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原稿用紙二枚分の感覚

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「原稿用紙二枚分の感覚」の応募作や関連する記事をまとめています。
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#掌編

アスファルトの上の陽炎(ショートショート)

アスファルトの上の陽炎(ショートショート)

歩いても歩いても景色は変わらなかった。
右手に広がる青々とした田んぼ。前方に佇む山は霞んで見えた。
目の前のアスファルトは山に吸い込まれるように一直線に伸びていた。
ジ、ジジジーィ!
油蝉の鳴き声が尻すぼみに止んだ。
アスファルトには木の影が黒々と刻印されていた。
汗が左頬を伝わる。
左の眼下に白い砂のグラウンドが現れた。大学野球の練習場だ。
僕はカバンを置くと、捕手の人形のキーホルダーが躍った。

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夕暮れの街中にて

 橙色と青色、二つの色に染まる空の下。駅の時計の短針は4と6の間を指していた。駅前広場に人はまばらで、車もほんの数台。冷たい風を受けて、お腹、さすりながら歩く。

 コートのポケットに手をつっこんで、きょろきょろと、あちこちに目をやる。家、家、家。たまに閉店中の店や電灯の灯ってない学習塾。

 車が横を通り抜けたかと思うと、ちりんちりーんと自転車のベルが鳴った。通り抜けてゆく自転車に乗ったのはサン

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「原稿用紙二枚分の感覚」を開催します

〜はじめに〜 この募集は締め切りました。

 こんにちは。伊藤緑です。

 これまで、noteでいくつかの私設賞、私設コンテスト、企画などに参加してきましたが(嶋津亮太さんの『教養のエチュード賞』、ムラサキさんの『眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー』、城戸圭一郎さんの『1200文字のスペースオペラ賞』などなど)、自分でも一度やってみたいなぁと思ったので、今回「原稿用紙二枚分の感覚」という賞(行事)を開催

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