紫藤春香(はるちん)
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現状は「革命」的改善の余地があまりある/『#Metooの政治学 コリア・フェミニズムの最前線』 (鄭 喜鎭 ・編、金李 イスル ・…
#Metooという文字列は 、昨今世界中あらゆる地域で深刻な意味を持つようになった。本書の副題は「コリア・フェミニズムの最前線」とあるが、そこで展開される権力の不均衡と…
女の子なんだから勉強しなくていいよ、と言った父は死にかけるまで仕事を辞められなかった
2018年8月2日(木)
わたしが11歳の頃、女の子なんだからそんなに勉強させなくていいよ派の父と女の子でもこれからは勉強して手に職つけなければダメでしょ派の母の間で一悶着あった。
この言い争いは圧倒的家庭内政治力を誇る母の勝利で決着し、わたしは中学受験用の塾に通って都内の中高一貫校に合格した。(母は、「勉強したらクーラーのある学校に通えるよ。」と言ってわたしを懐柔した。今振り返ると正確には「
浮気を「正当化」して何が悪い
先日、公開しているアドレス宛に、こんなメールを頂いた。
友達が「複数愛者は浮気の正当化」と言っていました。
実際、そうなのでしょうか……?
複数愛者として、今後どのように生きればいいか、わからなくなってきています……。
メールをくれた方には、「大事な話なので、お返事をするのに少し時間をもらうし、長くなります」と伝えている。さらに悩んだ末、返事はこのnoteに書くことにした。メールをくれた人以外
たまたま人を殺さなかった、とある宗教二世の話
わたしは宗教二世だった。とある「新宗教」の。
「新宗教」と聞いて、あなたはどのようなものを思い浮かべるだろうか。やはり今話題の統一協会だろうか。それとも創価学会、あるいはエホバの証人だろうか。
生長の家・幸福の科学・真光教・天理教・実践倫理宏正会……。さまざまな「新宗教」をあなたは思い浮かべるかもしれない。でも、あなたの推測が当たることはおそらく一生、ない。
この国には、メディアで取り沙汰さ
後期資本主義社会で我々はいかに生き延びることができるのか/『透明社会』『疲労社会』書評
著者のビンチョル・ハンの名前を見聞きしたことがない、という読者も多いであろう。それもそのはず、今回取り上げる2冊は著者の初めての邦訳書である。しかし、この2冊で指摘されるのは、わたしたちにとってあまりに馴染み深い現象ばかりである。
『透明社会』において著者は、あらゆる場面において透明性が要求される社会を批判する。ここでいう「透明性」とは、行政における汚職や情報公開、人権擁護の文脈で求められる透明
現状は「革命」的改善の余地があまりある/『#Metooの政治学 コリア・フェミニズムの最前線』 (鄭 喜鎭 ・編、金李 イスル ・訳/大月書店)
#Metooという文字列は 、昨今世界中あらゆる地域で深刻な意味を持つようになった。本書の副題は「コリア・フェミニズムの最前線」とあるが、そこで展開される権力の不均衡と被害者への抑圧は、米国とも日本とも驚くほど近似している。
2017年末のハリウッドを起点として始まった性暴力・セクハラの被害者たちの告発と支援者たちとの連帯は、わずか数カ月後、韓国でも大きなムーブメントとなった。直接のきっかけになっ
司法試験に4回落ちて、小さな出版社に就職した話
とあるゴールデン・ウィークの昼間、わたしは人生にウンザリしていた。一週間後に4回目の司法試験の受験が控えていたからである。まぁ、凡庸な感性を持っている人間なら、4回目の司法試験の受験には大抵ウンザリするものだと思う。
小室眞子さんの配偶者の小室圭さんがNY州の司法試験に落ちた、というニュースが速報で流れたとき、わたしは初めて小室圭さんという人にシンパシーを覚えた。NY州の司法試験の合格率は比較的
紙の上ではなく、路上から。上からではなく下からのフェミニズムが必要だー堅田香織里「生きるためのフェミニズム パンとバラの反資本主義」
本書はまさに「99%のためのフェミニズム」を語る本邦では極めて珍しい書籍の一つである。もちろん参照されたのは、2019年に刊行され、2020年に邦訳もされ話題となった『99%のためのフェミニズム宣言』(シンジア・アルッザ、ティティ・バタチャーリャ、ナンシー・フレイザー共著/恵愛由・訳・人文書院)である。とはいえ、本書で語られる「パンとバラの反資本主義」及び「99%のためのフェミニズム」について日本
もっとみる君が思い出になる前は
誰しも大切な人と致命的に折り合えない瞬間というものはあり、それは誰かにとっては浮気であり、借金であり、アルコール中毒や暴力や隠された犯罪歴であり、ある型をもった不義理であり、どんなに愛し合っていたとしても、そのような軋みがあった後では決定的に心理的安全性が損なわれ、共に暮らせなくなる出来事があるように思う。
これまでのわたしであれば、若く、愚かで、未来への可能性に満ち、異性(ほぼ異性愛者であるわ
誰も見たことのない、二人だけが辿り着ける「高み」を提示ー上野千鶴子・鈴木涼美「往復書簡 限界から始まる」
本作において、上野千鶴子に「ぶつけられる」ことになった鈴木涼美は、今日最も取り扱いの難しい作家の一人である。
エーリッヒ・フロム『愛するということ』の翻訳者であり、法政大学名誉教授であった父と児童文学者である母に「愛されて育」ち(本書324頁)、知性と経済力を手にした、大胆な書き手である鈴木涼美は、修士論文を基にした『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』でのデビュー以降
年相応に不機嫌な、戦う女の子へ
いつも不機嫌で、お母さんとお父さんを困らせてばかりのあなたへ。今日はめずらしくお手紙を書かせてもらいました。この手紙はお母さんやお父さんに決して見せないでください。誰にも見せずに一人でこっそり読んで、なにか思うところがあったらお返事をくれると嬉しいと思っています。
あなたはここのところ、少し混乱していますよね。急に勉強しなきゃと焦って参考書を買い込んだり、かと思ったら一秒も勉強したくなくなったり
知性は力だー小林エリコ『わたしがフェミニズムを知らなかった頃』(晶文社)
本書はある種、奇妙な構造を持っている。筆者はこれまでにも『この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。』(イースト・プレス)『家族、捨ててもいいですか? 一緒に生きていく人は自分で決める』(大和書房)『わたしはなにも悪くない』(晶文社)等、自身の虐待被害・自殺未遂・精神障害・生活保護受給といった過酷な体験について書き続けてきた。しかし、その中でも本書はそのような「重い
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