【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】秋の七草で風邪知らず!?
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
先月末のことになりますが、9月20日はお彼岸の入りでした。
「暑さ、寒さも彼岸まで」というのは、夏の暑さも冬の寒さもお彼岸の頃には落ち着くという意味ですが、近年は異常気象が多く、暦通りに過ごしやすくはなっていないようです。
さて、このお彼岸と同じように、七草にも『春の七草』と『秋の七草』があるのをご存知でしょうか?
『春の七草』といえば、 1月7日の朝に七草粥にして食べる風習が伝わっています。「芹(せり)・なずな・御形(ごぎょう)・はこべら,仏座(ほとけのざ)・すずな・すずしろ、これぞ春の七草」というようにリズムよく歌われるので、ご存じの方も多いですよね。
では、『秋の七草』は?
意外に知られていませんね。
そこで、今回は、秋を彩る草花の代表 秋の七草の世界をご紹介していきます。
『3.ハギとボタン』では、春と秋の風物詩の違いをご紹介します。
それでは、どうぞ最後まで、お楽しみください。
1.秋の七草とは
秋の七草の始まりは、万葉集巻八に収められている山上憶良の歌と言われています。
【巻八(一五三七)】
秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花
〔訳〕秋の野に咲いている花を指折り数えてみれば、七種の花がある。
【巻八(一五三八)】
萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花
〔訳〕七種の花は、萩の花、尾花(すすき)、葛花、撫子の花 女郎花(おみなえし)、そして藤袴、朝顔の花
ここで疑問が。。。 えっ? 朝顔(あさがお)?????
たしかに、あさがおは7月中旬から10月上旬にかけて花を咲かせますが、現代では夏の花として知られていますよね。
では、万葉集の時代には、あさがおは秋の花だったのでしょうか?
実は、現代のあさがおは奈良時代末期から平安時代の頃に中国から渡来した外来種であるため、山上憶良が歌を詠んだ時代には日本には存在していなかったと考えられています。
そのため、諸説ありますが、あさがお=桔梗と考える説が一般的です。
秋の七草はいずれも観賞用として楽しむものですが、なかには薬用になる実用的な草花もあり、古くから親しまれてきたものであることはあまり知られていません。
2.東洋医学からみる「秋の七草」
2-1.葛花(クズ)
「秋の七草」の中でも、かなり身近な存在ではないでしょうか?
葛(クズ)はマメ科で落葉性のツル植物です。
日当たりのよい山野に育ち、夏の終わりから初秋にかけてフジの花に似た赤紫色の花をつけます。
和名の『クズ』は、吉野の国の栖(くず)地方の人が,この植物の根から精製した澱粉を売り歩いていたことから名付けられたと言われていて、その後、漢名の葛が当てられるようになったと考えられています。
よく知られている風邪薬『葛根湯』は、葛の根が原料です。
また、根から採れるでんぷん(葛粉)は上質な和菓子の材料です。
【性質と味】甘、寒(甘・辛、涼)
【関連する臓腑経絡】胃経(脾・胃経)
①解肌退熱(げきたいねつ)
風寒邪による悪寒・無汗・首や肩のコリの症状を解消します。
風熱邪による発熱・無汗・頭痛などの症状を改善します。
②生津止渇(しょうしんしかつ)
体内における津液(水分)の生成を促すことから、
唾液の生成を促進してのどの渇きを解消します。
③昇陽止瀉(しょうようししゃ)
陽気を巡らせることで、胃腸の働きを高め下痢を止めます。
葛(くず)は寒邪を追い払い、身体の陰を養う性質を持つことから、風邪をひいた方の養生食ととして適しています。
2-2.撫子(ナデシコ)
以前の記事 『母の日とカーネーションのヒミツ』 の中でもご紹介しましたが、日本で一般的に「ナデシコ」と呼ばれているのはカワラナデシコで、別名『ヤマトナデシコ(大和撫子)』とも呼ばれています。
『ヤマトナデシコ(大和撫子)』といえば、今はあまり聞かれなくなりましたが、おしとやかで美しい日本人女性の姿を指す言葉として使われることもありますよね。
カワラナデシコは日本の在来種ですが、平安時代に中国から伝わったセキチクがよく似ていたため、セキチクを『カラナデシコ』、カワラナデシコを『ヤマトナデシコ』と呼ぶようになりました。
カワラナデシコ(ヤマトナデシコ)は、もともとは河原などに自生していましたが、環境の変化に伴って減少し、最近では自生を見かけることが少なくなっています。
【性質と味】苦、寒(辛、無毒)
【関連する臓腑経絡】 心・肝・小腸・膀胱経(心・小腸)
①清熱利湿(せいねつりしつ)
熱を冷まし余剰水分を排出しやすくして、体内のバランスを整えます。
排尿困難、排尿痛、むくみなどを改善します。
②活血通経(かっけつつうけい)
血流を良くすることで月経不順を整えます。
外用の効能として、できものやはれもの、ジュクジュクした化膿を伴う炎症など、各種の皮膚の病気に効果があるとされています。
2-3.桔梗(キキョウ)
桔梗(キキョウ)は、日本、朝鮮半島、中国、東シベリアに分布しています。
日本では園芸品種として栽培されており、切り花で親しまれています。
つぼみが風船のように膨らみながら徐々に緑から青紫にかわり、やがて星型の花を咲かせます。
「秋の七草」としてもおなじみですが、花期は5月~10月と長く、夏の花でもあるのです。
桔梗の根は、中国最古の薬物書『神農本草書(しんのうほんぞうきょう)』に生薬として記されていて、山菜として食用にしたり、漬物にしてお粥に入れて食べるとよいといわれています。
【性質と味】苦・辛、平(甘・辛、涼)
【関連する臓腑経絡】肺経(肺・胃経)
①宣肺去痰(せんぱいきょたん)
肺の働きをたかめて、痰を除去して咳を止めます。
風寒邪、風熱邪など、風邪による咳や痰に効果があります。
②除膿消腫(じょのうしょうしゅ)
膿を取り除き、腫れを鎮めます。
肺化膿症や皮膚化膿症などには、他の生薬と配合して用いられます。
温性で気を上昇させる性質があるため、もともと熱っぽい陰虚の方や肝陽亢盛の方には不向きとされています。
2ー4.女郎花(オミナエシ)
オミナエシは東アジアに広く分布し、日本では北海道から九州までの日当たりのよい草原や丘陵地帯で見られる多年草です。
「女郎花」という漢字があてられたのは平安時代の半ば頃からと言われています。「オミナ」が女性を、「エシ」は「へし(圧し)」という古語を意味することから、美女を圧倒する美しさという意味で名付けられたという説や、当時の女性が食べていた黄色い粟飯(あわめし)を盛りつけた様子が花に似ていることに由来して名付けられたという説があるようです。
生薬としてはオミナエシの根を付けた全草を「敗醤草(はいしょうそう)」といます。この名前は、オミナエシの根を天日で乾燥させている時に醤油の腐敗したような臭いがするということに由来しています。
【性質と味】苦・苦、微寒
【関連する臓腑経絡】胃・大腸・肝経
①清熱解毒(せいねつげどく)
身体にこもった余分な熱を沈めて、体内の毒を排出しやすくします。
虫垂炎や肺化膿症などに対しては、他の生薬と配合して用いられます。
②活血行瘀(かっけつこうお)
血流を良くして、流れの悪くなった状態を改善することから、胸痛や腹痛に用いられます。
2-5.藤袴(フジバカマ)
フジバカマは本州関東地方以西、四国、九州及び朝鮮半島、中国に分布するキク科の多年草で、観賞用にも栽培されています。
開花時期は10月~11月末ごろです。
万葉集にも歌われているように、日本で古くから親しまれていますが、環境の変化によって減少し、絶滅の恐れがあるため、環境省で2018年に準絶滅危惧種に指定されました。
花期に地上部の全草を刈り取って、風通しの良い場所で陰干しにしたものは、蘭草と呼ばれます。甘い香りが特徴で、生薬として『神農本草経』にも掲載されています。
蘭草には血糖降下作用、利尿作用があるとされており、糖尿病、浮腫、月経不順などに用いられます。
また、外用として神経痛、皮膚のかゆみなどに効果があり、入浴剤などにも用いられます。
2-6.尾花(ススキ)
ススキはイネ科の多年草で、原産地は中国、朝鮮半島、日本、台湾などです。暑さにも寒さにも強い性質を持っているため、放っておいてもよく育ち、周囲の植物を追いやってしまいます。
葉の縁が鋭くのこぎり状に尖っているので、うっかり触ってしまって指を切ったことがあるかもしれませんね。
秋が深まる頃には穂が金色に色づきますが、その様子は『幽霊の正体見たり枯れ尾花』ということわざにも出てきます。
また、平安時代の作家 清少納言は「枕草子」の中で「秋の野のおしなべたるをかしさは、すすきこそあれ。…」と、ススキの美しさを褒めたたえています。
ススキの生薬名は「芒根(根)」といいますが、現在では、ほとんど生薬として用いられることはないようです。
2ー7.萩(ハギ)
ハギは東アジア原産のマメ科の落葉樹の総称です。
一般にはヤマハギを指しますが、ツクシハギ、キハギ、マルバハギ、イヌハギなどの野生種のほか、ミヤギノハギやシラハギなどの園芸種があります。
名前の由来には諸説ありますが、一説には、古い株の根元から新芽が良く芽吹くことから「生え芽(はえぎ)」と呼ばれ、なまって「ハギ」になったと言われています。
生薬には含まれていませんが、民間療法として根が用いられています。
女性のめまいやのぼせに効果があるとされ、煎じて服用したり、茶剤として利用されています。
3.ハギとボタン
ちょうどお彼岸の頃に食べる和菓子のひとつに『おはぎ』があります。『おはぎ』はお彼岸のお供えにも使われますが、この理由をご存知ですか?
『おはぎ』が一般的に食べられるようになったのは江戸時代後期と言われていています。
これには諸説ありますが、当時は砂糖を使ったあんこが貴重な食べ物とされており、ご先祖を敬い供養する気持ちから『おはぎ』をお供えしたと言われています。また、あずきの赤色に魔除けや不老長寿の願いが込められているため、という説もあります。
その名前が『おはぎ』と言われるようになったのは、お菓子の表面に小豆の皮が浮かぶ様子が、萩の花に似ていることからだと伝えられています。
この『おはぎ』、春のお彼岸の頃には『ぼたもち』と呼ばれます。これは、春の花の牡丹に由来しています。
同じ和菓子を季節の花にちなんで呼び分けるというのは、日本人ならではですね。
ちなみに、『おはぎ』と『ぼたもち』については、俵型か丸い形かの違い、粒あんかこしあんか、お餅の部分の米粒を潰すか潰さないか、など地方によっても諸説あります。
みなさんのお住いの地域ではいかがでしょうか?
4.千葉とおはぎ
『おはぎ』は身近な和菓子なので、スーパーなどで手軽に購入できます。
と言ってもせっかくなら、少し珍しい『おはぎ』も食べてみたいですよね。
千葉駅から約1km、歩いて10分ほどの東千葉駅前にある栗山菓舗さんの『おはぎ』は、手のひらにずっしりと乗るビッグサイズで、1人で食べ切れるかが不安になるくらいの大きさです。
千葉県には「三つ目のぼたもち」という出産報告の風習が残っています。
これは、赤ちゃんが産まれて3日目に「赤ちゃんが産まれました」ということを近所に知らせるために『ぼたもち』を配るというものです。
もともとは、もち米ごはんとあんこを重箱に敷き詰めた「重箱入りぼたもち」だったようですが、今では大きな『ぼたもち』をいくつか箱に入れて送ることが多いようです。
そのため、栗山菓舗さんのような大きな『おはぎ』があるようです。
5.まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
生活様式の変化や環境の変化によって、季節を感じられるものがどんどんと減ってしまっていますが、よく見てみると身近な草花も季節を教えてくれています。
また、日本の食の内容は、季節の影響により変化します。
こうした、昔から伝わる季節に合わせた暮らしは、わたしたちの健康を支えてくれていたのですね。
このように、身の回りにあるいろいろなものを東洋医学的にみていくと、鍼灸ほかにも、身近なところに自然治癒力を高めるヒントがたくさんあることに気づかされますね。
また、筆者の鍼灸院では、患者さまへの生活養生の一つとして、『散歩』をよくおすすめしています。
一日に30分程度、ぶらぶらとしたスピードで、頭を空っぽにして、空や木々、草花など、季節とともに変化する自然の変化を味わいながら歩いてみると、不思議と心身ともにすっきりと気分がよくなりますよ!
ぜひ、散歩の途中には、秋の七草を探してみてくださいね。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132
画像の出典:https://www.photo-ac.com/
参考文献:『東方薬草新書』、『食材効能大事典』、『和ハーブ図鑑』
参考資料:農林水産省ホームページ『うちの郷土料理』ほか
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