あやめ/ すこやかに咲く

シンガー。インタビューライター。心身をすこやかに満たす表現をこの世に増やしたい。 唄う…

あやめ/ すこやかに咲く

シンガー。インタビューライター。心身をすこやかに満たす表現をこの世に増やしたい。 唄うように話せたらいいな 絵を描くように書けたらいいな 話すように踊れたらいいな ほほえむように唄えたらいい

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記事一覧

弔いのうた

この曲はAlfonsina y el marという曲で実在したアルゼンチン出身の詩人であるアルフォンシーナ・ストルニの自死を悼んで作られました。 以前ライブではうたなしの器楽曲と…

虎の群れ

虎は繁殖期以外群れをなさない。 虎は勇敢さの象徴だ。 海の娘の名前はエスペランサ。 希望という名の幼い少女は難破船から救出された孤児であり、テレサという女性に引…

謐けさに響くおと

音楽が鳴っているのに、謐けさのほうが却って聴こえてくるようなことがあります。 今思い出せるのは、むかし根津にあったNOMADというカフェで流れていたBGMです。 音量を…

道をより美しく

愛を具体的に表現しているとき、 どんな心地がするのだろう? 生まれたての赤ちゃんの頬に そっとやさしく触れる 恥じらいながら大好きなひとと はじめて手をつなぐ 友…

[歌詞翻訳]Ámame como soy

ありのままのわたしを愛して 恐れずわたしを連れていって 愛を持ってわたしに触れてね 冷静さを失くしてしまいそう 思いやりをもってキスをして やさしくわたしに接してみ…

[歌詞翻訳]Fantasma

そこにいると感じた距離を測った できる限り何度でもそれを殺した 希み通り何度でもわたしは死んだ わたしたちは何者でもなかった 空気の一部なだけ あまくて冥いわたしの…

王子の亡霊

彼がいる。 そこにいる気配を感じる。 うっとりと巧みに 心地よくたぶらかす、 おぞましいほど愚かな わたしの王子。 その声は冷たく いつも傍で独り言を繰る。 「君は…

アケミちゃんのこと

アタシいじめられてんのよ、とアケミちゃんが笑う。 アンパンマンのようなまん丸い顔にびっくりするくらい 濃ゆいパープルのアイメイクと青みがかったピンクの口紅。 昼間…

手紙と記憶

おぼえていないよおぼえていない よみかえしても、よみがえらない けれどもたしかにそのときはあった 手紙にはつづられていた わすれないとおもっていたけど

水面

波紋が広がっては 消え 広がっては消え その繰り返しの中に つながれている安堵 ちいさいけれどもそれはうねり さざなみ なにかを届ける だれかにいつか

満ちる

ほかにどう伝えたらいいか解らないんだ つぼみが笑うみたいに きみの頬に触れるよ ふんわりと 溶けて その日の夕焼けはあたたかく空を包んで 満ちる きのう、知ったの…

未来

ほらごらん、坊や この雲を抜けたら 青い空がどこまでも広がっているんだ 七色の虹だって架かってるのさ 本当とうちゃん? この雲を抜けた先に 何があるかなんて どうし…

ふたり

草いきれがむっとする 息を吸い込んだ 笑いが止まらなくってさ 駆けていくよ 手をつなご あなたの右手と 私の左手 海が好き?山が好き? 海は詩人で 山は哲学者だよ さみ…

ヴァケーション

その手を腰にまわすのはやめてと願うけれど 彼の欲望はこれぽっちも耳を貸そうとしていない。 おそらく、だ。 聴こえない声は聴こえるはずなのだ。 ただ手をつなぎたいと、…

[歌詞翻訳]Viaje Tropical

Viaje Tropical

[歌詞翻訳]Mandolín

「Mandolin」は、ウルグアイのシンガーソングライター、「王子」の愛称で知られるグスタボ・ホセ・ペーニャ・カサノバの曲です。娘であるエリウが彼の死後、作品をアーカイ…

弔いのうた

弔いのうた

この曲はAlfonsina y el marという曲で実在したアルゼンチン出身の詩人であるアルフォンシーナ・ストルニの自死を悼んで作られました。

以前ライブではうたなしの器楽曲としてベースとピアノで演奏しました。今回1コーラスだけ翻訳詩をつけたので、日本語でうたおうと思います。

悼むとは亡くなった人の死そのものを悲しむ、という意味。悲しいときに、きちんと悲しめるってほんとうに大切だ。そのための

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虎の群れ

虎の群れ

虎は繁殖期以外群れをなさない。
虎は勇敢さの象徴だ。

海の娘の名前はエスペランサ。

希望という名の幼い少女は難破船から救出された孤児であり、テレサという女性に引き取られ育った。

テレサは若くして結婚したが夫は逃げ、息子も生まれたものの不慮の事故で亡くしてしまう。その悲しみを、エスペランサを育てることで癒していった。

ところがエスペランサを迎えてから11年後、突然、彼女の夫が戻ってきた。

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謐けさに響くおと

謐けさに響くおと

音楽が鳴っているのに、謐けさのほうが却って聴こえてくるようなことがあります。

今思い出せるのは、むかし根津にあったNOMADというカフェで流れていたBGMです。

音量を幽けきほどに小さくしていて、それゆえに店内での会話も自然と慎む心持ちになりました。

そのカフェでは音楽とは裏腹に、コーヒーを淹れたり、食器を重ねたり、わたしたちの身の回りから生まれる、ふだん気にも留めない環境音なんかがとてもは

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道をより美しく

道をより美しく

愛を具体的に表現しているとき、
どんな心地がするのだろう?

生まれたての赤ちゃんの頬に
そっとやさしく触れる

恥じらいながら大好きなひとと
はじめて手をつなぐ

友達との再会がうれしくて
ハグをする

風邪をひいた家族の額に
手を当てる

食べるひとを思って
料理をつくる

ハートをひらいて
言葉を交わす

心地よい響きを
丁寧にうたう

美しいものを
分かち合う

愛はひとりでは決して生まれ

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[歌詞翻訳]Ámame como soy

ありのままのわたしを愛して
恐れずわたしを連れていって
愛を持ってわたしに触れてね
冷静さを失くしてしまいそう

思いやりをもってキスをして
やさしくわたしに接してみて
お願いどうかわたしを見てね
あなたの魂に届きたいのです

愛とはわたしがこれまで
知ることのなかった迷宮
あなたと一緒になってから
その神話を打ち破りたいの

すべての儀式を乗り越えて
あなたの手から抜け出たい
あなたを愛して

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[歌詞翻訳]Fantasma

そこにいると感じた距離を測った
できる限り何度でもそれを殺した
希み通り何度でもわたしは死んだ

わたしたちは何者でもなかった
空気の一部なだけ
あまくて冥いわたしの王子

彼の亡霊は繊細で
冷たく独り言を言う
完璧で複雑
透き通るような美しさ

わたしの中にいると感じた
10まで数え
そしてわたしは消えた

わたしたちは何者でもなかった
空気の一部なだけ
あまくて冥いわたしの王子

彼の亡霊は繊

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王子の亡霊

王子の亡霊

彼がいる。
そこにいる気配を感じる。

うっとりと巧みに
心地よくたぶらかす、

おぞましいほど愚かな
わたしの王子。

その声は冷たく
いつも傍で独り言を繰る。

「君は完璧で特別な存在だ。他のひとが嫉妬するくらいに。でも残念ながら君の持つ真の偉大さは、一流の者にしか分からないだろう。君のことを分かってあげられるのは僕だけだ」

この暗闇のなかに彼の気配を感じて距離を測る。彼はわたしに君臨してい

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アケミちゃんのこと

アケミちゃんのこと

アタシいじめられてんのよ、とアケミちゃんが笑う。

アンパンマンのようなまん丸い顔にびっくりするくらい
濃ゆいパープルのアイメイクと青みがかったピンクの口紅。
昼間に顔を合わせるのはチョット時間を間違えたかな、と
思わせるような気合いの入ったお化粧は、かなり時代も
間違えてるかも、しかしそれがなんとも彼女には自然と
馴染んでいて妙なのである。

この間友達の結婚式に出るという話をしたら、アタシが

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手紙と記憶

手紙と記憶

おぼえていないよおぼえていない

よみかえしても、よみがえらない

けれどもたしかにそのときはあった

手紙にはつづられていた

わすれないとおもっていたけど

水面

水面

波紋が広がっては
消え

広がっては消え

その繰り返しの中に
つながれている安堵

ちいさいけれどもそれはうねり
さざなみ

なにかを届ける

だれかにいつか

満ちる

満ちる

ほかにどう伝えたらいいか解らないんだ

つぼみが笑うみたいに

きみの頬に触れるよ
ふんわりと 溶けて

その日の夕焼けはあたたかく空を包んで
満ちる

きのう、知ったの。
ことばにできないきもちがあるんだね。
唄ってないと泣いちゃう
ような

どんな名前をつけようかしら、
呼んでくれる?
暗くなったら探しにきてね。
ラララハミングしながら

きみの頬に触れて溶けた
名前を呼んで

ゆうやけこやけ

未来

未来

ほらごらん、坊や

この雲を抜けたら
青い空がどこまでも広がっているんだ
七色の虹だって架かってるのさ

本当とうちゃん?

この雲を抜けた先に
何があるかなんて
どうして
未来のことが解るのだろうなあ

かあちゃんはねえ

たとえばこの雲の向こうに
烈しい雷雲がまたどこまでも広がっていて

おまえがそこへ飛び込んでいっても

いつかは美しい虹と出会えることを
識っているのよ

そうか、
じゃあぼ

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ふたり

草いきれがむっとする
息を吸い込んだ
笑いが止まらなくってさ
駆けていくよ
手をつなご
あなたの右手と
私の左手

海が好き?山が好き?
海は詩人で
山は哲学者だよ

さみしいときは海に行った
どうしてさみしかったか忘れちゃったけど
センチメンタルは嫌いだから黄昏れたりしなかったよ
大声で泣いたかもしれないな
夕日は美しかった

山には行きたくない
でも遠くからこうして眺めていたい
春のはじめのも

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ヴァケーション

その手を腰にまわすのはやめてと願うけれど
彼の欲望はこれぽっちも耳を貸そうとしていない。
おそらく、だ。
聴こえない声は聴こえるはずなのだ。
ただ手をつなぎたいと、言葉に出せばよかったのか。

息を吸い込む。
9月にあじさいが咲くなんて知らなかった。
信号機の三色が縦に並んでいる意匠も
はじめて見た。

どこに行ったってあじさいは梅雨になったら当たり前に
咲くんだろうという想定しかできない想像力の

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[歌詞翻訳]Mandolín

「Mandolin」は、ウルグアイのシンガーソングライター、「王子」の愛称で知られるグスタボ・ホセ・ペーニャ・カサノバの曲です。娘であるエリウが彼の死後、作品をアーカイブし世に送り出すことによって、広く世に知られるようになったようです。