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不肖「信頼出来ない語り手」明智紫苑のおバカ書評! ついでにボヤキ! 読む読まないはあなた次第です。 当シリーズは、書評だけでなく、音楽や映画・演劇・舞台芸術などについての感想も載…
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#ウマ娘

我が悪夢の女王たち ―中村うさぎ『狂人失格』―

我が悪夢の女王たち ―中村うさぎ『狂人失格』―

 私にとって一番の「悪夢の女王」は多分、私自身なのだろう。

 私は競走馬擬人化作品群『ウマ娘』にハマったのをきっかけにして、競馬に興味を持つようになった。その『ウマ娘』以前の「下地」として、80年代後半(代表者、オグリキャップ)から90年代前半(代表者、ナリタブライアン)までの第二次競馬ブーム並びに旧コーエー出版部の雑誌『光栄ゲームパラダイス』に掲載されていた『ウイニングポスト』シリーズの記事が

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金色の暴君舞姫宮本すばる ―曽田正人『昴』『MOON』―

金色の暴君舞姫宮本すばる ―曽田正人『昴』『MOON』―

【Sylvie Guillem's final performance "Bolero”】

《馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば人あやむるこころ(塚本邦雄/『感幻樂』)》

 私はメインブログなどで何度となく『ウマ娘』版オルフェーヴルの人物像に対する不満をぶちまけているが、そんな私にとって史実のオルフェーヴルのイメージにより近いと思える一人の女性キャラクターがいる。曽田正人氏のバレエ漫画『

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「金色の暴君」橘カラ ―山崎紗也夏『サイレーン』―

「金色の暴君」橘カラ ―山崎紗也夏『サイレーン』―

 私はメインブログで何度となく『ウマ娘』版オルフェーヴルの人物像の設定を批判しているが、それはあくまでも、史実のオルフェーヴルのイメージとかけ離れた人物像だからである。インターネット上でのオルフェーヴルについての様々な記事を読んでいる限りでは、実馬の方のオルフェーヴルは「項羽の皮を被った韓信」という印象である。しかし、ウマ娘オルフェーヴルの人物像には、現時点では項羽的な要素しかない。
 むしろ、曽

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「俺たち」のパラダイス ―監督:五社英雄『肉体の門』(1988年)―

「俺たち」のパラダイス ―監督:五社英雄『肉体の門』(1988年)―

 私はこれから、女性が多数派・マジョリティーの世界観の長編小説を書く予定である。そのための資料として、色々な本を読んで参考資料にするのだが、映画も色々と観る必要がある。なぜなら、私がこれから書く予定の小説にはある程度のアクションシーンを描写する必要があるからであり、そのための参考資料として映画を観る必要があるのだ。
 女性がマジョリティーの世界観の作品として、メディアミックス作品『ウマ娘』シリーズ

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黄金の悪魔と人間たち ―馳星周『黄金旅程』―

黄金の悪魔と人間たち ―馳星周『黄金旅程』―

 馳星周氏といえば、昔はいわゆる「ノワール小説」を書いていた。確か昔、某雑誌でオウム真理教事件を題材にした小説の連載があったのだけど、当時は題材にふさわしくインド的な題名がついていた。しかし、後になぜか『煉獄の使徒』などというキリスト教的な印象の題名で単行本化(文庫化)されていた。その『煉獄の使徒』を改めて読もうかどうか、私は迷う。
 馳氏は2020年に発表した『少年と犬』で直木賞を受賞したが、こ

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将軍という名の「名牝」たち ―よしながふみ『大奥』―

将軍という名の「名牝」たち ―よしながふみ『大奥』―

 私は人気ゲームアプリ『ウマ娘』にハマったのをきっかけにして、競馬に興味を抱く様になった。それ以前は、90年代に当時の旧コーエーの出版部が発行していた読者投稿雑誌『光栄ゲームパラダイス』で競馬ゲーム『ウイニングポスト』のコーナーが連載されていたのを通じて、当時の有名競走馬たちの名前をいくつか知った。90年代の私にとっては、名馬といえばビワハヤヒデとナリタブライアンの兄弟だった。
 競馬とはいわゆる

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