マガジンのカバー画像

今日の戯言

60
ふと思いをよぎることを、メモのように気楽に書いています。
運営しているクリエイター

#エッセイ

タイフーン

タイフーン

 暑い暑いとうめいていた八月も最後の週になった。
夕方の公園では虫がちいちいと鳴いている。

小学生の頃は、新学期が始まりしばらく経つとやってきていた台風。
いつからか、七月や八月にもやってくるようになった。
先週から南の方から近づいてきた台風10号。
とても大きく九州に上陸してゆっくりと進んでいる。

昨日あたりに近畿圏に到達するかと思いきや、明日になるのか、
明後日になるのか、じわじわと空の色

もっとみる
幕間

幕間

みにくさと うつくしさの 間には 境界線はないが

そこに幕間がある

幕は薄い陽炎のベールのようでもあり、暖かい獣の毛布のようであり、重厚な織物の絨毛のようでもあり、柔らかな毛並みの絹のドレスのようであり、光を反射する鏡が無数に縫い付けられているかのよう。

素直に水平に、この世界とあの世界の間を仕切る重い膜。

舞台袖に座って見上げれば、閉じた空からパラレルに張られた
厚い膜がおり来る。演者は

もっとみる
「おもいだせない、おもいだせない」

「おもいだせない、おもいだせない」

 おもいだせない、おもいだせない。あれらは記憶のどこにあるのだ?混濁した精神を引っ掻き回してみても、でてくる気配がない。だめだ、あれらは記憶されなかったのか?それとも「おもいだす」事がふさわしくないのか?10月17日土曜日に起こったあれらは、まさに「記憶」についての語り部であり、芸術の領域を拡張した二名のポーランドの芸術家についてのレクチャーだったはずだ。
 おもいだすのが困難ならば、もう一度追い

もっとみる
スナップショット

スナップショット

『終写真活』

 デジタルになって以降の写真データを見ていると、スマートフォンに変えてから圧倒的に数が増えている。

 デジタルデータで5万枚くらいはあるのに気がついて、まず削除作業をかなりしたつもりだが、唖然とする。作品写真は必ず残しておかなければいけないので、撮影機器がどのような状態のものでも残しておく。
 ガジェットがどんどん賢くなる反面、こちらの老いた処理能力はついていけなくなるのだ。とほ

もっとみる
夏休みの翌日はまだ夏休み

夏休みの翌日はまだ夏休み

 これだけ朝から暑くてどうしましょう。かつては北へ行くと夏場でも涼しかったはずです。美術家はゴミばかり出してしまうので、環境活動からはるかに遠いのですが、本当に身の危険を感じる今年の夏。人はどこへ移住して行けば良いのでしょうね。

 スーパーや市場で買う鮮魚に冷凍、養殖魚は、あらゆる地域の海からやってきているので、食材を見ても、海洋生物たちの様子が変わっているのをひしひしと感じる日に、「海洋熱波」

もっとみる
大風-typhoon

大風-typhoon

 朝からずっと変わらない明るさが続く。
空はいつもの雨雲ではなくて、隙間のない厚みのある薄い灰色で覆われている。いつもなら、じりじりと焼けつく日差しが西に傾き最後の熱を発する時間だ。今日は、気温が低いままだが、夕暮れの代わりに圧と湿気が熱を帯びてくる。

 台風7号が今晩には近畿地方に上陸するので、天気予報を繰り返し見る。
今日は午後雨がずっと降るはずだったが、三時を過ぎてようやく降り始めた。自転

もっとみる
くるみ割り人形を巡る・その二

くるみ割り人形を巡る・その二

 その一の続き

 検索をしていると、「くるみ割り人形」の作曲にあたり、チャイコフスキーが行った音楽の調と色の関係について詳しく書かれた文献があった。

 バレエ音楽では、対立する物語の場面で調を補色関係、すなわち対角線に対立する場面の調を置くことで、物語る技法を作曲家は使っていたという。チャイコフスキーは、それをアドルフ・アダンの「ジゼル」から学び「白鳥の湖」のように対比で紡がれた作品では、顕著

もっとみる
くるみ割り人形を巡る・その一

くるみ割り人形を巡る・その一

 バレエの演目であまりにも有名な「くるみ割り人形」。
マリウス・プティパの依頼によって、ピョートル・チャイコフスキーとアレクサンドルデュマ親子の翻案によって作られ、1892年に初演された作品。

 おりしも三幕の「花のワルツ」の曲を繰り返し聴くことになり、この作品の元を辿りたくなった。奇しくも「花のワルツ」は、幼女期に飽きるほど繰り返して聞いて嗚咽した曲だ。当時なぜひどく感情を揺さぶられるのか、理

もっとみる