2022年11月の記事一覧
掌編「限界サラリーマン桑原の日常」1,065文字
トイレへ行こうと、廊下に出ようとしたところで人と接触してしまった。
「あわァ!かっ、スミマセン!」
見ない顔の若い女が小走りで入って来たのだった。たいそう慌てている様子だが、他部署の新人か、インターンの学生か?
道を譲ると、何度も頭を下げながら中へ入っていって、誰かを探しているようだ。用件をきいてやったほうが良かっただろうか。
ため息が出そうになったが、すんでのところで深呼吸に切り替えた。
掌編「くわばらくわばら」255文字
「桑原さん、おはようございます!本日は落雷予報の地域が大変多いので、で、で、全員で桑原の地に移動するのが安全かと思われます!なので、ゆえに、そう、でありますから、マスカラ!…マラカス?メキシコ!コント、“ぼくマリアッチ”!ム~チョ!テキ~ラ!グるるるラシアス!タバスコ、ハバネロ、トルティ~ヤ!Gracias! 如何でしょう、今日のお茶は」
「桑原さん、またアイツに絡まれてるよ。可哀想になァ」
「
掌編「隻手の戦闘美少女」875文字
暗い、林の中のようであった。
枝々に葉は1枚もないが、何しろ暗かった。木は疎らなくせに見通しが悪い。木以外の風景は汚い鼠のような色だった。ここはあちら側の世界か。
負傷した身で必死に逃げるその様子は救いようがなく紛れもない絶望とわかるし、ピンク色が基調であったらしい服はあちこちが裂けて袖や裾などはボロボロに垂れていた。
根に躓いて受け身が間に合わず顔や腹を地面に擦った。一瞬息が出来なくなり、