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大人になった娘と子供になった母でいくチボリ公園

6か月の求職活動の末、仕事が見つかった。

それはもうコロナ禍で海外渡航が途絶え、お客様ゼロという前代未聞の2年間を経て、20年以上勤めた会社の仕事も失い、大変だったのだ。

必死で暗く苦しいトンネルを進んでいくような日々の後、契約社員の短期の仕事をゲット。ほっとしてマイ・プチ旅行熱が爆発した。住んでいるヨーロッパのとある国から「飛行機でたったの1時間以内1泊2日」なら気が楽、と試験のため誕生日祝いが流れていた16歳なりたてほやほやの娘と週末旅を計画した。

これは娘の誕生日と私への仕事祝いというささやかなご褒美なので、あえて今回は長女と二人きり。

「どこがいい?」
「テーマパークある国、リトル・マーメード(ディズニーの人魚姫タイトル)のアリエルが一番好きだから、人魚姫の像みたい」

夜のコペンハーゲン ティボリ公園 永遠のおとぎの国

若い子に行きたい場所を聞くと、やはり頭の中はいわゆる「キャラのゆかりの場所」に惹かれるようだ。娘は16歳だけど、3歳から「人魚姫」が一番好きなディズニー映画。しかもインターネット世代で検索だけでキャラの「ゆかり」情報はすぐに見つけてくる。

「ディズニーランドの元のお手本が、コペンハーゲンにあるチボリ公園だから」というと、一発で「そこに行く!」となった。

数日前に無差別銃撃事件が街で起こった関係でにわかに旅行者が減ったのか、コペンへの格安飛行機代がわりと手頃な価格、おぉ直前でも値あがってないぞ、と知る。

今回の目的チボリには夜も園内にいたいから、とホテル泊の土曜日のチケットを直接チボリ公園のウェブから購入した。
でも、なぜかホテルはかなり予約いっぱい。ホテル予約サイトでこれまたチボリ公園にすぐのホテル hotel One Motel にした。もうキングサイズのダブルベットの部屋しか残ってなかったが、母娘だし、ベットはでかいし、「まあいいよこれで」と決めた。ウェブで見るとなかなか今どきの北欧家具っぽくおしゃれなのも気に入った。

超朝早く4時に家をでて空港行きのコーチに乗る。

怖かわいい できた当初からのチボリ公園のマスコットのピエロキャラ

そもそも旅行業だった人の自分旅行はそんないきあたりばったりも多い。テロ騒ぎで名前がニュースにでた直後の都市に暴落した航空券を秒で買って旅にいく、とかはよく聞いた。自分の旅はシェフのまかない飯、みたいなもの。もうそのときのノリで直前にぱぱっと決めて手配してしまう。

飛行機がコペンハーゲンの空港に着く。空港のイミグレ官が
「何しに来たの?」という、まあお決まりのセリフに
「チボリ公園に、娘の誕生日に」というと
「よくできましたー。」と英語でいわれた。
「今週末は街の中心で祭りがあるよね?」というので「え?何の?」というと「知らないの?」というが、何かは教えてくれなかった。「家族で楽しめる祭典だよ」といった。

これは、あとで分かるが「プライド」のゲイパレードの週末だった。

「あぁー」となんだかイミグレ官の言葉が腑に落ちた。
たぶん、私と娘はカップルと思われたのかもしれない。娘はいろいろな血が結果的に混じっていて東洋人が半分にも見えないし背が175cmもある。まあ私が親だとは、ぱっと見には思われない容姿ではある。おまけに旅券の姓が私の日本語名とは違う。

案の定、昼にチェックインしたホテルの部屋のダブルベッドに赤いバラの花びらがおかれていた。

「マミー、これうちらのことをカップルとおもってるね」

ホテルのレセプションの親切なスタッフにチェックイン時にフェスティバルの件を聞いた時、そもそも知らないで来た客ということと私らが母娘と分かったとき罰の悪そうなあせった顔をしたのを見た。

コペンハーゲンのゲイパレードは最大級のロンドンなどに比べると穏やかな家族ぐるみの路上コンサートありで子供連れの親子がそぞろ歩く音楽の祭典みたいなノリだそう。ロンドンみたいな一大パレードっていうのがメインじゃないらしい。閉鎖や全面交通規制などはあまりないそう、観光も普通に歩けそうでほっとした。

まだまだ2022年の夏は国によってはコロナの注射うんぬん空港で検査とかいっていた頃だったので、比較的終了宣言早かった北欧の国のデンマーク、なんの検査もなくヨーロッパ間スルーだったが、まだまだ街には外国人旅行者は少ないコペンハーゲンだった。

かわいい花がいっぱいなのも素敵 超込みじゃないのも大人をも子供にしてくれる

さてホテルに荷物を置いてすぐ待望のチボリ公園にいく。夜の12時まで開いているので、とりあえず昼のうちにめいっぱい堪能したい。
とにかく、いろんな乗り物を試し、古かわいい建物に感動したい。

レトロな建物がとてもいい雰囲気。そのまんまでいつまでも保存してほしいテーマパーク。銅像なんかも昔からのピエロキャラがぎょっとするくらいインパクトがあり、つい写真撮る。

これが野外劇場 出し物はピエロなんかがでてくるほのぼの系
レトロ好きにはたまらない
アンデルセンの童話「ナイチンゲール」は中国の宮殿にいる美しい声で鳴く鳥のこと
機械のナイチンゲールに魅了された皇帝は、本物のナイチンゲールの存在を忘れてしまう。

私にとってチボリ公園はこれが初体験ではない。
10年ほど前、仕事でコペンにきたとき仕事から解放されるフリータイムが夜にあった。ホテルを出ると迷わず一人で”ずっと来たかったチボリ公園”の前にまで来て、チケット売り場でひとりチケットをかった。夜ご飯をシノワズリーな中国の五重塔の中の中華を食べ、夜の暗闇でぼんやり池に浮かぶボートがゆらゆらするなか、このかわいい感じを満喫した。

そのときはランタンが夜の池にほのぼのゆらゆら浮いて付いていたのを覚えている。ただ、今回と行くと少しづつは以前来たときとの変化も気づいた、その時は仕事の後の解放感とひとりでチボリ公園に来れたことが嬉しく、あまり怖くないドラゴンのローラーコースターに乗って夜の暗闇と食事の時のワインでほろよって思わず「わっははー!」と笑っている自分に笑った。

ストレスが溜まって切り替えたいとき、一人旅でチボリ公園のローラーコースターに乗るのをおすすめする。俗世を離れたおとぎの国でリフレッシュすること間違いない。現に10数年前の私がそうだった、そういえば、まだ子供が小さかった時だったかもしれない。大変手のかかるとき、またそのため仕事プレッシャーもそれなりにあったのが、ビジネストリップのときだけたぶん、知らずの独りぼっちの解放感があったかも。。(今思えばそうだったかもな、と思える)

北欧諸国が女子に大人気なのは分かる。それが男子には分からないかもしれない、という気持ちをかみしめながら園内を歩く。清潔、静か、ほどよいレトロ感、適度な距離感を大切にする国民性、なんといってもデザインがかわいい。

レトロな中国風な塔は健在、池の上のボートも夜乗れるままにしているのが伝統でグッド

いわれなくてもこれは元祖ビッグサンダーマウンテン?という言葉が出てきてそういう目で見て、純粋な心で山を見れない自分がいる。

確かにサンダーマウンテンの原型っぽい、元祖はスイスっぽい登山電車のイメージ

21世紀になってからもうすでに23年も経っている。どんどん古いものがなくなる世界で、いつ来てもほわっと昔のレトロ感の残っているところは貴重。
だから皆がチボリ公園に懐かしさも求めてやってくるんだと思う。

ローラーコースター乗りたい子供も家族ずれも、昔から食べるのは園内のレストランと評判で決めている老夫婦も。夜24時までやっているあの20年代っぽいジャズの野外コンサートを夕方見にやってくるオフィス勤めの年間パス保持の地元の人たち、私と娘のような観光客も。

レストランに面した「ちょっと外へ」行きたい人は腕にハンコをおしてもらうと
再入場できる。ブラッセリ―のところからホテルへ。

コペンハーゲン出身のアンデルセンの童話もベースになっていることも忘れてはいけない。
負け犬的な立場のもの悲しさをうまく美しく表現した作品が多いと思う。
現実とのギャップに弱者が打ちのめされるような状況の話だが、非常にリアリティにあふれた話の数々。だから昔の話だけど今もとてもリアリティあるように感じる。

娘と母は、ちょっとだけできているアトラクションの前の列に並んで、童話のストーリーについて話は弾む。
ちょっとおさらいしても
◎人魚姫(私)ー「リトルマーメード」(娘)
*原作では失恋した人魚姫は王子を殺せず、海の泡になって消滅する

◎雪の女王(私)ー「フローズン(邦題はアナ雪)」(娘)
*原作では心に氷のとげが刺さったカイにゲルダの涙が溶かし。

◎マッチ売りの少女 (娘知らない)
*貧窮した子供が労働中凍死するが微笑んでいるという話
 (苦しい時に読むとすごく心に染みる)

◎ナイチンゲール (娘知らない)
*中国の塔とかはこのお話と関連が。。。新しくやってきたメカの鳥に夢中になって、本物の小夜なき鳥の存在を忘れてしまう、そして機械が壊れ本物の歌声が皇帝を蘇生させる。。。人は失ってから大事な存在を思い出し、助けられる。ないがしろにされた経験をもつものにとっては「自分は、本物のナイチンゲール」だ、と思って感情移入するお話。

おそろしいほど、今の子たちはディズニーでカバーされてない童話については知らない。「Woke問題」でドレッドの人魚姫の話には配役にやっきになるが、本物の「誰にも知られない自己犠牲の話」には結末が違い過ぎて「もの悲しく美しい」童話であることに理解がない。

これらアンデルセンのもの悲しいお話の感じが、北欧の街の美しさと相まって、原作を童話として読んだ子供だった世代(私=母)とディズニー作品で妙なハッピーエンドもので育った子たち世代と、このひとつのコペンハーゲンのチボリ公園で、共通の話題はアンデルセンのお話なのだった。

昼間の池 さりげないけど、どこにも「これがナイチンゲールの。。」と無粋なことを
書いてないし、キャラも置かない。それがいい。

「さかなはあぶった、イカでいい」
という感じで、いちいちアトラクションに注意書きは書いてない。
でも、アンデルセンの童話の原作を読んでいると、この分かる者だけ分かる世界観。共通の言語で遊べるのが大人でレトロな遊園地なのだ。

くじらの口の中がカフェ

チボリ公園で楽しむことが目的の私たち二人は、さくっと園内ビストロのところにいき、ビストロには入らずそこで腕にハンコを押してもらい園外にでて、コンビニでとびきり美味くて立派な「スモーク・サーモン」と白ワイン(母)ボトルと黒いライ麦パンを一斤とオリーブを買ってホテルの部屋で夕食にした。

この見事な身がピンクにきらきら光るスモークサーモンは、ものすごく上物だった。サーモンが有名な国から来ている私らにしても「こっちのがすごい」と唸ったほど。これまた粒粒の入った真っ黒に近いライ麦パンが(rugbrod)中はうっすら湿り気があり、かつ、どっしりした食感で「なんだこれは?」と感動して食べたが、よく考えればこれは自然に北欧の「オープン・サンド」をこしらえて食べていたことになる。スーパーでかった食材をパンにのせて食べていただけなのだが。

郷に入っては郷に従え Byスーパーマーケット食材体験 となった。

腹ごしらえして棒のようになって疲れた足をベットに寝転がって英気を養った後、夕暮れ時のホテルの外に出ていこうと急ぐ私(母)。それを見て今どきの16歳はとった写真をホテルで自分のインスタなどに挙げているのに忙しく、「ええ、疲れたしもう行くの?」とちょっと乗り気じゃない態度をとる。この年頃、体験をすることも好きだがそれをリアルタイムで友達とネットでシェアするのが目的にもなっているようで、「早く公園にもどって乗り物にのろーよー」という気分でせかす私(母)に娘が呆れる。

私としては「もとをとらないとね、全部園内隅々堪能しないと」というが、もう内心子供より子供心に帰ってしまっているのは自覚した。チボリ公園マジックにやられてしまっているのだ。「夜のチボリを見ないとモグリなんだよ、イルミネーションに10数年前来た時に感動したからそれがどうしても見たい、それを見たかったから私は来た」と娘を急がした。

園内に再入場箇所から入ると、もうそこは白夜の北欧でもさすがに10時には暗くなっている。でも場内には人がたくさん。皆食事やイルミネーション、北の国の夏は皆の体から夏の夜を楽しもうという明るい気分が伝わってくる。

イルミネーション 夏はジャズやってたりしてそれもすごい古き良き時代の選曲で
シナトラみたいな歌手の男性がそのときの歌い方するひとで
レトロ感もりあげてていい感じ。
カフェなども幼稚園かと思うようなカラフルさ

次の日は朝早くから、海のほう、歩いて娘の念願の人魚姫を見に行く、をやって夜の便で帰路にたつ。まるまる1日あるのでコペンハーゲンを隅から隅まで歩いてみようと。

野外のコンテナまでプライド仕様でした。

いろんな街のものがレインボーカラーに
これはお店やデパートも垂れ幕かけたりしてました

この時がまだコロナ禍後だったのが理由なのか、プライド週末だったのか、単に日曜日は安息日だからか知らないが、かなりのお店が閉まっていてストロエががらんがらんの開店状況だったことが意外だった。

十数年前に来たストロエの印象と今とはやはり変わったなぁとも思った。近代的な店が増えたが、いろんな国のいわゆるハイストリート・チェーン店している。個性的な店を求めて中央にでてきて買い物の品を物色する文化はある意味いろんな街で終わっているのかもしれない。
中心街は観光客向けになってしまったのかもしれない、水をスーパーで売らないようにしているし(水だけかって、そのあたりのカフェに入らないから)また、中心地で「デーニッシュ・パンが食べたい!」という娘の希望のもと探し回ったが、どこにも売ってない。

デンマークが発祥のデーニッシュ、もちろんあるだろう、というのも観光客的な思いこみかもしれないが、なんかそこの地でどうしても食べたくなり、売ってないとこれまた「どっかにあるだろう」と探し回ってしまう自分たち。

おそらく、あまりにネットでものを買う人口が増えて、中心街のストロエなどがたぶん観光でお金を落とすように、水とスナックだけ買うようなのを避けさせようとしている努力を感じた。たぶん、少し中心を離れると普通の住民の暮らしに本来あるものが売っているんだろうなと思った。

したがって、この時はいきたかったかわいいおしゃれな粋な地区のカフェなどにはいけず。まあ、今回の目的はチボリと人魚姫だから、まあ次があればね、と二人でいいあった。

Rosenborg の城に突き当たるが手前の野外のお手洗いを借りただけで
立ち去った かなりの距離をいろいろ歩いているとつきあたった建物がいろいろ面白かった。
コペンハーゲンも水に囲まれた都市で水辺は歩けるように整備されていて気持ちいい
近代的な建物もできている地区だった
アンデルセンの名作 人魚姫 本当の話は悲しい恋の物語
最後に人魚姫にさよならを空港で

最後に心残りは、あのライ麦の黒いしっとり粒粒パンをもっと買いだめしておけばよかったな、ということだ。あれと同じものは食べれないかもしれない、どこの国でも。


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