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「バナナフィッシュ」で学ぶ、純粋な幸福とは

「この世に少なくともただ1人だけは…なんの見返りもなくオレを気にかけてくれる人間がいるんだ。もうこれ以上はないくらい―オレは幸福でたまらないんだ」

✔「バナナフィッシュ」という作品

 「バナナフィッシュ」は、かれこれ30年くらい前の少女漫画ですが、少女漫画要素ゼロですので、男性陣にも自信をもってお勧めする作品です。絵のセンスが良く、セリフも文学的だったり、小気味いいジョークもさえていて、ニューヨークギャングやマフィアの雰囲気の描き方も巧く、洋画をみているような気分になる作品です。

 17歳でニューヨーク、ストリートギャングのボスとして君臨する主人公アッシュ(CV:内田雄馬)は、その美貌ゆえに幼少期からレイプ被害にあったり、キッズポルノに出演させられていた上に、男娼として生きてきたことから、根深いところで人間不信でした。

 そんなアッシュが唯一心を許せるのが、日本人の奥村英二(CV:野島健児)です。絶対的ボスであるアッシュが、唯一涙と弱みを見せられる存在が英二でした。2人の関係は、純粋すぎるほど純粋な、友情を遥かに超えたアガペー…というのが相応しいかもしれません。

アッシュと英二2

 そして、アッシュを手に入れようと執着するマフィアのボス、ゴルツィネ(CV:石塚運昇)は、アッシュを憎む中国史マフィアのボスになった李月龍から「アッシュを手に入れるには、自分より大事な英二を狙えばいい」とアドバイスされます。

月龍

 それを実行すべく、ゴルツィネは、元KGBのスパイでありアッシュの教育係だったブランカ(CV:森川智之)に、英二の命を狙わせます。ブランカが英二を狙っていることに気づいたアッシュは、敵わないと悟り、英二を守るためにゴルツィネの元に戻ります。

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✔あらゆる才能や美貌に恵まれる事と「幸せ」はイコールではない

 生きる世界が全く違う二人が一緒にいることで、銃や暴力と無縁だった英二に、危険が及ぶことが分かっていたはずのアッシュが「自分の孤独を埋めるため」に、傍に置き続けたことをブランカは責めた後、「うさぎと山猫(リンクス)は所詮、友達にはなれないんだよ…」と哀し気に言います。

 アッシュは「この世に少なくともただ1人だけは…なんの見返りもなくオレを気にかけてくれる人間がいるんだ。もうこれ以上はないくらい―オレは幸福でたまらないんだ」と幸福に満ちた…しかし哀し気な表情でブランカに返します。

 美貌とあらゆる才能、人望にも恵まれているアッシュは、生まれ育った環境さえよければ、手に入らないものなどないであろう、完璧な人間に見えます。そしてゴルツィネは後継者とすることで、まさに全てをアッシュに与えようとしますが、その全ては、アッシュにとっては何の価値もありませんでした。

 人は一般的に、豊富な資産と豊かな才能、人並外れた美貌にさえ恵まれれば絶対的に幸せになれると思い込んでいます。ですが、そういう人たちの中には、幸せな人もいれば、決してそうでない人もいます。

 どちらが幸せかというのではなく、結局は心から信頼できる家族や友人・恋人など、互いに幸せにしたいと思いあえる人、互いに居心地がいい人、互いに理解し合いたいと思っている人が、傍にいるかどうかが重要だと言えます。 

✔自分には「いない」のではなく、出会っていないだけかもしれない

 アッシュが望むただ一つの幸福は、この世にただ1人だけ、なんの見返りもなく、自分を気にかけてくれる人がいることでしかなかったのです。それは、アッシュという人物が「例えようのない壮絶な孤独」の中で生きてきた、悲しい少年なのだということが伝わってきます。

 マフィアのボスとして恐れられたり、男娼として扱われてきたアッシュが、ごく普通の17歳の少年として屈託なく笑いあえるのは、唯一、英二の前だけでした。

 ですが、アッシュのように特殊な人生でなくとも、現実の世界でごく平凡に生きていたとしても、人生のパートナーにせよ、友人にせよ、そう思える人と出会えたなら、その人の人生は間違いなく幸福だと言えます。そして、それこそが幸福なのだと知っていることも…。

もし、自分にはそんな人はいないと思っていても、気づいていないだけという可能性もあります。特に今、婚活している人は、そういう人に出会いたいと思っている事でしょう。

 そういう存在は、自分が守るべき存在だと思っている人が、自分を守ろうとしてくれている人であり、自分を守ってくれている人を、自分が守りたいと思った人と互いに思っているに違いないのです。

あっしゅとえいじ

 つまらないことで笑いあい、豪華な食事でなくとも心が満たされる、そんな何気ない日常こそ、愛おしく宝物のような日々…そう気づかせてくれる相手が今いる方は、どうか大切にしてください…。

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