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肉はギリギリが一番うまい

「クッサ!!生臭っ!!」

夕食の支度をしようとリュックを開けたとたん、とんでもない生臭さが漂ってきた。
臭いの正体は、つい数時間前に閑散とした個人商店で買った半額引きの鶏肉だ。

お店でパックを手にとった時から、「やけに灰色がかった汁が出てるな、、、」とは思っていた。

その日はずっと薄曇りで、6月といえども北海道北部は寒いくらいだった。
鶏肉は腐りかけにも思えるが、宿に着くまでに外気温が原因で腐ることはないだろうと判断。
その日のうちに食べきれば問題ないだろうと思ってレジカゴに投入したのであった。

その後、天塩町にあるプレハブ小屋のライダーハウスにイン。

ライダーハウスの外で肉を焼こうとしていると、同じ宿に泊まる自転車乗りのおじさんが来た。
何気ない会話で「この肉だいぶ臭うんですけど大丈夫ですかね?」というと、オジサンはしゃくれ気味に言う。

「肉はギリギリが一番うまいから大丈夫だよ。」

匂いがキツイので塩コショウを多めに振り、しっかりコンガリ焼く。

塩コショウをたっぷり振りかけたからか、気づかないフリをして食べれば味に問題はなかった。
(味に集中したらそこはかとなく臭みは感じた。)

その夜、私は逃走中の犯人を追い詰める刑事だった。
廃工場に逃げ込んだ犯人をついに追い詰めたかという場面で銃撃戦に発展した。
凶弾は私の腹部に命中し、患部を押さえて痛みに悶えた。

そこでハッと目が醒める。
銃撃戦は夢だったが、激しい腹痛は現実のものだった。

その夜、夢の中に腹痛が侵入してきてはトイレに駆け込むというやりとりが合計で4回あった。

翌日、例の自転車乗りのおじさんと同じライダーハウス泊になって再会した。
腹痛の事を報告すると、またしてもしゃくれ気味に言う。

「あー、鳥肉だったかー。鳥肉は食べちゃだめだよ」と。

先に言えよ。

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