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イタリア郷土料理のお話・ピエモンテ州(Piemonte)

今回は、イタリア北西部にあるピエモンテ州について、見ていきます。


1)ピエモンテ州(Piemonte)について

イタリア (紫色:ピエモンテ州)
ピエモンテ州
「イタリア地方料理の探求(柴田書店)」より、引用

州都:トリノ(Torino)
イタリア北西部に位置し、
西はフランス、北の一部は、スイスに隣接している州。
面積は、シチリア島に次ぎ、イタリア2番目の広さです。

「山の麓(pedemonte=ピデモンテ)」という意味から名付けられ
山岳部、丘陵、平野部がある起伏に富んだ地形、
四季の寒暖、一日の寒暖差も大きい地域です。

州都トリノは、イタリア王国(サヴォイア家)時代の首都で、
イタリア統一運動の拠点、1861年統一時の首都として、
重要な役割を果たした場所でもありました。
海には面していませんが、
食材の宝庫・ランゲ(Langhe)地方もあり、魅力的な地域です。


2)州都:トリノについて

イタリア第4の都市として、博物館美や術館も多く、感性を刺激される街、
また、ミラノに次ぐ第2の工業都市として、フィアット(FIAT)等の
自動車工業の拠点でもあります。

世界遺産として登録されているのは、カステッロ広場にあるトリノ王宮をはじめ、サヴォイヤ家の王宮群
見応え十分です。

トリノ王宮
(Palazzo Madama)

キリストが十字架から降ろされた後に包まれ、身体の形が滲み残っていると言われる「聖骸布(Sindone)」が収められている大聖堂も必見です。

大聖堂
(Duomo di San Giovanni Cappella della Santissima Sindone)


19世紀後半に、ユダヤ教の礼拝堂として建てられたモーレ・アントネリアーナも、シンボルの塔として注目されていて、中には、トリノ国立映画博物館(Museo nazionale del Cinema)が入っています。

モーレ・アントネリアーナ
(Mole Antonelliana)


フランス出身の王家サヴォイア家の影響もあり、最もフランスの影響を受け、フランス流のカフェ文化が花開いた街です。
サン・カルロ広場に面して、老舗カフェが並んでいるので、そこで、ひと息いれるのも良いですね。

サヴォイア家の公爵・エマニエル・フィリベルト像
サン・カルロ広場にて
(La Statua di Emmaniel Filiberto in Piazza San Carlo )
老舗 カッフェ・トリノ
(Caffe` Torino)
カッフェ・トリノで購入したバーチ・ディ・ダマ


サッカーチーム・ユベントス(JUVENTUS)の本拠地であることも
忘れてはいけません。

サッカーチーム・ユベントス(JUVENTUS)


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トリノ以外にも、訪れたい地域があります。
食材の宝庫・ランゲ地方(Langhe)。
この地域には、「ピエモンテの葡萄畑の景観」として、複合的な世界遺産として登録されている場所もあります。


☆アルバ(Alba)

トリュフ(Tartufo)の名産地。
特に、白トリュフは、希少価値があり、秋に開催される「白トリュフ市(Mercato mondiale del tartufo bianco d'alba)」には、
採れたての白トリュフを味わうために、世界中から観光客が訪れます。
私は、ここアルバに滞在し、ランゲ地方を巡りました。

サン・ロレンツォ大聖堂
(Cattedrale di San Lorenzo)
トリュフオイルなど、加工品も多く作られています


☆ブラ(Bra)

スローフード運動・発祥の地
歴史地区のバロック建築も美しいです。
スローフード協会認定の料理を食べることも出来ました。

ブラの青空市
(Mercato a Bra)
「Slow Food」のロゴ入りプレートで
ピスタチオのセミフレッド (Semifreddo al pistacchio)


☆バローロ(Baloro)

イタリアワインの王様「バローロ」が造られている村。
周囲は、ブドウ畑に囲まれ、村のメイン通りには、赤ワイン「バローロ」を扱う店が連なっています。

バルバレスコ(Barbaresco)
バローロと並ぶ赤ワイン「バルバレスコ」の産地。
ここも、訪れたかった村ですが、交通の便が悪く、私は行けませんでした。
車のある方は、是非、訪れる候補地リストにあげて頂きたい村です。

バローロ村
バローロ村から眺めるブドウ畑



☆アスティ(Asti)

地理的に、ピエモンテの交通の要所であり、12世紀には自立と繁栄を得て、商業の中心地だったアスティ。
当時、多くの聖堂、高い塔を建設され、「塔の街」として有名です。
イタリアのスパークリングワイン・スプマンテ(Spumante)の名産地でもあります。

ヴィットリオ・アルフィエリ劇場 (Teatro Vittorio Alfieri)
トロヤーナの塔 (Torre Troyana:13世紀建設)


広大なピエモンテ州。
まだまだ、訪れたい場所、街に溢れています。

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3)ピエモンテ料理の特徴

ピエモンテ料理は、広大な農地から生まれた素朴な家庭料理、そして、
フランス・サヴォイア家の影響が残る貴族料理など、幅広く、様々。

平野部では、畜産業が盛んで、上質な食用牛が飼育されています。
山岳部では、放牧がされていて、個性豊かなチーズをはじめ、
バター、生クリームなどの乳製品も製造。
また、南に接しているリグーリア州の影響で、北イタリアでは珍しく、
オリーブオイル、にんにく、アンチョビ等も多用する地域です。

パダーナ平原では、ポー川を水源とした稲作も盛んで、イタリア国内の米の生産50%以上をまかなっています。
卵麺を主流に、生パスタも作られ、また、ポレンタ(とうもろこし粉)も、好まれます。

丘陵地では、ブドウ畑が広がり、銘醸ワイン(バローロ、バルバレスコ、アスティ等)が、多く生産。
ブドウに適さない地では、多くの野菜類、果実類、ヘーゼルナッツ等の栽培が盛んです。

海に面していないので、メイン料理には肉が使われることが多いです。
一年を通して、州内で飼育された牛肉、仔牛等、そして、冬にはジビエ(野うさぎ、鹿)
川魚などの淡水魚(マス、コイ)は、食べられています。

※ お菓子については、後日、別途、記事でまとめます


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① 肉料理・加工品

レストランのメニューに、必ずと言って良いほど載っている「ステーキ(Tagliata)」。
牛、仔牛、そして、牛タンなどを使い、提供されています。

仔牛のタリアータ&カポナータ (アルバにて)
(Tagliata di vitello con Caponata)
地元のファッシーノ牛のタリアータ(アルバにて)
(Tagliata di Manzo "Fassino")

牛タンのソテー・赤玉ねぎとパセリのソース (ブラにて)
(Lingua di manzo con cipolla rossa alla salsa di prezzemolo)


牛肉赤ワイン煮込み使うのも、地元の銘醸ワイン「バローロ(Barolo)」。

バローロワインで煮込んだ牛肉(バローロ村にて)
(Manzo al Barolo)


リグーリア州の影響もあり多用されているオリーブオイル、にんにく、アンチョビ。
これらを使った「バーニャカウダ・ソース」、そして「仔牛のツナソース」は、ピエモンテ郷土料理として地元でも食べられていますし、日本でも知られています。

焼きパプリカのバーニャ・カウダ (Bagna cauda con peperoni grigliati)
(ピエモンテ州・アスティ(Asti)郊外のアグリトゥーリズモにて)


仔牛のツナソース(アルバにて)
(Vitello tonnato)


② パスタ&米料理

パスタは、卵麺が食べられています。
卵黄をたっぷり使い、より黄色いパスタ「タヤリン」は、ピエモンテ州ならでは。
また、指で、きゅっとつまんだ様な形に仕上げる、長さ2~3㎝程の小さな詰め物のパスタ「プリン」や、少し大きめの「アニョロッティ」も作られています。

タヤリンのミートソース(バローロ村にて)
(Tajarin con ragu`)


ほうれん草入りプリン・炒り卵のソース(アスティにて)
(Pulin di spinaci con salsa di uova soda)
アニョロッティ・セージバターソース
(Agnolotti al burro e salvia)

米料理もあります。
リゾットも作りますが、味をつけたご飯を、パプリカに詰めて、オーブンで焼き上げる郷土料理もあります。

ピエモンテ風 パプリカの詰め物のオーブン焼き
(Peperoni ripiena al forno alla piemontese)


③ チーズ料理

日本でも知られている青かびチーズのゴルゴンゾーラ(Gorgonzola)をはじめ、バラエティー豊かなチーズが、多く造られています。
料理に使用したり、食後、ジャム等と一緒に食べたりします。

食後のチーズ盛り合わせ(バローロ村にて)
(Formaggi misti)
フジッリ・ゴルゴンゾーラソース
( Fusilli alla salsa di gorgonzola )


州内で生産され、原産地名称保護(DOC)されている主なチーズは、下記の通りです。
チーズ好きの方は、是非、チェックして味わって頂きたいです。

写真は、
「チーズの教本(NPO法人チーズプロフェッショナル協会)」より、引用

☆ 牛乳を主原料とするチーズ

   ブラ(Bra)    カステルマーニョ(Castelmagno)  ラスケーラ(Raschera)
トーマ・ピエモンテーゼ   
  タレッジョ(Taleggio)      ゴルゴンゾーラ
(Toma Piemontese)                      (Gorgonzola)


☆ 羊乳、山羊乳を主原料をするチーズ

  ムラッツァーノ           ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ
 (Murazzano:羊乳)          (Robiola di Roccaverano:山羊乳)


④ ワイン

イタリア国内でも、1,2を争うワインの名産地です。
特に、ランゲ地方(Langhe)で造られた銘醸ワインは、イタリア国内だけでなく、世界中で飲まれ、愛されています。

バローロ(Barolo)、バルバレスコ(Barbaresco)、アスティ(Asti)は、日本でも多く流通し、特に、やや甘口のアスティ産スパークリングワイン(Spumante)は、女性にも人気です。
最近は、辛口の赤ワイン、ロゼワインも造られていて、輸入されています。

バローロ 1999年リゼルハ
(Barolo Riserva)
アスティ産・甘口スーパークリング・ワイン
(Asti Spumante)

微発泡の、アスティ産・甘口ワイン「モスカート・ダスティ(ラ・カウドリーナ)」
(Moscato d’Asti / La Caudrina)
アスティ産・辛口ロゼワイン 「グリニョリーノ・ダスティ」
(Grignolino d’Asti)


その他の、ピエモンテ州滞在記は、下記から、ご覧頂けます。


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いかがでしたか?
イタリアで2番目に面積の広いピエモンテ州。
イタリア統一運動の拠点として、重要な役割を果たし、多くの歴史的遺産を有する地域。
また、その広大な土地、地形だからこそ培われてきた食文化があり、魅力に溢れています。

私は、10日程の滞在で巡ったので、見るべきところが、まだまだ残っているなと、この記事を書きながら感じました。
また、ピエモンテ州に再訪できることを楽しみに。

今後も、引き続き、イタリアに関する情報を、様々な形で、お伝えしていきます。
どうぞよろしくお願いします。

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マガジン「オフィスアルベロ・レシピ集~neo~」からも、イタリア料理を楽しんで頂けます。
是非、ご覧ください。


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最後に
 ~これまでの「イタリア郷土料理のお話」~


☆ヴァッレ・ダオスタ州


☆ヴェネト州


☆リグーリア州


☆フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州


☆ウンブリア州


お読み頂き、ありがとうございます。 サポート頂ければ、心強いです。