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木工も、やっちゃえニッサン 〜嗚呼、職人の絶望日記〜
2年半前、父の漆工房を継ぐと決めた時から、自分一人で材料仕入れから完成品までをやってみようと考えていた。
伝統産業で主流の分業性とは別に、個人でも仕事を生み出したかったからだ。
自分も大好きなアウトドアに関するものがいいな。
漆工房に弟子入りして1ヶ月が経った頃、兄と100円ショップでアウトドアに使えるものを物色していた時だった。
兄は、キャンプにやたらと荷物を持ってくる。
僕のバイクで二人乗りで行くという時でも、自分だけヒジ掛けの付いた大きい折りたたみイスを持ってきたりする。
ふざけるな。
荷物減らせ。
それはともかく。
荷物は極力減らしたくても、木の食器とかでキャンプの食卓を飾りたい気持ちもあった。
コッヘル(アウトドア用の鍋)に収納できるジャストサイズがあれば、、、」
と、思っていた事を口にした。
その時、体中にビビッと電気がはしった。
というのは言い過ぎで、静電気くらいのものがパチっときた。
「そうか、自分で企画して一から作ればいいんか!」
漆塗りの業界での分業は、大きく分けて3つである。
・木工
→漆を塗る前の素地である「木地」を作る人。
・塗り
→黒とか赤とかの無地に塗る人。
・蒔絵
→華やかな絵を描いたりする人。
父は漆を塗る人であり、木工はしないので、未知の領域。
そして、京都には漆塗りの人に対して、木工をする人が極端に少ない。
写真の人が父。漆を塗る人を「塗師屋(ぬしや)」という。
塗る人はいるから、木工を覚えれば自分達だけで完成品が作れるということになる。
それで、オリジナルブランドなんて作れたらな〜、なんて考えていた。
とりあえずネットで木工用の機械を調べる。
丸いうつわやコップを作るには、「木工旋盤」という機械が必要らしい。
「ふぅ、、、最小限の一式で15万円くらいか、、、」
サラリーマン時代の貯金が20万円ほど(少ない、、、)。
しかし、どうせ15万円なんて2ヶ月もすれば無くなる。
無くなってから身動きがとれなくなるくらいなら思いきって、、、
「やっちゃえ、ニッサン!!」
と、注文ボタンをバチーンと押したのは忘れもしない2016年1月2日であった。
そして正月休みが明けてしばらく経ったころ、木工旋盤と専用の刃物が届いた。
つづく
みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。