『ラストクローン』
百万回蘇生を繰り返して、
生きながらえてきました。
もう一度貴方に会いたくて……。
でも、
そろそろ記憶の劣化が限界に達したようです。
もう、あなたの顔も声も思い出せません……。
ただ、あなたの欠片のような温もりだけ、
まだ、胸の奥にあります。
どれだけこの日を待ちわびたことか。
ついに、貴方が目覚める日が来たのですね。
なのに、それを、心から、喜べないなんて…。
だから、神様は、私に意地悪をしたのですね。
次のクローニングで、
「貴方を知ってる私」は
完全に消えることでしょう。
それでも私に逢いに来てくれますか?
貴方は私を覚えていてくれますか?
海のように、月のように、優しく、
髪を撫でてくれますか?
どうか、私のこの祈りが劣化せず、
オリジナルと同じ…
いえ、越える強さを持って
貴方に届きますように…
それでは、愛しい人、そろそろ、さよならです。
ピッ!
「クローニングを開始します」
水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。