独学の木工ライフ、はじまる 〜嗚呼、職人の絶望日記〜
2016年2月
これが使い方もわからないのに見切り発車で注文した木工旋盤。
自分で木工ができれば、父の漆塗りと合わせてイチから完成品が作れるようになる。
回転する木材に刃物を当てて削っていくので、丸いものが作れる機械(らしい)。
ちなみに、あろうことか機械を買ったことは師匠である父には事後報告であった。
「独学でやるなんて無理」とか、「一旦落ち着いて考えろ」と言われるのが関の山である。
大事な一歩は、意志が弱らないうちに踏み出してしまうに限る。
ある日、突然大きな荷物が届いて父はたいそう驚いていた。
「よし!これでアウトドア用の鍋にスッポリ収納できる木の器が作れる!
はずだが、木材はどこで買えば、、、?」
機械は届いたが、木材をどこで手に入れたらいいのかわからない。
夜、漆の仕事の手伝いが終わってから、ホームセンターで10cm角の杉材を買ってきた。
ひとまず説明書を読んでみる。
「ふむふむ、高速回転する軸にネジで木材を固定して、回転する木材に刃物を当てて削ればいいのか、、、」
想像してみてほしい。
1分間に1000回転している角材を。
風を巻き起こしているうえに、中心軸がブレていて、ブルンブルンしている。
そこに大きな彫刻刀のような刃物を当てる恐怖を。
震える手で慎重に刃物を近づけていく。
もう回転する角材までは1cmほどしかない。
角材が巻き起こす風がすぐ手元に迫っている、とその時。
ゴキン!!!!
金属音と共に、大きな衝撃が走った。
回転する木材に刃物が接触したが、削れることなく刃先が引っかかった。
そして、刃物が金属の台に強く叩きつけられたのだ。
「、、、よ~し、今日はもう遅いし日が悪い!やめたやめた!」
そうしてその日は片付けもせずに帰った。
今にして思うと、何も知らずいきなり角材を丸くしようというのが無謀だった。
しかし、当時の僕はそんなこと知らない。
後日、、、
杉の角材を使うのはやめた。
工房の横に立てかけてあった檜の板を使うことにした。
厚みのある材料を切断する機械が要る事にも気がつき、なんと5万円もするバンドソーを追加購入した。
これで貯金はほぼゼロ。
師匠である父から支給される修行賃は、個人的な支払いを済ませると手元に残るのは一万円ちょっと。
経験ゼロ、貯金ゼロ、収入ほぼゼロのワカゾーが、ブランド立ち上げ&運営なんてしていけるのかしら?
と思いつつも、とにかくやるしかない。
まずはバンドソーで丸くカットしてみる。
材料を取り付け、慎重に刃物を当てていくと、、、
シュルシュルと、、、
「削れてる!!」
少しずつ形を整えていき、なんとかお皿らしいものが出来た。
お世辞にも綺麗なものではないが、これから少しずつ上達していくしかあるまい。
こうして、独学の木工旋盤ライフが始まった。
がんばれワカゾー。
みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。