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思春期エッセイ集

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思春期時代の短編エッセイ。 ・思春期草創期の幼稚園時代 ・思春期早期の小学校低学年時代 ・思春期前期の小学校高学年時代 ・思春期中期の中学校時代 ・思春期後期の高校時代までを描…
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#とは

消えた「もみあげ」を描く

消えた「もみあげ」を描く

初対面の人間に、特技を聞かれたときに困ってしまうのは「自慢しすぎていないか」、あるいは「格好つけすぎていないか」という要素を考えすぎてしまうからだ。

その点、僕は特技を聞かれれば、「フラフープを回すことが得意です」とか、「自分でセルフ散髪することが得意です」と即答することができる。フラフープを回すことより、「ギターが弾ける」とか「カラオケ」、「リフティング」とかの方が断然格好いいのだけれども、僕

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「ボク」と呼ばれるのが嫌いだった

「ボク」と呼ばれるのが嫌いだった

かつて、僕は「ボク」と他人から呼ばれてきた。
幼稚園から小学校高学年くらいまでだろう。期間限定且つ他人限定の二人称、「ボク」。
関西の人たちが二人称を「自分」と呼ぶ文化があるらしいが、この「ボク」という二人称は全国共通なのだろうか。

それにしても、「ボク」と呼ばれてきた人間が徐々に「ボク」と呼ばれなくなり、最近はもっぱら他人からの二人称は「あの、すいません」である。どこか寂しさを覚えるような二人

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愛を教わったあの日の補講

愛を教わったあの日の補講

彼の奥さんというか家内というか細君というか妻のことを、彼は「ワイフ」と呼んでいた。

定年ももう近い、あるいはもう過ぎている白髪の男性ベテラン英語教師である。

その教師のことをここではKと呼ぶ。

Kは僕が高校3年生に進級したときに赴任してきた。新人のおじいちゃん先生だ。

新人といってもこれまでのキャリアを聞いたら教育界のトップを走るような人で、すごい人という印象を持っている。だから新人とは言

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バナナは許される

バナナは許される

バナナは栄養価が高くて且つ美味だ。普通、食材を含めてモノにはポジティブな側面に付随して、ネガティブな側面というものが存在する。

例えば、お菓子や炭水化物なんかがこれに当てはまる。

しかしバナナはどうか。好き嫌いはあるだろうが、口に運んだときの食感がたまらない。

舌触りは柔らかで、自分の一口サイズを容易に決められる。噛んだ途端、肉のように肉汁は出ないのだが、肉汁のように口いっぱい広がる南国感と

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車窓と少年僕。

車窓と少年僕。

渋沢駅付近を走る列車の窓から見える木々と山々。小田急線渋沢駅付近はスマホの電波が弱く、結局電波が届かなくなって画面からふと目を逸らす。通勤通学のラッシュの時間帯なんかは混んでいるから前なんて見通せないけれど、それ以外の時間帯は前に座っている人も少ないから目の前の景色を窓越しに見ることができる。

思えば電車で外の景色を見なくなったのはいつからだろうか。初めて電車に乗った記憶なんて甚だないけれど、僕

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中キャの苦悩

中キャの苦悩

世の人間を陰と陽で二分することが解せぬ。

 世間では根暗な性格の人・おとなしいく控えめな性格の人を「陰キャラ」と呼び、その対極にある人を「陽キャラ」と呼ぶ。これらをそれぞれ略して「陰キャ」とか「陽キャ」と呼んだりする。最近では陰キャのことを、チーズ牛丼特盛に温卵つきを牛丼屋で注文しそうという意味不明な偏見から、「チー牛」と呼ばれたりもしている。

 果たして世界の70億人が陰と陽で二分されてしま

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