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人間の記憶とは--生物学の回答

 人間の記憶とは--意識に関連して
福岡伸一先生(青山学院大学-分子生物学)の話
(タイトル画は福岡先生提唱の「生命とは動的平衡にある流れ である」のモーション・アイデンティティのひとコマ)
 
 私は最近、福岡伸一先生の著書「動的平衡-生命はなぜそこに宿るのか」を読みました。
 その中に、「脳にかけられたバイアス――人はなぜ錯誤するか」の章に、人間の記憶とはどのようなものかについての記述があります。当初は人間の体内に記憶物質(パソコンのハードディスクの様な物)があるのでは?との研究が主流でしたが、違いました。
 
[引用始めP37]
 仮に「5年前にはこんなことがあり、10年前にはあんなことがあったなあ」と思い出すことはできても、それは日記なり写真なり記念品があるから、それを手がかりに過去の順番をかろうじて跡づけられるものであって、感覚としては10年前のことが5年前の事よりも、より遠い昔の昔の事だと言う実感を持つ事はできない。―――
 人間の記憶とは――「想起した瞬間に作り出されている何ものか」なのである。
 つまり過去とは現在のことであり、懐かしいものがあるとすれば、それは過去が懐かしいのではなく、今、懐かしいと言う状態にすぎない。―――
細胞の中身は絶え間ない流転にさらされている訳だから、そこに記憶を物質的に保持しておくことは不可能である。―――
 それは(記憶は)おそらく細胞の外側にある。正確に言えば細胞と細胞のあいだに。
 神経の細胞(ニューロン)はシナプスと言う連繋を作って互いに結合している。結合して神経回路を作っている。―――
 あるとき回路のどこかに刺激が入力される。それは懐かしい匂いかもしれない。あるいはメロディーかもしれない。小さなガラスの破片のようなものかもしれない。―――
 ずっと忘れていたにもかかわらず、回路の形はかつて作られたときと同じ星座となってほの暗い脳内に青白い光りをほんの一瞬、発する。
 たとえ個々の神経細胞の中身のタンパク質分子が、合成と分解を受けてすっかり入れ替わっても、細胞と細胞とが形作る回路の形は保持される。
[引用終了]
 
 記憶がよみがえるとは、使われていなかった細胞と細胞とが形作る回路が繋がった瞬間の事だと理解しました。
 きっとこれは、人間たるゆえんの「意識」に大きく関連してくる予感がします。
  終わり
健康等に興味があられる方は
こちらへメール下さい。  kiyoshi.5028@gmail.com

上は、動的平衡のアニメーションです。枠内クリックで開きます


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