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鳥インフルエンザにかかったオジロワシを、ヒト用抗ウイルス薬で治療し、野生に帰す。

こんにちは、翼祈(たすき)です。

鳥インフルエンザは、島国である日本にも、野鳥に乗って運び込まれ、毎年重大な社会問題となっています。

鳥インフルエンザが、1997年に海外で初確認され、日本では2004年に初確認されました。

鳥たちにとっても脅威な鳥インフルエンザですが、日本でヒト用の治療薬によって回復し、野生に帰ったという話を最近耳にしました。

2024年5月14日、猛禽(もうきん)類医学研究所、北海道大学大学院獣医学研究院微生物学教室、環境省、国立環境研究所、塩野義製薬などの共同研究で、高病原性の鳥インフルエンザを発症し、猛禽類医学研究所で治療を行い、リハビリを受けていたオジロワシ1羽が、北海道釧路市の郊外で放鳥されました。

鳥インフルエンザを発症したオジロワシが野生復帰するのは2例目だといいます。ヒト用の抗ウイルス薬を経口投与する世界的にも類を見ない治療を行い、希少鳥類への効き目が証明されました。

今回は1匹のオジロワシが野生に帰るまでの歩みについて、発信します。

鳥インフルエンザに感染した、1匹のオジロワシが、野生に帰る日まで、行われた共同研究


放鳥されたのは、2022年に生まれた亜成鳥(性別不明)で、全長80cm、翼開長194cm、体重3800gのオジロワシです。放鳥された場所はオジロワシの餌となるエゾアカガエルが大合唱する絶好の放鳥環境でした。

キャリーケースのファスナーが開けられてもなかなかオジロワシは出ようとしませんでしたが、猛禽類医学研究所の齊藤慶輔代表に促されると、大きく翼を広げ、青空の下、力強く急上昇していきました。近くの木に留まった後で、暫く経つと山の方へと消えていきました。

2024年1月6日、このオジロワシは釧路市内の民家で衰弱して動けなくなっているとの通報を受けた環境省釧路自然環境事務所が、猛禽類医学研究所に治療を依頼して行われました。収容した直後は翼を広げたまま、腹ばいになっていました。

このオジロワシにPCR検査を行うと、A型インフルエンザ陽性が確認されたため、陰圧隔離室に収容、ヒト用の抗ウイルス薬を経口投与しました。北海道大学の検査でH5N1亜型の高病原性と判明しましたが、抗ウイルス薬の効果があって保護してから13日目までにウイルスの排せつが止まりました。

歩き、自力で餌を摂ることもできる様になったことから飛行訓練用ケージや屋外ケージに移し、野生復帰に向けたトレーニングを積み重ねていきました。

このオジロワシは足環(あしわ)と最新式の衛星送信機が装着されています。回復が不十分と判断された場合、再び衛生送信機から放鳥したオジロワシの居場所を突き止め、回収してリハビリなどを継続します。衛星送信機はソーラーパネルがバッテリーになっていて、半永久的に追跡ができるといいます。ですが、鳥への負担を軽減するため、身体に背負ったリボンは長くても7年間しかもたない様な仕組みになっています。

衛星送信機による追跡によって、渡りの高度や移動経路などが把握できる以外にも、放鳥後にどんな場所でどの様に暮らしているのか、車や列車にはねられる様な危険な場所で暮らしていないかなど色んなデータを収集することもできます。これから事故予防策などにも活用できる貴重なデータのフィードバックが期待されるとします。

2024年2月に放鳥された1羽目(成鳥)は現在、北見からサロマ湖にかけての地域で自力で生き永らえています。猛禽類医学研究所の齊藤代表は「今回もこのまま自然界に戻って行って貰いたいです」と声援を送っています。

参考:鳥インフルにかかったオジロワシ 世界的にも珍しい治療で野生復帰 毎日新聞(2024年)

このオジロワシが受けたのは、ヒト用の抗ウイルス薬を経口投与するという画期的な治療でした。猛禽類医学研究所によると、過去3年間でトータル13羽にヒト用の抗ウイルス薬の投薬が実施され、その中の9羽の治療に成功しました。現在も数羽を治療中ですが、この中の何羽が野生復帰できるかは分かっていないといいます。後遺症に悩まされている個体もいて、特に鳥インフルエンザの発症で脳に症状を抱えた個体の野生復帰は難しいかもしません。

猛禽類医学研究所の齊藤代表は、「ヒト用の抗ウイルス薬が希少種・オジロワシの治療にも役立てることが分かりました。治療しなければ死んでしまう希少種をぶっつけ本番で治療、野生復帰までもっていけました。幸い致命的な副作用も無さそうです」とヒト用の抗ウイルス薬での投与での治療に手応えを感じた様子でした。

そして、「これから半年間、オジロワシが生きていれば、野生に戻っても自活できる様になったと判断します」と自信を覗かせました。

私と鳥の思い出

私が仕事をしている久留米市では、鳥たちを飼育している鳥類センターがあって、小学校の頃、遠足でその付近や、図工の時間に絵を描くためによく行っていました。

私は子どもの頃からフクロウが大好きで、図工の時間で鳥を描く時にもフクロウを選んで描きました。もうその絵はありませんが、結構特徴を捉えていて、自分で言うのもなんですが、自信作でした。

今でもその鳥類センターはあるのですが、少し駅から離れて、行くなら今ではバスを乗り継ぐしかないので、そこから徒歩ですし、なかなか行こうと思わなくなりました。

もう長いこと行っていないので、今でもフクロウがいるか、定かではありませんし。

この記事に出て来るオジロワシは、鳥インフルエンザは、感染症法上の2類感染症に指定されている強毒性で、日本でも野鳥から運ばれたことで、国内のニワトリなどが感染し、殺処分して、大規模な消毒を行わなければならず、2023年、卵の高騰が社会問題になったことが記憶に新しいと思います。

その鳥インフルエンザをヒト用の抗ウイルス薬で治療し、野生に帰すまで回復して、野生に帰って行った。症例も少ないですし、極めて珍しいことだと思います。

今後数年間、追跡などでその動向を見守りますが、野生に戻った後でも、元気で大空を飛んで欲しいなと思いました。


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