吉田昂平

よろしくお願いします。 https://twitter.com/myoshio_bbym

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マガジン

  • 『骨ん中の繭』

    このフィクションが、どうか、どこかの現実で出現しますように。  令和6年5月12日 吉田昂平。

  • エンターザボイド2nd EP「ブラ紐ならお任せください」

    この歌詞は架空のロックバンド、エンターザボイド、2枚目のEP盤の歌詞カードです。どうか悪しからず。

  • 4thアルバム『NOWHERE BOOK』

    架空のロックバンド『エンターザボイド』の4枚目のアルバムの歌詞カードです。悪しからず。

  • KHAOS ALBUM(多重人格者失格の男がつくった一枚)

    この歌詞は、エンターザボイドという架空のロックバンドの、3rdアルバムの歌詞カードです。どうか、悪しからず。

  • エンターザボイド1st EP「強運」

    この歌詞は、エンターザボイドという架空のロックバンドの、1stEP.の歌詞カードです。どうか、悪しからず。

最近の記事

2024年 夏

 2024年 夏 「好きにへいわボケぇ! さあ! 始まりました『好きにへいわボケ!』早速ゲストを呼んでみましょう!」 「速い速い速いって。ちょ待てって。え、オープニングトーク無いん?」 「無い。ゲストの」 「ちょ待てって!」 「うっさいなあ」 「つーかこの番組のスタッフおかしいやろ。初回は大体ゲスト無しなんよ。第3回くらいまでふたりでやって、そののちゲスト回やから。聞いたことないから初手ゲスト回」 「この番組超高予算番組やから」 「どこがや。こんな超弱小番組に予算注ぐかあ」

    • 33.『荻美咲』

       この世界は素晴らしくて文句のつけようが無い。だけど、文句をつけろと言われたらこの世界はあまりにも糞すぎる。みんながやってるのはこんなのばかり。  この町がすべてじゃない。学校がすべてじゃない。僕の居場所はここじゃない。だから悲しくないし寂しくない。抜け出せばすべて終わること。 「美咲、やってくれ」  火をつける。ページが青白く光る。鼻にツンとくる。失敗したポップコーンの匂いに似てる。パチパチ燃える。鎮まることなく燃え上がり続ける。 「急ぎましょう。そろそろ終わる頃っす」  

      • 32.『花火大会当日 谷田遥香②』

         –––ごめん! ごめんね! ごめんなさい!  声が聞こえる。  顔が、とても綺麗。 「大丈夫なの谷田ちゃん!?」 「夢を、みた」 「夢?」  志乃ちゃんの涙がわたしの頬に落ちると少しだけ暖かかった。 「うん、たくさん、夢。昔の夢」 「さっきはごめんね」 「あのね志乃ちゃん。わたしわかった。わたしのじゃない」 「そんなのどうだっていいからお水飲んで」  ペットボトルを受け取る。  今日は星が綺麗だ。 「あまりにも心が空っぽ過ぎて、胸いっぱいに志乃ちゃんを詰め込んだ。あれはわた

        • 31.『谷田遥香の記憶2』

           みんなの歌を聞いている。ラッキー・ラビット達は歌に合わせ踊っている。ヴィッキー。ヘンドリックス。ハリー・ザ・キッド。アントントン。バロン。グッドナイト。みんな大好き。みんなわたしの友達。わたしは今日もひとりぼっち。母も父もできたばかりのモールでショッピングを楽しんでる。 「ねえねえ、ひとり?」  合唱の中一際目立つ明るい声のその女の子は、友達をつれてジュースを飲んでいる。わたしは恥ずかしくて俯いた。 「あたしたちの親もお買い物してるんだよ」  わたしの靴は汚れている。明るい

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        • 『骨ん中の繭』
          34本
        • エンターザボイド2nd EP「ブラ紐ならお任せください」
          0本
        • 4thアルバム『NOWHERE BOOK』
          0本
        • KHAOS ALBUM(多重人格者失格の男がつくった一枚)
          0本
        • エンターザボイド1st EP「強運」
          5本
        • エンターザボイド 2ndアルバム『悪人めらめ』
          0本

        記事

          30.『谷田遥香の記憶』

           どうして別の部屋にいるのだろう。あのちょっとした隙間から目だけを覗かせてこちらの様子をじっと窺っている。  こちらに対して、怯えているようにも見えるし戦おうとしているようにも見える。みんなが怖いのだろうか。自分を守ろうと必死なのか、何を考えているか、あの子は男の子なのか女の子なのか、明るい子でもなさそうだし極端に明るい子でもなさそう。かといって暗い子でもなさそうだし極端に暗い子でもなさそう。 「遥香、隠れてないでおいで」  遥香という子は声に反応して襖を完全に閉めきった。

          30.『谷田遥香の記憶』

          29.『花火大会当日 北沢慧②』

           同日 北沢慧  火が燈る煙草が落ちてきて横髪をかすめた。  誰かいる。あいつがいる。兄貴が上にいる。後ろを振り返る。誰もいない。大丈夫、奴らはまだ来ていない。  兄貴が飛び降りた場所。すべてが狂ってしまったはじまりの場所。暗闇に、電灯がポツンポツンと光を刻む。ここは昔っから人気がなくて不気味だ。ヤンキーが溜まって煙草を吸ったり、淫猥行為をし合う場所として地元じゃ有名だからもう誰も寄り付かない。  飛び降り事件があってからは幽霊が出るという噂も一時期流行った。できれば行きな

          29.『花火大会当日 北沢慧②』

          28.『花火大会当日 大原志乃②』

           同日 大原志乃  後ろで少し音がした。振り返ると、そこには駐車場の明かりを吸収してピカピカ光る両翼を広げた天使がいた。撮影がはじまっているのだろうか。  一旦その場から動かないでいると正体が谷田ちゃんだということがあらわになった。両翼を背負った谷田ちゃんの歩みには迷いが無く、まるで本物の女優のように思えた。 「もしかして背負ってきたの?」 「うん。あとこれも」  谷田ちゃんの右手の人さし指には髑髏の指輪があり、首にはジャラジャラのネックレス、服は黄色のシャツと紫のパンツ。

          28.『花火大会当日 大原志乃②』

          27.『花火大会当日 安部優』

           同日 安部優  児童館で唯と愛ちゃんの漫才を見たとき、唯のことが好きになっていた。  漫才あとの演目の、合唱部の歌声の中、近くの駄菓子屋に唯を誘った。唯はすでに知り合いみたいな顔で「瀬下もいい? あとなんか奢って」と悪びれなく言うから三人でお菓子を食べた。瓶のコーラもふたりに奢った。  やっとこさ告白しようとしたら「両替してきて」と、唯はゲーム台の椅子に座ってメタルスラッグ3をプレイしはじめた。  漫才中もそうだった。こんな感じだった。こんな感じでただあまりにも漫才中とオ

          27.『花火大会当日 安部優』

          26.『花火大会当日 谷田遥香』

           同日 谷田遥香  口の中は甘い。頭の中は台詞が犇きぐるぐるうるさい。シーンはこの町で起こった本当の出来事の断片のよう。  本当の出来事に台本の出来事が絡まって、自分と瓜二つの虚像が事実の近くで暴れ、ほつれていく。  シナリオや場面が視界や思考を歪ませる。歩くと少しは楽になるけど家に帰ると蘇り、ご飯を食べるとき、寝るとき、湯船に浸かってるとき、話しかけてくるように側にいる。おかげでここ数週間は毎日撮影のことを考えていられたけどそろそろしんどい。はやくこの歪みを吐き出さなけれ

          26.『花火大会当日 谷田遥香』

          25.『花火大会当日 大原志乃』

           同日 大原志乃  慧くんはこの浴衣の色のことなんて言ってくれるだろう。褒めてくれるだろうか。可愛いねとか、オシャレだねとか、そういう一言を言ってくれるだろうか。  一言は一言でも特別な一言がいいなあ。あたしにしか言ってくれないあたしだけの褒め言葉。  大原のその浴衣、俺は好きだなあ。  やっぱり大原はなんでも着こなすんだな、すごいね大原は。  俺そういう女の子結構好きだぜ。知らなかったろ?  そういやあんまり喋ったことなかったな。これからどう? 歩きながらでも話さ

          25.『花火大会当日 大原志乃』

          24.『花火大会当日 北沢慧』

           チャイムの音がした。背中にびっしょり汗をかいていたから階段を降りて、着替え、玄関に向かう。  ドアスコープの奥に二人いる。一人はスコープ越しでもわかる大きな体の男。モヒカン頭で首もとにはなにかのタトゥーが入っている。  もう一人はモヒカンより背の低い、髪がモジャモジャうねってる男。どちらも警察ではなさそうだ。 「どちら様ですか?」 「真鍋と言います。靖人くんに用があって来ました」 「兄貴なら出かけてますよ」 「その声、もしかして慧くん?」 「はい、そうですが」 「久しぶりだ

          24.『花火大会当日 北沢慧』

          23.『北沢靖人の日記』

           同日 北沢慧  ボールは後ろへ転がっていく。勢い余って尻もちをついた。地面はかたく、痛みは体の奥まで貫通してきた。  みんなは俺を笑うけど、兄貴だけは俺のもとにかけてきて、心配そうな声でお尻の土をはらってくれた。  兄貴が両腕を伸ばす。その腕に甘えておんぶなんかされてる。「お前は俺が守っちゃる」それが兄貴の口ぐせだった。  煙草臭い。壁もカーテンも日記のページも変色している。でもソファーだけはあの頃のままの匂いで止まっている。  古い写真がはさかっていた。写真にうつ

          23.『北沢靖人の日記』

          22.『花火大会当日 両野彩花』

           同日 両野彩花  –––こぽんこぽん、あわの音。こぽんこぽん、あわの音。  もう苦しくもなんともない。足掻く力もない。体は底に沈んでくだけ。  キラキラした透明と空の青。なんか、水中ってより、飛んでるみたい。 「アンタ、名前は?」 「悠馬」  うわ悠馬じゃん。なにこれ懐かしい。 「ここらへんじゃ見らん顔やね」 「引越してきたんだ」  悠馬は私のアパートを指してる。 「何号室?」 「303」 「マジ? 隣じゃん」 「そうなんだね」  これは私と悠馬が出会った最初の

          22.『花火大会当日 両野彩花』

          21.『花火大会当日 山本健介』

           花火大会当日 山本健介  いってえ。蹴られたとこがいてえ。でもなんか、生きてるって感じがする。  うるせえなあ。そんなに騒ぐことじゃねえだろうが。たかが学生同士の喧嘩、人を殺しちまったわけじゃねえのによ。大袈裟すぎんだよ。  母ちゃんもあんときゃ大袈裟だったんだよ。勝ちは勝ち負けは負けだろうが。そんな喚くもんじゃねんだよ。コートに立ったこともねえのにいっちょ前しゃしゃり出やがって。あんたがあんときあんなことするから俺も康介も引けなくなっちまった。母ちゃんがあんとき車ん中で

          21.『花火大会当日 山本健介』

          20.『花火大会前日 谷田遥香③』

          「で、まだ言いたいことある? 無いなら帰れば?」 「言われなくったって帰るっちゃ!」  席から離れようとした志乃ちゃんを無視して瀬下は動かない。志乃ちゃんが「どいて!」と叫ぼうが瀬下はその場から動かない。 「なあ荻、お前正気か?」 「あなただあれ?」 「とぼけんな」 「ああ瀬下さんまだいたんだ」 「大原の肩もつわけじゃないけど受からせといてそりゃないだろ」 「監督は僕だから仕方ないよね」 「仕方ない? 調子乗んなタコ。世にも出てないのに監督きどりか? おめでたい頭してんなお前

          20.『花火大会前日 谷田遥香③』

          19.『花火大会前日 谷田遥香②』

           –––じゃあちょっとだけ質問。リラックスして答えてね 「はい」  瀬下には申し訳なかったがなんとかいてくれてはいる。  荻さんとモヒカンにわたしは挟まれて、向いには志乃ちゃんとモジャモジャ、瀬下が真ん中で挟まれてる。なんか緊張する。  –––まず、名前と、年齢。趣味とか、あと特技とかあったら  テーブルに手持ち用カメラ。やっぱり、すっごく緊張する。 「谷田遥香15歳。趣味は散歩と、あと映画鑑賞とか音楽鑑賞とか、です」  –––特技は? 「特技は、えっと」  –––難しく考え

          19.『花火大会前日 谷田遥香②』