『苦福』

「あ、母さん。久しぶり!TV観てくれた?
 
  僕すごいでしょ?すごく頑張ったんだよ!」

無邪気に無差別殺人を報告する、45歳の息子。

久しぶりの会話は、拘置所のアクリル版を挟む。

狂った息子。私が育てた子。可愛く残酷な人間。

「ここの売店に大福あったから、差し入れたよ」

「えー、母さんの大福が良かった。ま、いっか」

嘘。食べられるよ。さっき、すり替えたからね。

味わう前に苦しむかな。最期の学びにはいいわ。

責任を持って殺すから、必ず尽きなさい、ね?


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