も、私には同列のインプットである。

イェジー・コシンスキ「ペインティッド・バード」、二階堂奥歯「八本脚の蝶」、スティーブン・キング「書くことについて」

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神さまを待っている / 畑野智美

神さまを待っている / 畑野智美

希望のある終わりを迎えた主人公を、もう私は羨ましいとは思わない。それは、私の成長であり、物語を真正面から受け止める若さを失ったということかもしれない。小説の始終を「これは創作だから」と割り切り自分への負荷を軽減する一方で、物語の結末が「一人でも多くの人の希望になりますように」と一読者の立場として願っている。

これは、貧困女子の再生の物語ではなく、人間関係への不信からの再生の物語だ。

主人公の愛

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ゴッホ展 孤高の画家の原風景(2005年)図録 / サポートによる購入品報告

ゴッホ展 孤高の画家の原風景(2005年)図録 / サポートによる購入品報告

まずは御礼先月から今日に多くの方がサポートや記事購入をしてくださっている。繰り返しにはなるけれど、なんど言っても足りないので言わせてください。

本当にありがとうございます。



さて、記事下に表示されるサポート依頼の欄に、

いただいたサポートは書籍購入費用として使用させていただきます。サポートで購入した書籍は記事でご報告します。

と明記した。きちんと、有言実行を果たしたい。

使い方を考

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文身 岩井圭也

文身 岩井圭也

2年前にデビュー作を読んで以来のファンである。

『文身』は「最後の文士」と呼ばれた作家の物語。私小説作家となったことで翻弄される、兄と弟とその家族の人生の物語だ。

物語の内容に言及すると、あらすじ解説じゃなくてネタバレをしてしまうのが私の常なので、これ以上はしない。

岩井圭也さんの作品の真骨頂は、悲しみの場面の情景描写の美しさだと思う。今回も、しっかり心臓をわしづかみにされてしまった。感服。

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#私を構成する5つのマンガ

#私を構成する5つのマンガ

昨日の記事を投稿するときに知ったこちらのお題企画。
関連イベントは過ぎてしまったようですが、なにかのご縁。

「自分のルーツとなるような大切なマンガ」5つだけ選ぶのは無理じゃないかしらん。
そう思いながら振り返り、自分史年代順に影響を受けた漫画を選んでみました。

Ⅰ.幼少期∼小学校 手塚治虫『三つ目がとおる』手塚治虫さんや松本零士さんの大ファンである父の本棚には、火の鳥、ブラックジャック、キャプ

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食べる小説 江國香織「きらきらひかる」

食べる小説 江國香織「きらきらひかる」

江國香織さんの『きらきらひかる』は私にとって特別な作品だ。
江國香織さんの『きらきらひかる』が、私が初めて読んだ小説だった。

12歳の時に古本屋で文庫を手に取った。なぜ『きらきらひかる』の文庫を手に取ったかは、それはそれで別の、捉えようによってはまぬけなエピソードがあるのだが、それは秘密。

それまで弟と一緒に絵本ばかり読んでいた私には、『きらきらひかる』はあまりにもセンセーショナルだった。

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食べる男もかわいい エッセイ編

食べる男もかわいい エッセイ編

昨日勢い余って下記のようなタイトルで書いてしまったので、「これは男性編、小説編も続けなければ…?」と勝手に使命を感じている昼下がり。

しかし、今まで小説を読むときに「ものを食べるシーン」をあまり意識せずに来たために、小説編でこれがいいよねって言うのが思い浮かばない。
なので、先に男性作家のエッセイ編をつづけたい。

父の趣味で、開高健さんや辻静雄さんといった昭和の大作家、グルメと呼ばれる方々の書

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食べる女はかわいい エッセイ編

食べる女はかわいい エッセイ編

いっぱい食べるキミが好き、と軽快なリズムで歌うCMが懐かしい。
しかし、あのCM以外でいっぱい食べる女性が好きだと公言する男性に出会ったことがないのは、私の世界の狭さが故なのだろうか。
(男性歌手が歌う歌が、女性モデルを起用したCMで使われていたから、男性が女性に贈った歌だと思っているけれど、逆のパターンもあり得る。しかし、いっぱい食べる男性を好きな女性には会ったことがあるんだよな)

私はいっぱ

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百合と葱坊主 くどうれいん「うたうおばけ」を読んで

百合と葱坊主 くどうれいん「うたうおばけ」を読んで

書肆侃侃房から、くどうれいんさんの『うたうおばけ』が刊行された。
下記書肆侃侃房のnoteに掲載されていた連載が元となる一冊である。

2020年5月12日現在も、noteの連載分は無料記事として読むことが出来る。
とっても太っ腹な事である。

『うたうおばけ』という題名の由来となるエピソードが書かれた
『第1回 うたうおばけ』も、初回から読後の満腹感が気持ちいいのだけれど、私が(noteで公開さ

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