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「呪術廻戦」で学ぶ、マーティング理論

✔「鬼滅の刃」以上のスピードでコミックが爆売れする「呪術廻戦」

 本日、「鬼滅の刃 公式ファンブック」が発売されたので、いそいそとOPENと同時に書店に入店した、みみのすけでございます。その際、ダメ元で書棚を見に行くと…歯抜けではありましたが、呪術廻戦のコミックがありました!ここはもう、揃ってないとか言ってる場合ではありません。呪術廻戦の単行本は、ある時に買わねば後悔することを学んでいますので、躊躇なく、1、3、5、6、11、12巻を手に取り、鬼滅の刃公式ファンブックと共にレジに持っていきました。

 とはいえ、ない巻があると気になって仕方なくなるのが人間…結局この後3件の書店を巡り、どうにか7巻だけ、こんな時でないと絶対行くことはなかった(というか存在すら知らなかった)街外れの小さな書店で見つけましたが、ここで打ち止め…。改めて人気の高さを実感する日となりました。

 鬼滅の刃にハマった時は、たしか単行本18巻くらいの時で、この時はタイミングよく一気に全巻購入できたのですが、呪術廻戦はさらに少ない14巻までしか出ていないため、さらに、まとめて購入しやすいのもあるのだろうと思います。

 ですが、それだけでなはない、呪術廻戦のコミック爆売れの理由をもう少し理論的に考えてみましょう。時折「ゴリ押し」という言葉を目にしますが、いくら集英社が必死にゴリ押ししたところで、それだけで売れるほどマーケットは甘くありません。必ず他の理由があります。

✔マーケティングで「呪術廻戦」と「鬼滅の刃」を比較

 下の図を見ると分かるように、爆発的ヒット、ブームとなるには「キャズム」を超え→アーリーマジョリティに浸透し、レイトマジョリティに到達する必要があります。

 鬼滅の刃の劇場版の大ヒットを考えると分かりやすいと思います。初動3日で映画館に足を運んだ人たちは、アーリーマジョリティです。煉獄さんが「300億の漢」(あえてコッチの字にした)になったということは、この図の山の頂点に到達したということですね。

 さて呪術廻戦はどのあたりかと言うと、アーリーマジョリティの初期の方だと考えます。「キャズム」と呼ばれる深い溝を乗り越えて勢いを増している所ですね。ヒット作品を生むためには、このキャズムを超える必要性がありますが、多くの作品(アニメに限らず)はここを超えられずに終わって行きます…。

 ちなみに、一般的に「アニヲタ」は「アーリーアダプター」かな?と考えます。「人気作品」と言っても「キャズム」を超えて、一般人に広く浸透する作品はそう多くないことから、そのように考えています。

✔五条悟で「キャズム」を超え、市場を「領域展開」した呪術廻戦

 今の人気は、アニメ7話で、女性人気が否が応でも高まったことは、間違いなく一つの要因でしょう。あのタイミングでの五条悟のご尊顔解禁は、アニメ呪術廻戦にとってのティッピングポイントだと考えています。

 そしてこのティッピングポイントによって、アニメ呪術廻戦は、キャズム(深い溝)を超えることに成功して、今、アーリーマジョリティの領域に入ったと考えます。マジョリティーに受け入れられたため、コミックが高速で売れ出し、書店から消えてしまったということですね。

 五条悟(CV:中村悠一)に落ちた女性ファンを「五条の女」と言いますが、五条の女だけでなく、狗巻棘(CV:内山昂輝)、真人(島崎信長)、夏油(CV:櫻井孝宏)、七海(CV:津田健次郎)と、魅力的な男性キャラ+人気声優という最強の布陣の前に、呪術廻戦の沼に沈んでいった女性が増加したことは間違いありません。

 この「五条悟の領域展開」で迎えたティッピングポイントによって、呪術廻戦は「キャズム」を見事に超えました。これによって、呪術廻戦は現実世界でも領域展開していったわけです。

✔キャズム超えに不可欠な女性ファン

 「イノベーター」の多くは男性が一般的に多いと思いますが、特に、鬼滅の刃や呪術廻戦は、少年ジャンプ連載なので、この本誌を読んでいるガチ層が、イノベーターだと考えられます。ですが、その後に勢いをつけ、キャズムを超えるには、絶対的に女性ファンを増やす必要があります。

 女性は、のめりこんだ対象への、お金と時間のかけ方がすさまじいです。男性もそういう人はいますが、そうする人の割合が圧倒的に多いと考えます。このパワーが、マーケットを拡大させる要因となるのです。

 さらに、呪術廻戦と鬼滅の刃の共通点として、女性の人気が高いことは疑いないのですが、これは、男性キャラ以上に重要な要素として、女性が嫌う女性キャラクターがいない事があげられます。女性が嫌悪感を抱くような同性キャラがいると、ここまでの人気を博すのは難しいと考えます。なぜなら、女性は同性に容赦がないからです。

 2次元の存在に本気で惚れるということは、本気で嫌いになるということでもあるため、嫌いな同性キャラがいる場合、その作品自体への嫌悪感に繋がりやすい傾向があるからですね。この辺が男性のアニヲタとの違いかなと考えます。

✔一番大きなヒット要因

 原作を読んで驚いたのは、凄まじいほど原作に忠実に作ってある、ということです。アニオリパートが全くないと言ってもいいほどに忠実です。細かいギャグシーンやゆるいシーンも、書き文字のセリフすら、1カット、カット丁寧にアニメ化されていることに驚きました。キャラデザも大きく違わないので、アニメから入っても、違和感なく読みやすかったです。

 ここが非常に重要で、アニメ化であれ、実写化であれ、ヒットしたものは、原作の再現度が高い作品に限定されています。それは、ファンが作品を愛するが故の当然の帰結です。

 原作にない設定、改変、アニオリキャラなどの改変は基本的に「改悪」と呼ばれ、ファンからは忌み嫌われます。ですが、ただ忠実に作るだけではなく、鬼滅の刃、呪術廻戦のように、原作を愛しリスペクトしている方が監督を務め、原作をよりブラッシュアップさせて、元々のファンの期待値を超えていったことが、大ヒットの根本的な要因です。

 「進撃の巨人」のFINALシーズンは、これまで以上に評価が高いですが、制作会社がproduction.I.Gから、呪術廻戦と同じMAPPAに代わり、キャラデザも原作のタッチを活かしつつも、より洗練された美しい作画になっています。MAPPAは、原作に忠実に作りつつも、より洗練された作品にしていくのが上手いです。

 アニオリが全くないわけではありませんが、それがある場合は、より作品に深みを加えたり、理解を深めさせる程度でしかありません。私が感銘を受けたのは、呪術廻戦の真人と順平の会話の部分を、原作ではコミックの扉で作者が、訂正&補足説明していた部分を、真人と順平の会話で見事に再現していたところです。

 こういう繊細な配慮と高いクオリティで作られている作品ですが、改めてこうして考えると、呪術廻戦鬼滅の刃の大ヒットは当然だと思えます。原作が人気だというだけでは…それだけではヒットにつながる訳ではないということを、制作委員会の方々には、重々ご理解頂きたいです…。


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