かけはし岸子

随想録

かけはし岸子

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記事一覧

50にして森に住む かもしれない

 去年、失業したわたしはなんやかんやで いま職業訓練校に通っている。 仕事を辞めてから、突如 「小屋を建ててみたい!」という衝動に駆られた。  大工仕事に憧れてい…

かけはし岸子
2か月前
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CAD超初心者がみつけたこと

 突然の思いつきで、CADを習うことにした。 たぶん苦手だろうな、と思っていたが 案外たのしくて 変な感じ。いい意味で裏切られた。 習い始めて3日しかたってないが、し…

かけはし岸子
4か月前
1

夜くる とり

 ベランダでバサバサと羽音がする。 台所で皿を洗っていたわたしは手をとめた。 窓に 明かりを消した暗いリビングが映っている。 眠たい顔の女がひとり。 自分なのに、ど…

かけはし岸子
4か月前

【百小説】006

このさよならは わたしだけのお守りになる。 きっといつかはなる。 少し目は腫れてるけどコンビニで アイスコーヒーを買うんだ。1番大きいの。 がぶがぶとビールみたいに飲…

かけはし岸子
4か月前

真夜中の百歳

 あんまり自分の歳について考えたことがない。 「何歳になったの?」って聞かれて 「たぶん、43か42か、あれ45だったかも。そのくらい」と答えてカンシンされたことがあ…

かけはし岸子
4か月前

【百小説】005

 春。朝から庭をみている。 ぱらぱらと天気雨が降っている、と思ったらゴウと風が吹きつけて桜が舞う 窓は花びら模様  黒猫がツツジの花びらを齧りにきた赤いのだけ食…

かけはし岸子
5か月前
1

【百小説】004

一番星に願う6文字熟語 衣食住皆安心 衣食住皆安心 衣食住皆安心 夜オバケがでそうになったら唱える 昼迄待機希望 昼迄待機希望 昼迄待機希望 とりあえずいいことあって…

かけはし岸子
5か月前
1

【百小説】003

(じつは、神様からお役目をもらってね)といい出す母に内緒にしていたことがある。そもそも私は、神様からお役目をもらって、といい出す傲慢な母を嗜めるというお役目を神…

かけはし岸子
5か月前

【百小説】002

 夢と現を散歩中の、百歳の祖母は毎朝、バナナを半分食べる。 その様子を伺いにくる男の子がいる。 「ほら、あんたも」 「いつもにこにこしてるねぇ」と話しかけている…

かけはし岸子
5か月前
1

【百小説】001

 電車に乗ってから、 マスクをしていないことに気づいた。 焦る。 ハンカチ ハンカチ。 鞄に手を突っ込んで探すが、中身は漆黒の闇。 遥か底のほうに黄色くて丸い🟡の…

かけはし岸子
5か月前

こみんか こわい

静かすぎる。 シーンって 空気に書いてあるみたい。 サイレンも猫の鳴き声も。 風の音さえきこえない。 古民家にひとり暮らし。 築70年だというが、正確にはわからないそ…

かけはし岸子
5か月前
2

もちこわい

 お正月に餅を食べると、血を吐いて死ぬ。 一家離散する。 って、おじいちゃんから言われて育ちました。 こわっ。  元旦にはおせちとお赤飯。 芋やこんにゃくの入った…

かけはし岸子
5か月前
1

めんよう

それは古びた中華料理店でした。 昼休みはとうに過ぎています。 お客さんがひいた後でしょうか。 洗い物をしている音が止み、 奥のほうから少し腰の曲がったおばあさんが出…

かけはし岸子
5か月前
2

わかめめがね

 クリスマスの朝、久しぶりに大川くんの「わかめめがね」の夢をみた。  12月上旬から体調が悪く夜中に咳が出て2時と4時に目が覚める。暗くて寒い部屋でひとり咳混むとき…

かけはし岸子
5か月前
2
50にして森に住む かもしれない

50にして森に住む かもしれない

 去年、失業したわたしはなんやかんやで
いま職業訓練校に通っている。

仕事を辞めてから、突如
「小屋を建ててみたい!」という衝動に駆られた。

 大工仕事に憧れていた。
女子だし50歳だしやったことないし....なんて言ってる暇はない。やりたいことはすぐやらねば!
やって出来なかったら、そのときに考えることにする。

そして、小屋があるのは森の中でなければ。
小さくていい。いや、小さい方がいい。

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CAD超初心者がみつけたこと

CAD超初心者がみつけたこと

 突然の思いつきで、CADを習うことにした。
たぶん苦手だろうな、と思っていたが
案外たのしくて 変な感じ。いい意味で裏切られた。

習い始めて3日しかたってないが、しあわせの法則を見つけてしまった。CADで。

CADにはレイヤーってのがある。
あ、そもそもCADって製図用のソフトなんですよ。
そうだよね?

で、レイヤーなのですが、
製図の部品を透明シートに書き取り
重ねて全体になるという仕組

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夜くる とり

夜くる とり

 ベランダでバサバサと羽音がする。

台所で皿を洗っていたわたしは手をとめた。
窓に
明かりを消した暗いリビングが映っている。
眠たい顔の女がひとり。
自分なのに、どこかよそよそしくみえた。

 夜に鳥が来るのはめずらしい。
昼間には小さな鳥が来ることがあった。
あれは確かヒヨドリ。
いつも窓を開けようとしただけで、飛び立ってしまう。

 夜くる鳥とはどんなものだろう。
姿が見たい。
流れる水を止

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【百小説】006

【百小説】006

このさよならは
わたしだけのお守りになる。
きっといつかはなる。
少し目は腫れてるけどコンビニで
アイスコーヒーを買うんだ。1番大きいの。
がぶがぶとビールみたいに飲んじゃうんだからね。
苦いなぁまだちょっとだけ。

真夜中の百歳

真夜中の百歳

 あんまり自分の歳について考えたことがない。

「何歳になったの?」って聞かれて
「たぶん、43か42か、あれ45だったかも。そのくらい」と答えてカンシンされたことがある。
これは、大人になっての現実逃避ってことでもなく、ごく幼い頃からの馴染みの考え方だから仕方ない。数字に弱すぎる、ということはあるかもしれない。年齢でいろいろ分かれてることの方に違和感がある。

ひとの歳にも関心がない。
歳の割に

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【百小説】005

【百小説】005

 春。朝から庭をみている。
ぱらぱらと天気雨が降っている、と思ったらゴウと風が吹きつけて桜が舞う

窓は花びら模様 

黒猫がツツジの花びらを齧りにきた赤いのだけ食べてる 夕空が庭を隠してそろそろ鴉の番がくる頃

2024/01/05 かけはし岸子

ちいさくてひろい百文字をあなたに....

【百小説】004

【百小説】004

一番星に願う6文字熟語
衣食住皆安心
衣食住皆安心
衣食住皆安心

夜オバケがでそうになったら唱える
昼迄待機希望
昼迄待機希望
昼迄待機希望

とりあえずいいことあってもなくても
あなたの名前を唱える
百年目に会えるように

2024/01/04 かけはし岸子

ぴったり百文字ジワジワくる【百小説】
あなたの暮らしの句読点。【百小説】
あなたのかわりにするため息【百小説】

【百小説】003

【百小説】003

(じつは、神様からお役目をもらってね)といい出す母に内緒にしていたことがある。そもそも私は、神様からお役目をもらって、といい出す傲慢な母を嗜めるというお役目を神様からもらって、あなたの腹に入ったのだ。

ぴったり100文字。2024/01/04 かけはし岸子

【百小説】002

【百小説】002

 夢と現を散歩中の、百歳の祖母は毎朝、バナナを半分食べる。

その様子を伺いにくる男の子がいる。

「ほら、あんたも」
「いつもにこにこしてるねぇ」と話しかけている。

私には見えないけど半ズボン履いてる気がする。

2024/01/03 かけはし岸子

【百小説】001

【百小説】001

 電車に乗ってから、
マスクをしていないことに気づいた。
焦る。

ハンカチ ハンカチ。

鞄に手を突っ込んで探すが、中身は漆黒の闇。
遥か底のほうに黄色くて丸い🟡のが動いている。

あ、ひよこだ。

そんな夢をみた。

2024/01/03 かけはし岸子

こみんか こわい

こみんか こわい

静かすぎる。
シーンって
空気に書いてあるみたい。

サイレンも猫の鳴き声も。
風の音さえきこえない。

古民家にひとり暮らし。
築70年だというが、正確にはわからないそう。

襖の暗がりから何かが見てるような....
天井の木目も奇妙なシミに見える

ひたひたと
ぬるぬると
暗がりが、夜の暗さがこちらを覗いている。

こどもの頃の怖い記憶や妄想が、
あたかもリアルにそこにあるようだ。

ひとり暮

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もちこわい

もちこわい

 お正月に餅を食べると、血を吐いて死ぬ。
一家離散する。

って、おじいちゃんから言われて育ちました。

こわっ。

 元旦にはおせちとお赤飯。
芋やこんにゃくの入った醤油の汁。肉なし。
みんなもお正月にはこんな食事をしてると思ってました。
たべるな、と言われると余計に食べたくなる始末。
だけど、死にたくない。

 結婚して苗字が変わって、最初のお正月に生まれて初めて「雑煮」というものを作ってみま

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めんよう

めんよう

それは古びた中華料理店でした。
昼休みはとうに過ぎています。
お客さんがひいた後でしょうか。
洗い物をしている音が止み、
奥のほうから少し腰の曲がったおばあさんが出てきました。

——ふたりですけど、大丈夫ですか。
ああ、どうぞ。

おばあさんは4人掛けのテーブルを指差して
決まったら...と呟いてまた奥へ戻って行きました。

 二十数年前、わたしは神保町の小さな広告制作会社に勤めていました。終電

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わかめめがね

わかめめがね

 クリスマスの朝、久しぶりに大川くんの「わかめめがね」の夢をみた。
 12月上旬から体調が悪く夜中に咳が出て2時と4時に目が覚める。暗くて寒い部屋でひとり咳混むとき、世界には孤独しかないな、と思う。
結局、こんなときはひとりで誰も味方なんかいない。枕もとに置いた水を飲む。
どこにもだれにも繋がってない自分のために、冷たい水を飲ませてあげる。ふーっ、と息をはいてまた咳こんで、落ちついてきたら横になる

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