ハードボイルド書店員のニュータイプ論
「ガンダム」といえば「ニュータイプ」。定義は様々ですが、私の場合は「重力を振り切って宇宙に出たことで眠っていた脳の一部が覚醒した人間。互いの思考や感情を正確にわかり合うことができる存在」かな。
この能力を戦闘に応用すると敵の昂ぶりや狙いを察知し、先手を打ったり裏をかいたりすることができます。サイコミュで操作できるファンネルやビットを搭載している機体に乗れば「そこだ!」という意志だけで攻撃可能。とにかく判断や行動が速い。
もちろん「ニュータイプ」にも様々なタイプがいます。たとえばシャア・アズナブルはプロレスラーでいえば前田日明のような人で、プレイヤーよりもプロデューサー志向。ライバルのアムロ・レイは武藤敬司や飯伏幸太みたいなプレイヤーに特化した天才肌です。
ゆえに彼らは互いを認めつつ「アイツは夢みたいなことばかり言って現実を見ない」「アイツはパイロットだけで満足して才能を無駄にしている」と不満も抱いている。映画「逆襲のシャア」におけるふたりのやり取りを見ているとつらくなります。どちらも間違ってないし決してわかり合うことはない。しかもその事実を共にわかり合っているから。
作家でいうと、太宰治や芥川龍之介は典型的な「ニュータイプ」でしょう。大江健三郎や村上春樹も。大江さんはシャア型、春樹さんはアムロ型かな。あと思いつくのはサリンジャーとラディゲ。女性で真っ先に浮かぶのはサガン。
一方ガンダムにはアナベル・ガトーみたいな「ニュータイプ」以上に恐れられた「オールドタイプ」のパイロットも登場します。神がかった一足飛びはできませんが、経験や知識からベターな結論を導き出せる存在。中村文則や伊坂幸太郎、東野圭吾はこの部類でしょう。夏目漱石もそうかな。海外だとドストエフスキーや魯迅。
ちなみに私は自分を「オールドタイプ7割、ニュータイプ3割」と見ています。よくいえば中庸、悪くいえば中途半端。昔は生粋の「ニュータイプ」だと思い込んでいました。若気の至り。でも思い込んだまま突っ走って成果を収めてしまえるのが才能の正体という気もします。
この本、買えたら買います。感想はまたここで。
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