職人の日記

京都で漆と木工の仕事をしている脱サラ職人。父は職人歴50年のガンコ者。絶望的な経済状況…

職人の日記

京都で漆と木工の仕事をしている脱サラ職人。父は職人歴50年のガンコ者。絶望的な経済状況の中でおもしろおかしく生きていこうとする、希望にあふれた職人の生きざまをご覧あれ。僕はアウトドア漆器ブランド「erakko」を立上げ活動しています。https://erakko.jp/

マガジン

  • 職を捨てて旅へ出よ

    旅の孤独な時間も愛するようになった先に待っていたものとは。 erakkoのコンセプトをじっくり掘り下げていきます。 少しでもみなさまのこれからの人生の過ごし方の参考になると幸いです。

  • 移住の記録

    【漆工房は今まで通り京都市山科区に。木工房を南丹市八木町に移す二拠点移住の記録】

  • 嗚呼、職人の絶望日記

    京都で漆と木工の仕事をしている脱サラ職人。 父は職人歴50年のガンコ者。 絶望的な経済状況の中でおもしろおかしく生きていこうとする、希望にあふれた職人の生きざまをご覧あれ。 アウトドア漆器ブランド「erakko」を立上げ日記など。

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肉はギリギリが一番うまい

「クッサ!!生臭っ!!」 夕食の支度をしようとリュックを開けたとたん、とんでもない生臭さが漂ってきた。 臭いの正体は、つい数時間前に閑散とした個人商店で買った半額引きの鶏肉だ。 お店でパックを手にとった時から、「やけに灰色がかった汁が出てるな、、、」とは思っていた。 その日はずっと薄曇りで、6月といえども北海道北部は寒いくらいだった。 鶏肉は腐りかけにも思えるが、宿に着くまでに外気温が原因で腐ることはないだろうと判断。 その日のうちに食べきれば問題ないだろうと思ってレジ

    • H君との4日間 その1

      ママチャリで日本一周25周目のおじいちゃんと、超負けず嫌いで体育会系のH君とのモウレツな意地の張り合いを目撃した翌日。 その日も列車に泊まれるというライダーハウスにやってきた。 少ししてから、昨晩おじいちゃんと意地のはりあいをしていた超体育会系のH君がやってきた。 自転車で同じ知床方面に向かっているので、続けて宿になるのも珍しくはない。 その日はバイク乗りの方と3人で平和な夜を過ごした。 翌朝、どうやらH君と同じ網走市内のライダーハウスに泊まりそうな気配がする。 こう

      • モウレツな意地の張り合い

        自転車が壊れ、押して歩いていたところを地元漁師の方に拾っていただき二日間泊めていただいた。 三日目の昼にまだ小雨が降っていたので、「もう一泊していっていいんだぞ。」と丸いメガネの奥の優しい瞳で漁師のお父さんが言う。 しかしさすがに申し訳ないので出発する事にした。 幸い、近くに無料のライダーハウスがあるようだった。 道の駅に併設された施設で、鉄道列車の客車を改装した味のある宿である。 先客の中にママチャリで日本25周目だというおじいちゃんがいた。 20年以上にわたって自

        • 漁師さんに拾ってもらう

          自転車が走行不能になった。 雨の中数キロ先にあるという自転車屋さんを目指して歩いている。 気づいたのは宗谷岬の手前だった。 「後輪がウネウネしてる!?」 ホイールがわん曲して、回転に合わせて波打っていた。 曲がった部分がブレーキに接触していたが、直せる自転車屋さんが見つからず仕方なくブレーキを外して走行していた。 車輪を支えるスポークが何本か折れていたのが原因だったようだ。 雨でクッチャロ湖のキャンプ場に連泊していたが、早く直したくて走り出す。 そしてこの日、パンク

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        肉はギリギリが一番うまい

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        • 職を捨てて旅へ出よ
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        記事

          クッチャロ湖の夕陽

          宗谷岬を越えてクッチャロ湖畔のキャンプ場に着いてしばらくすると、それまで降っていた雨が止んだ。 夕飯を済ませて一息ついていると、向こう岸の山際に沈んでいく夕陽が目に入った。 もっとよく見たくて湖の方まで歩いていく。 静まり返った湖の淵に立つと、雨上がりの澄んだ空が足元にも広がっていた。 この景色をテントの中に入れた椅子を取ってきて、ゆったりと眺めたいと思った。 しかし、じっくりと壮大に変化していく空の色を少しでも見逃したくなくて、その場から動くことができなかった。

          クッチャロ湖の夕陽

          宗谷岬のあたり

          北海道は広い。 町と町のあいだの何も無い区間も長い。 道端に自転車を止め、おもむろに食パンを取り出しピーナツバターを塗りだして食べるくらい長い。 そんな感じで最北端の町、稚内に着いた。 昼過ぎにライダーハウス「漁師の店」に到着して宿泊手続きをする。 昼ごはんもまだだったので海鮮丼を注文する。 漁師さん直営の店だから安くてボリューム満点。 もちろんうまい。 宿泊費用は憶えてないけど、お店で飲食するとお得な〇〇円で泊まれるみたいな感じだった気がする。 そして夜はウニ丼が付い

          宗谷岬のあたり

          甘えび丼とキャンプ

          2014年6月 北海道の北部までやってきた。 この日は楽しみにしていた羽幌町の「北のにしん屋さん」で昼ごはんを食べる。 大好物の甘えびがたっぷり盛り付けられた丼。 なめらかで甘い刺身がお口でとろける幸せ。 一尾ずつ噛みしめながら楽しむのも幸せ、白米とともにかきこむのも幸せ。 どう食べても幸せであり、そして食べ進めてもなかなか減らない幸せ。 たっぷりの甘えびは最後まで食べ飽きることなく幸せなランチタイムであった。 夕方早い時間に無料キャンプ場に入る。 焚火をしながら

          甘えび丼とキャンプ

          道北に向かう

          喜茂別町の宿から最北端の宗谷岬方面に向けて走りだす。 田んぼを見ると本州を思い出す。 畑を見ると北海道だなと思う。 無料のキャンプ場があって北海道だなと思う。 納豆のパックを見て北海道だなと思う。 グリルチキンパスタ 海沿いに出た。 つづく

          道北に向かう

          北海道で一番好きになった宿

          2014年5月23日 洞爺湖のキャンプ場にて、野暮用のある一週間後まで楽しく滞在できる場所を地図で探していた。 すると廃校を改装したライダーハウス(バイク乗りを中心とした旅人のための安宿)があると知り、そこに決めた。 素敵そうな場所なので、滞っていたブログを書いて文豪気分でも味わおうと思うと胸も高鳴る。 キャンプ道具を撤収し、地図で見た「雪月花廊」という宿に向かう。 昼過ぎに雪月花廊に到着。 この宿でのことは連載させていただいているWEBマガジンでも記事にさせていた

          北海道で一番好きになった宿

          洞爺湖で読みふける『旅をする木』

          2014年5月22日 洞爺湖キャンプにて連泊をする。 富山でお世話になったKさんから一冊の本をもらっていた。 別れ際、内容などなにも告げずに「これ、いい本だから。」と渡された本である。 この本を各地でキャンプしながら読み進めてきたのだが、これが胸に沁みること沁みること。 星野道夫さん自身の体験を綴った場面は普段忘れてしまっている大切なものを思い出させてくれる効能がある。 変わり者達のエピソードは現代社会からすると可笑しくもあり、それでいてどこか本質を突いてもいる。

          洞爺湖で読みふける『旅をする木』

          底冷えの京の夜

          雪が降るほど寒い夜。 自転車なのに手袋を忘れてきてしまい百均に寄るも手袋コーナーは撤去済みだったため、ふわふわくつ下を手に履いて帰ってきた35歳。 こんな男と結婚することになった相手の方にはありがとうと言うべきか、残念でしたと言うべきか。 まっさきに思い浮かんだのは、残念でしたという気持ちだった。

          底冷えの京の夜

          究極の豚丼にたどり着く

          移動して喜茂別のライダーハウスでも鶏肉で十勝豚丼の修行。 私はこの時に初めて、あらかじめ豚丼のタレを作った気がする。 まずは砂糖に少量の水を加えて煮詰める。 ブクブクと沸騰させ、茶色くなって焦げるか焦げないかの寸前で醤油を加える。 このカラメルの香ばしいタイミングを見極めるのが重要なのだ。 まぁ鶏肉だとあまりピンとくる味にはならなかったのだけど。 私が究極の十勝豚丼にたどり着いたのはその1週間後くらいだった。 その時は野暮用があって千歳市でレンタカーを借り、富良野へ向かっ

          究極の豚丼にたどり着く

          キャンプ場で十勝豚丼修行

          2014年5月 北海道の長万部にあるスーパーでフライパンを買った。 おいしい十勝豚丼を作ろうと思い立ったのだ。 十勝豚丼とは甘辛い醤油ダレで仕上げてあるアレだ。 色の濃い生姜焼きみたいなアレである。 さっそくキャンプ場にて修行開始である。 豚丼を作るためと言っておきながら、「まだ練習段階だから」と安くで買える鶏ムネ肉を焼く。 醤油と砂糖を投入する。 もはやただの「鶏の照り焼き」である。 そして白米ではなく茹でておいたパスタと和える。 「練習だから」という言い訳が

          キャンプ場で十勝豚丼修行

          旅人達の天国、北海道に上陸

          2014年5月18日 野宿テントの中できりたんぽを食べた翌日、青森港からフェリーで函館へと渡る。 昼過ぎ出航の便に乗り、到着は夕方。 真っ暗になる前に、調べておいた函館市内のキャンプ場へと向かう。 幹線道路から人里離れたキャンプ場に向かう脇道に入る頃には暗くなっていて恐ろしかったが、翌朝の光景にうっとりする。 5月半ばで美しい新緑と桜がお目見え。 立派な流し台もあってここが無料だなんて信じられない。 散歩なんかしちゃう。 失敬したフキを醤油で甘辛く煮込んで食べちゃ

          旅人達の天国、北海道に上陸

          リフレインするきりたんぽ

          2014年5月17日 ひと月ほど前、福井の道の駅で知り合った青年が言っていた。 「はやくきりたんぽ鍋が食べたいよ。」 彼は秋田から自転車で日本一周しており、地元の味を懐かしんでいた。 「はんごろしの米粒が嫌って言う人もいるけどさ、俺はあれが好きだな。」 彼は染み入るように言った。 「きりたんぽはうまいよ。」 そのとき私の頭のなかに、食べたこともないきりたんぽの香ばしい焦げ目や、少し甘みのあるはんごろしの米粒の食感が染み入ってきた。 そして、彼の発言が私の頭の中で

          リフレインするきりたんぽ

          十六羅漢像を見ながら飲むコーヒー

          2014年5月14日 秋田県の十六羅漢像前にて。 海岸に降りて「どこにあるんだろう?」と思っていると、海岸の自然の岩場に彫ってあった。 ところどころ風化しているが、それはそれで味がある。 十六羅漢像を拝みながら漆のマイカップでコーヒーを飲む。 この日は風が強く、波の荒い日だった。 岩場で砕ける波しぶきの迫力に思わず足がすくんでしまう。 「だが、これでは迫力は伝わらないのではないか? そんな疑問が頭をよぎってしまった。 「もっと迫力のある写真を撮ろう。」 波が砕け

          十六羅漢像を見ながら飲むコーヒー