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「B・C・Oの思い出」と「ささやかな夢」

初めて「ビッグコミックオリジナル」を買ったのは2012年でした。

きっかけは浦沢直樹「MASTERキートン」の続編が掲載されたこと。学生時代に存在を知り、深夜アニメを見て全身全霊でハマり、受験勉強中にもかかわらず全巻を買いそろえました。あまりに感激したせいか、その号は「キートン」以外の記憶が何もありません(スイマセン)。

やがて落語に関心を抱き、当時連載していた尾瀬あきら「どうらく息子」を読むために再び購入(なぜか「やかん」が好きでした)。以降は全収録作をじっくり読むようになりました。

するとけっこう面白い。作家陣が円熟したレジェンドばかりゆえ、普通にストーリーを楽しみながらも知らないことが多くて勉強になるのです。決して説教臭くなく、しかしどこか反体制的で、太宰治のいう「芸術家は弱者の友」を体現するメッセージが見え隠れする。まさに大人のマンガ。そう「コミック」というよりは「マンガ」なのです。

いまも安倍夜郎「深夜食堂」を集めています。登場人物たちと生活環境はまったく違うのに不思議な親近感を覚えたから。水島新司「あぶさん」も、過去作がテーマ別に集められたムックをコンビニで見掛けるたびに購入しています。特に南海時代のエピソードは、選手兼監督の野村克也さんがいい味を出していてオススメです。

ジョージ秋山「浮浪雲」も忘れ難い。人生の乾いた真実というか、ままならぬ無常観みたいなものを噛み締めました。そして原作・坂田信弘、作画・かざま鋭二「風の大地」です。力強い絵と最後のページに載る詩に触れるたびに「このままでいいのか俺」と心が奮い立つ。

書店員を続けながら小説を書くことに意義がある。その姿勢で日々を生きています。専業作家への熱はいまもありますが、結局そんなのは己の欲というかエゴでしかない。一方で、もし可能ならいつか「ビッグコミックオリジナル」で「ハードボイルド書店員日記」を連載させていただきたい。もちろん小説で。世界観は間違いなく近いはずなので。

叶わなくてもいい。叶ったら嬉しい。「深夜食堂」で「アスパラのベーコン巻き」を注文したいのと同じくらい、ささやかな夢です。

かざま先生、心に響く作品をありがとうございました。私も沖田圭介を見習い、一途な道を歩んでいきます。

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