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シン・短歌レッスン

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#読書感想文

美意識=死生観なのか?

美意識=死生観なのか?

『短歌と日本人〈2〉日本的感性と短歌』佐佐木幸綱(編)

座談会「日本人・こころ・恋歌」…阿久悠・夏石番矢・俵万智・佐佐木幸綱

歌人二人に俳人と作詞家の対談。阿久悠が入っているから面白い。ただ最近の若い奴らはという話になりがちだった。

阿久悠が言うには最近の歌にはロックのようなフォルテでがなり立てる歌が多く、ピアニシモの歌がないという。なるほどそれは言えているかも。ピアニシモで歌う歌手って誰か

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俵万智一強の時代

俵万智一強の時代

『短歌研究2024年4月号』

特集俵万智は俵万智が今ブームだというジャーナリズムの視線だろうか?そういう波に乗っていくのが上手い歌人だとは思う。それも才能か?俵万智は口語短歌を流行らせながらきちんと伝統短歌を踏まえた人だとわかる特集だった(特にリズムについては勉強になる)。女子大生歌人も先生で母親だった。その安心感が受けるのかもしれない。オヤジ受けがいいのも一つの才能だった。

俵万智

『短歌

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外部からの批評に短歌はどう答えたか?

外部からの批評に短歌はどう答えたか?

『現代短歌史〈2〉―前衛短歌の時代』篠弘

戦後短歌は外部からの批評に晒され、戦後世代が育っていく。とくに若い世代が学生短歌として活躍してくるのだが、その中に岡井隆や塚本邦雄が登場してくる。さらにいままでの結社ではなく、ジャーナリズムから『短歌研究』の編集者中井英夫が中条ふみ子や寺山修司を発掘する。

「乳房喪失」は短歌研究新人賞の第一回受賞で中条ふみ子の登場でそれまでの女流歌人とは違った女性歌人

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芸人短歌より短歌批評が面白い

芸人短歌より短歌批評が面白い

『短歌研究 2024年2月号』

今年から短歌雑誌を読んでいるのだが『短歌研究』がいいところは「作品季評」があるところか。文芸誌には『群像』に月間合同批評があったのだが、最近読んだら無くなっていた。合同批評はそれぞれの歌論があるのでそれを突き合わせていく面白さ。例えば、今月号だったら佐佐木幸綱という重鎮と大辻隆弘と今野寿美という中堅では短歌観が違う。そういうところで現代短歌の新作を読んでいく。勉強

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自歌合(じかあわせ)を勉強する。

自歌合(じかあわせ)を勉強する。

『短歌研究2024.1月号』

第1部 特別対談「『歌論』の真髄

『短歌研究 2024年1月号』から「第1部 特別対談「『歌論』の真髄。よい歌とはなにか」馬場あき子×吉川宏志では、西行の『御裳濯河歌合』と『宮川歌合』という自歌合(じかあわせ)を知った時は、よく判らなかったのは、普通歌合というと右左二手に分かれて、テーマにそって歌人たちが詠み合うのだが、西行の自歌合というのは、西行の歌を右左に分け

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「ストレンジャー(よそ者)」は憩いの場所を求める

「ストレンジャー(よそ者)」は憩いの場所を求める

『起きられない朝のための短歌入門』我妻 俊樹/平岡 直子【著】

初心者は入門書の型に囚われてしまうので、少しでもそういうものを解きほぐしたいという感じだろうか。

まず現代短歌の影響を与えた穂村弘の『短歌という爆弾』から「砂時計のくびれ理論」(そこは全然引っ掛からなかった )。短歌にはキーポイントなるコトバ一つを砂時計のくびれにして、時間の流れとして上句と下句によって共感するコトバにしていく。そ

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和歌を発展させたスターとアイドル

和歌を発展させたスターとアイドル

『在原業平・小野小町』 目崎徳衛(1970年) (日本詩人選〈6〉)

この本は「在原業平」についても「小野小町」についても名著として捉えられていると思うのは(コレクション日本歌人選)の「在原業平」でも「小野小町」でも目崎徳衛のこの本の言葉が引用されていることからもわかる。ただ幾分古い本なので読みにくさはあるし、図書館でないと読むことも出来ないだろうとは思う。

在原業平

『伊勢物語』は在原業平

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『源氏物語』は和歌の教科書

『源氏物語』は和歌の教科書

『源氏物語と和歌を学ぶ人のために』(編集)加藤 睦, 小嶋 菜温子

感想

『源氏物語』はそれ以前の勅撰和歌集(三大集『古今集』『後撰集』『拾遺集』)から影響を受けて、それらを引歌(引用)しながら物語を膨らませていく。『古今集』の引歌は210首、『後撰集』からは67首、「拾遺集』からは70首。

それは『源氏物語』以前の『竹取物語』や『伊勢物語』の影響をうけているのだが和歌がもともと記紀歌謡だっ

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換骨奪胎の塚本邦雄の葛原短歌の世界

換骨奪胎の塚本邦雄の葛原短歌の世界

『百珠百華―葛原妙子の宇宙』塚本邦雄

塚本邦雄は葛原妙子を「幻視の女王」と名付けたが、それは塚本の前衛短歌に引き付けた読みであって、葛原妙子の幻想短歌はけっして理念的なところから出発したのではないのは、川野里子『新装版 幻想の重量──葛原妙子の戦後短歌』を読めば理解できると思う。葛原妙子の幻想性は戦争体験という女性の身体性を通して、西欧と日本という精神の中で分裂せざる得ない歌であった。

塚原邦

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短歌界には金井美恵子はいないのか?

短歌界には金井美恵子はいないのか?

『短歌・俳句の社会学』大野道夫

「社会学」がイデオロギーなので、短歌のような文化の領域とは相反するという保守的な指摘もあろうが、この本ではその歩み寄りを目指している。それは、イデオロギーは「人間・社会・自然についての一貫性と論理性を持った表象と主張の体系」を言うことは、短歌の文化と相反することでもない。ただそこに個人的な趣味(好き嫌いの感情)があり、例えば河野裕子がフェミニズムからなされる批評に

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