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名作コラム

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古典を中心に名作、あるいは隠れた傑作を独自に分析&解説していったコラムになります。
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文学コラム・「幸福な王子」(ワイルド)と「小僧の神様」(志賀直哉)の差

文学コラム・「幸福な王子」(ワイルド)と「小僧の神様」(志賀直哉)の差

 こんばんは拓也です!(・ω・)ノシ
 今回は小説でも、似たテーマでも書き手によって大きな差が生まれる、というものを紹介したいと思います。タイトルにも有る様に「幸福な王子」と「小僧の神様」ですね。
 このケースは「十五少年漂流記」と「蠅の王」なども良い典型例ではあるのですが、テーマが明確な前者2作品を例にしたいと思います~

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 「幸福な王子」は現在青空文庫などでも読めるワイルド作の寓話

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名作コラム・牧野信一「西瓜喰う人」 ~自己は他者、他者は自己~

名作コラム・牧野信一「西瓜喰う人」 ~自己は他者、他者は自己~

 久々の名作コラムは、これまた久々の日本の作品から。坂口安吾を見出した事でも知られる、知る人ぞ知る大幻想作家・牧野信一作品を取り上げたいと思います(・ω・)ノシ
 その中でも「西瓜喰う人」「吊籠と月光」の2作品から劇的に幻想作品に重点を置いて創作していきますが、今回は前者の「西瓜喰う人」を紹介していきますね。

 物語の内容は、語り手の”余(B)”と、ぐうたら作家の”滝”の田舎暮らしで、余が滝の筆

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名作コラム・ドノソ「夜のみだらな鳥」 ~究極の書、出口も解答も存在しない迷路~

名作コラム・ドノソ「夜のみだらな鳥」 ~究極の書、出口も解答も存在しない迷路~

 平成最後の4月26日深夜に、ラテンアメリカ文学翻訳、イスパニア研究で知られる鼓直先生の訃報が飛び込んできました。東北震災の最中、停電が長く続く間に鼓訳のボルヘスを読みふけっていた私にはとても残念な知らせとなりました。
 今回は昨年復刊され、ラテンアメリカ文学の金字塔にして世界的な奇書、そして鼓直先生訳の大作、アルゼンチン作家のホセ・ドノソ「夜のみだらな鳥」を紹介したいと思います。

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名作コラム・コルタサル「正午の島」 ~アウルクリーク橋のその先へ~

名作コラム・コルタサル「正午の島」 ~アウルクリーク橋のその先へ~

 さて、今回の名作コラムは古典から現代文学へと系譜が受け継がれ、そして進化していった技法に関して、20世紀の幻想文学の最高峰に位置するアルゼンチンのフリオ・コルタサルの短篇「正午の島」を取り上げてお話ししたいと思います。
 ……が、実はこの物語の系譜はその100年前、19世紀のアメリカの作家アンブローズ・ビアス作の短篇「アウルクリーク橋の出来事」から解説する必要があります。

あらすじはwikiか

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名作コラム・コンラッド「闇の奥」 ~現代に登場した新たな神話~

名作コラム・コンラッド「闇の奥」 ~現代に登場した新たな神話~

 古今東西、物語の形式や手法というものはメソポタミアやエジプト、そしてギリシア神話から旧約聖書の時代に様々な作品が確立され、後世の物語はその組み合わせとアレンジ、あるいはバロック形式だと言われています。かのシェイクスピアに関しても「ロミオとジュリエット」「タイタス・アンドロニカス」と言った物語の筋をギリシアのオウィディウス「変身物語」から取り、先輩のトマス・キッドやクリストファー・マーロウ風に味付

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名作コラム・特別編 フランツ・カフカ10選・・・・「変身」は入らないよ!ヾ(`Д´)ノシ

名作コラム・特別編 フランツ・カフカ10選・・・・「変身」は入らないよ!ヾ(`Д´)ノシ

 今回の名作コラムはカフカについて。以前も触れましたが好き嫌いの大きい部類に入る作家さんですが、「著名&本屋に置いてあるのが『変身』『審判』『城』」「不条理で暗いイメージ」が付きすぎて、間違いではないにせよカフカ作品の多様性と幅が狭まってしまいます。
 そこで、個人選ではありますがカフカの味わいが良くわかる、掌篇から中長篇までの10作品を紹介したいと思います!
 掌篇などは中身を解説するとそのまま

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名作コラム・ボルヘス「ばら色の街角の男」「刀の形」 ~語り手が嘘を付くその理由~

名作コラム・ボルヘス「ばら色の街角の男」「刀の形」 ~語り手が嘘を付くその理由~

 さて今回の名作コラムは私の愛読書であるボルヘス作品を取り上げようと思います!(=゚ω゚)ノ
 ボルヘス作品に一度でも触れた経験のある方はご存知かと思いますが、その無数の短篇、詩篇、エッセイの中で古今東西の様々な手法や技巧を使用していて、”ボルヘスの特徴はこう!”という事が出来ず、ひとつの作品についてそれぞれ数篇のコラムが書けるほどの密度を持ちます。
 と、言う事なので今回は「ばら色の街角の男」(

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名作コラム・シュルツ『書物』『天才的な時代』 ~幻視作家の視た並行世界~

名作コラム・シュルツ『書物』『天才的な時代』 ~幻視作家の視た並行世界~

 今回は20世紀前半のポーランドのユダヤ人作家であり画家、ブルーノ・シュルツの作品集『砂時計サナトリウム』の開幕を飾る二篇、
<書物>
<天才的な時代>
に関する解説おば。彼は生涯で2つの作品集
『肉佳色の店』(15篇)
『砂時計サナトリウム』(13篇)
と、4つの短篇
<秋>、<夢の共和国>、<彗星>、<祖国>
の文学作品しか残しておらず、今は平凡社ライブラリーに全て収録されてますね。
http

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名作コラム・ウェルズ「盲人国」 ~盲人の国では隻眼でも王様、なのか?~

名作コラム・ウェルズ「盲人国」 ~盲人の国では隻眼でも王様、なのか?~

 今回の名作コラムはH.G.ウェルズ作品から、『透明人間』でも『タイムマシン』でも『宇宙戦争』でも『モロー博士の島』でもなく、中期の傑作短篇『盲人国』を取り上げようと思います。
 以前取り上げたコリン・ウィルソン『アウトサイダー』の第一章のタイトルにも取り上げられた作品であり、1905年頃に発表された作品です。私の持つ底本は岩波版『タイムマシン・他短篇』に収められているものです。

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名作コラム番外・D.W.グリフィス『イントレランス』 ロベルト・ヴィーネ『カリガリ博士』

名作コラム番外・D.W.グリフィス『イントレランス』 ロベルト・ヴィーネ『カリガリ博士』

 さて、ここの所、時間が空きますと私は結構な割合で
D.W.グリフィス『イントレランス』(1916年・米)
ロベルト・ヴィーネ『カリガリ博士』(1920年・独)
の2作品をyoutubeで眺めています(・ω・)ノシ
 どちらも100年ほど前のモノクロ無声映画ですね。
 何故かと言いますと、以前述べたアウトサイダー文学にも通じるのですが、1922年にジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』、 T.S.エリ

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名作コラム・芥川竜之介「偸盗」 ~平安期の愛憎劇、深淵の風景~

名作コラム・芥川竜之介「偸盗」 ~平安期の愛憎劇、深淵の風景~

 今回は私が芥川作品の中で繰り返し読む「藪の中」と「偸盗」の2作品の内で、いわゆる王朝物「偸盗」(青空文庫)に関して書いてみたいと思います。

 この作品は、私が芥川作品に魅力を然程感じてなかった時分、「これだけは面白いなー」と思った作品で、尚且つその後になって「芥川本人が生前に最も忌み嫌った作品で、何度も手直ししようとしたが結局適う事が無かった」と聞き、さらに興味を持った作品です。

 では

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名作コラム•特別編 フルヴァージョンで読んで欲しい名作古典13作

名作コラム•特別編 フルヴァージョンで読んで欲しい名作古典13作

まだ連載数回ですが特別企画お送りします(・ω・)ノシ
取り上げた近現代の大作を読んで思うのがやはり古典の大切さ( ゚д゚)ウム
実はプロット、テーマ、形式、技法いずれも古典の時点で完成されて、
現代小説はそのマイナーチェンジ+組み合わせ+著者の個性という
基本的なパターンのものが多いからです。

だもんで、古典を読もう!・・・しかし何を読めばいいかわからない
そして、可能な限り読み易く上

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名作コラム・エリオット「荒地」 ~コラージュの迷宮、文学の共鳴とリフレイン、20世紀モダニズム~

名作コラム・エリオット「荒地」 ~コラージュの迷宮、文学の共鳴とリフレイン、20世紀モダニズム~

 さて、メメント・モリ短篇集を始めたついでに、その基底となる作品、T.S.エリオットの詩「荒地」を取り上げたいと思います!
(通し訳+作者原注
(訳+解説+原文
 作者のT.S.エリオットは私の好きな作家ボルヘスが作中でも言及した人物であり、更に中学時代から聴いてるJoy divisionというバンドのヴォーカル、故イアン・カーティスが影響を受けたと言う作家でありまして、最近では某アニメのシビュ

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名作コラム・谷崎潤一郎「小さな王国」 ~異彩を放つ谷崎版「ユートピア」~

名作コラム・谷崎潤一郎「小さな王国」 ~異彩を放つ谷崎版「ユートピア」~

 さて今回紹介するのは、耽美的な作風でも知られる谷崎潤一郎作品の中でも特に異彩を放つ「小さな王国」です。
 まだ青空文庫に収録されておらずネットでは読めませんが、中公文庫の「潤一郎ラビリンス・少年の王国」に収録されているようです。

 まず簡単なあらすじを説明しますと、
【漢学者の息子に生まれ、小学校教諭となった主人公・貝島昌吉は東京から離れ地方のM市の小学校に赴任します。
 学業優秀やガ

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