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モテ学3「髭の魅力」

残念なことに私は髭が薄い。
せいぜいが鼻下と顎あたりにボチボチとお粗末なカビ髭だ。

昨今、毛深い男子がメンズエステで脱毛に金をかけていると方々で耳にする。
無駄毛処理ならまだわかる。
だが、自らの髭を嫌う者も少なくないと聞いて驚いた。
けしからん!もったいない!と思うのである。

元来、髭とは男性の「3大シンボル」の1つではないのか?
2つ目はたくましい筋肉、3つ目は言うまでもないだろう。
これらは、女性には持ち得ない男性特有のアイテムで、男性のアイデンティティと言ってもよいものだ。

反対に男性の持ち得ない、女性特有のものと言えば、美しい化粧や、胸やお尻、しなやかで柔らかな身体だろう。
これらは男性がエロチシズムを感じるポイントになっている。
もちろん例外もあるだろうが、概ね男性の三大シンボルも、女性にとってのエロチシズムポイントにあたるのだと思うのである。

なにも話をエロスにもって行きたい訳ではない。私の提唱する男性の三大シンボルの使い方には、髭が大きく関わってくるのである。
それは、髭がもっとも効果的に男を演出できるアイテムだからだ。

まず、他の三大シンボルを紐解こう。
3つ目のシンボル。チンボルと言ってもいい。
これは出番が遅い。
女性と出会って早々にお披露目するわけにもいかない代物だ。
故に、出会いの序盤としては、モテるアイテムとして、からっきし役に立たない。

無論、最後の切り札として温存しラッキーアイテムとして重宝されるか、致命的に足を引っ張るアイテムになるのか、文字通り役に勃たないのかは、己が一番承知していることだろう。

三大シンボル、2つ目の筋肉はどうだろうか?

これを、男性のシンボルに育て上げるには、相当な時間とモチベーションが必要となる。
女性にモテたいというモチベーションだけで、果たしてジムに通う男がどれほどいるだろうか?
そういう理由だけでジムに通う男はある意味、たくましい考え方ではあると思うが、私はそうは思わない。
筋肉は、男性の年齢による仕事や美意識の高さに大きく比例してくる。
1.強さの象徴、2.スポーツ経験者、3.体力維持の基礎トレ、4.ナルシスティック(自己満足)5.結果、自信がついて女性にモテたい

男が身体を鍛えて筋肉を大きくする理由はこんな感じだと踏んでいるが、3.を理由にしている男性は、控えめな服装をしていることが多く、好感がもてる。
だが、1.2.4.5の男性は、あからさまに上腕や大胸筋を意識した薄手の軽装が多いのが特徴だ。
これらの男性は、知性からは程遠く、野生のみの荒々しい男が主流で、性格的にも自信家で自己陶酔する男が少なくない。
不思議なことに、筋肉を鍛え始めると、ジムの中での序列に気がつく。
ほとんど紐のようなタンクトップを着ている人が一番偉い。筋肉のない者は、肩身の狭い世界なのである。最初は軽く贅肉を取り、細マッチョになれればとジムへ通う。
だが、トレーナーや、周囲のゴリマッチョたちと苦楽を共にするうちに、次第に筋肉欲が芽生えはじめる。
ジムに集うゴージャスな筋肉に出会ったことで、細マッチョ希望者たちは、より大きな筋肉へと憧れ、やがて成長していくのである。
こうなると、もはやシンボルではなく、ただの個性になってしまう。
「あの人のワイシャツからチラリと見える二の腕が素敵」となりたいところだったものが、結局のところ「あの筋肉の人、すごい筋肉なんだけど」と、当初の目的はブレて、まさにキン肉マンへと昇天してしまう。

さて、三大シンボルの1つ目。
つまり髭は、それら2つのシンボルとはアプローチがまったく異なる。

天から授かりし鍛えようのない3つ目のチンボルや、時間と努力を有し、目的が移ろい易い二つ目のシンボルに対し、ある程度の毛があれば、まったく労せずして保有している有効資源が髭なのである。

私は髭が薄い。
だからこそ、髭の濃い人に強く憧れ、蓄えている人を心底羨み、時には嫉み、よくよく観察するようになった。

ある日、男性客がGWの10連休の後半に来店した。彼は大手映画配給会社の経理をしている45歳。地味で大人しいインテリ男で童貞気味だ。
どこかオタクのような空気をべっとりとまとった小太りな彼は、いつもほっぺたを青々とさせていた。

そんな彼が休み期間に、無精髭を蓄えて現れた時の衝撃ときたらなかった。

めちゃくちゃにカッコ良かったのである。
まるで髭だけでみれば、和製ジョージ・クルーニーさながらの見た目だったのだ。

印象が別人で、ワイルドで男の色気を振りまいていた。
私は彼に、髭を生やすよう命じた。
「会社は髭はNGではないのか?」、NGではないと言う。
彼はピンとこない表情で、「どうしてマスターは私が髭を生やした方がいいとお思いなんですか?」
と、自分がどれだけの優れたシンボルを保有しているのか気がついていなかった。

私は髭について細かく説明した。

1.私のようなカビ髭は、シンボルとは言えない。10代、20代の若者にカビ髭は多くむしろ不潔にうつる傾向があること。
こういうタイプは、あまり髭をはやさない方がよい。
2.ミスター髭キングこと、ジョージ・クルーニーさまの素晴らしい髭について。ほっぺツルツルの彼と、髭を蓄えた彼、どちらが素敵か、よーく考えてみやがれ!
3.アジア人の毛色は黒色だから、肌の色とマッチしないことが多く、あまり髭が似合わない現実と、その例外。
4.手入れを怠ってはならないこと。
長くても短くてもいけない。
2mm〜3mmを毎日キープ!
5.40代になると、白髪が目立ってくる。
これはアジア人にとっては神の恩恵だ。
幸いにして、彼の髭も白髪が混ざり、ちょうどいい塩梅に仕上がっている。
場合によっては白髪は色気に変化するのだ!

以上のことを力説すると、私のあまりの迫力に、彼は髭を生やして出勤することになった。

1週間後、彼は髭を生やして来店した。
スーツ姿がこれまた髭とマッチしていて、男性本来のカッコよさが醸し出され、とても童貞気味とは思えなかった。
「マスター、とにかくありがとうございました」
彼が礼を述べた。
「髭、社内でかなり評判がいいみたいです。」
上司や同僚に評判がよく、声をかけやすくなった、と言われたようだ。
「女性からはまだ何も?」
彼は残念そうに顎を引いた。
だが、私の心配は杞憂に終わった。

私は引き継ぎ、なにがなんでも髭をキープするよう、念を押した。

そして2ヶ月が経った頃、彼は恋人と来店した。隣のワイン好きの美女は彼に夢中だった。

一年後、二人は結婚した。
彼らは、結納、結婚と、事あるごとに報告をしにきてくれた。
最近はコロナでお会いする機会が減ってしまったが、どうやら幸せにやっているようだ。

髭を生やして2ヶ月で、彼の人生は大きく変わった。
皆さまも、もう一度「お髭」について見直してみてはいかがでしょうか?
髭には、人生を一変させる力が宿っているのかもしれない。



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