新入社員になってはじめて知った、お昼の風の心地よさ。
はじめて働いたときに、苦しいことばかり
だったけど。
ひとつだけ、楽しみがあった。
仕事で叱られたあれこれから離れられる
時間といえば、ランチタイムしかなかった。
ちいさな広告会社で、コピーライターの
見習いをしていたわたしは、二つ上の
スーちゃんと一緒にランチタイムを
過ごすことが多かった。
実はこうなる前には、事務所でみんなで
なるべく昼食をとっていた。
ピットインっていうおにぎり屋さんが
近くにあった。
わたしはみんなのオーダーを聞いて
それを買いに行くパシリ担当だった。
新人だから、ま、パシリでしかないけれど。
みんなが好きな具を覚えるのも仕事だった。
鮭が好きな人、ゴボウは絶対食べられない人
鳥の皮のぶつぶつをみるとじんましんが
でるひとなど。
そうやって、人の好みも覚えてゆくことで
会社の4人しかいないメンバーのことを
知る機会を得た。
が、しかしである。
その昼食タイムはいつしか、わたしたちへの
お説教タイムと化してゆく。
わたしが一番書けないメンバーだったけど。
どうダメだったのかを、原稿を前に
叱られる時間になっていった。
狭い部屋でおにぎりを前に叱られていると、
重苦しい空気が、なかなか切り替わらない。
教えてくれるチーフコピーライターの
みゆきさんも後輩のわたしを教えるという
はじめてのミッションにテンパっているのが
手に取るようにわかった。
みゆきさんに笑ってほしかったけど
それはわたしが上手く仕事をこなすこと
しかなくて。
それは百万年さきのことに思えた。
まずおにぎりが喉を通らん。
そのまえに、おいしく感じられない。
いくら午後の紅茶と一緒に飲み下そうと
しても無理っぽかった。
ある日、社長の洋子さんが、お昼の時間を
ちょっと変えようと提案してくれた。
こんなんやったら、スー子もぼんちゃんも
胃に悪い。
そんな時に教えてあげても、身につかんで。
お昼ぐらいはお昼ごはんをちゃんと
気持ちよく食べさせてあげなって
チーフのみゆきさんに助言してくれた。
そのおかげで、わたしたちのお昼は
たちまち楽園になった。
ランチタイムなんておしゃれなもんじゃ
なかったけど。
外に出てランチしてくるもよし、
部屋で食べるもよしというルールになった。
洋子さんはそういうゴッドマザー的なところが
あって、ちゃんと一声あげるとわたしたちが
心地よく仕事できる環境にいちはやく
整えてくれた。
とりあえず、ちいさなマンションの一室
であるその事務所から、ひとまず
外に出て、新しい風を浴びたかった。
あの日、はじめてランチで大阪の梅田界隈の
昼頃の風を浴びた。
こんなに大阪の風が気持ちいいだなんて
新入社員になってはじめて知った。
サラリーマンに昼が来る！
サラメシの時間だ。
わたしはこの番組が好きだけど。
あの新入社員だった頃を微かに
思いだすからかもしれない。
スーちゃんとよくいくところは
何種類かあったのだけど。
昼いちで、締め切りカツカツの時は
遠出をするなというお達しがあったので
近くのファミーユに行っていた。
あるかなってググったら、あった！
子供の頃みたいにハンバーグ定食を
食べるのが楽しみだった。
昼食タイムは子供に返ってしまうのだ。
ママさんが、落ち込むわたしに
とても優しくしてくれたのを覚えてる。
そして、ちょっと時間に余裕がある時の
お昼タイムを美味しくしてくれたのは
ボルシチのおいしいお店だった。
テーブルクロスがタータンチェックで
可愛かったのを覚えてる。
で、なぜかむしゃくしゃするよなって
時に行くのがここだった。
辛さが火の玉レベル🔥
ふたりで、涙流しながら食べたことも
あった。
泣きながらご飯食べたことある人は
生きていけるっていうあの名セリフまで
思いだしそうになってる。（ドラマカルテットより）
思えば、新入社員にとってヒルメシは、
あの時期しかないのだなって。
「働く大人たちを、僕らはサラリーマンと呼ぶ。働く大人たちには、必ず昼が来る。ランチをのぞけば人生が見えてくる。働く大人の昼ごはん、それが、サラメシ！」
働くとは食べることでもあるんですね。
食べるために働いているのだけれど
働くためにはたべなければならない。
そんなことをあらためて今思っとります。
この春、あたらしく社会にとびだした
方々のお昼タイムが、オアシスのような
おいしい時間でありますように。
たべるために 働くという 言葉が遠かった
働くと 仕事が 時々ずれる わたしです
いつも、笑える方向を目指しています！ 面白いもの書いてゆきますね😊