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小説・詩小説

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小説のようなものや短い詩の物語のようなものなどをまとめたお部屋。
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2022年7月の記事一覧

【詩小説】多摩川、たそがれ

【詩小説】多摩川、たそがれ

ヤクルトの飲み口を指で剥がせたら大人だよ。

多摩川の土手で肩を並べて座っていた親子らしき二人がヤクルト1000を飲んでいた。
少年は舌で穴を広げたヤクルト1000を半分ほど飲んでいたが、少し考えてから人差し指で残った蓋の銀紙を縁に押してくっつけた。
それを横目で見て微笑む三十代と思われる父親らしき大人のヤクルト1000の飲み口は銀紙が全て剥がされて縁はつるつるだった。

いつから人は大人になるの

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【詩小説】年上の同級生

【詩小説】年上の同級生

どうしてその学校を選んだのですかと問われれば成績に見合った学校だったのでと答える。
そんな人は多いはずだ。

校風に惹かれて…
教育理念に共感して…

どちらも頭に【御社】と付けたくなる。
就職面接のかしこまった理由でもあるまいし。
ましてや高等学校の話である。
義務教育ではないにしてもせめて高校だけは卒業してねと諭される世の中
高等学校は6・3・(+3)の義務教育の一環となっている。

縁もゆか

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【詩小説】マグリット・マグネット

【詩小説】マグリット・マグネット

青い春は18でツグミになる
白い梔子(くちなし)の偏西風を渡り
再び小さな実を結ぶことを願う

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ふたつの青い春はひとつの磁石だった
U字型に曲がったマグネットだった
わたしとあなたは異なる磁極をもっていた
お互い自発的に波を描いていた

わたしたちは鏡に向かってにらめっこをした
あなたは決して笑うことはなかった

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