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「あの時ああしていれば、」

引っ越しからもうすぐ1ヶ月が経ち、慌ただしかった生活も落ち着いてきた。前よりもずいぶんと広い今の部屋はとても居心地が良くて毎日を快適に過ごしている。

少しだけ人間らしくなった私は、数年ぶりにこの地に立って息を吐く。一人で考え事をする時間も増えたが、忙しい時間も増えた。

色々な人生の分岐を思い起こすことも増えた。

あの時ああしていればこうならなかったのか、とか
あの時同じ選択をしてもいきつく先は同じだっただろう、とか

「後悔」もたびたびする。もう少し我慢できていればまだ私は家族と暮らせたのかもしれない。でも心と体の痛みを我慢してまで、そこに存在する意味はなんだろう。あるのかな。ないんじゃないだろうか。

幸せなんて見えず、自分の存在を否定され続け、誰も助けてくれる人はいなかった。でも、もう少し踏ん張って守ったら守れたかもしれなかったいろいろが私の脳裏にこびりついて離れない。

今の関係性は悪くはない。前よりも連絡を取るようになった。それでも現実は変わらなくて、それが少しつらい。

戻りたいのはその男のもとではなくて、家族の生活だ。正解はなんだったんだろう、ぐるぐると考えても答えは見つからないし何も変わらないし。

書きながら考えてみたけどやはり答えには辿り着かなかった。この延々と続く後悔の念はいつまで続くのか。


山口葵

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山口葵|共感覚を言葉と絵で伝えるアーティスト 表現者
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