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見たり!「集団無視」の正体

今日もまた、集団による、謎の「完無視」の話。
少し前に、ある会社のオフィスに、ただ配達に来ただけの私の友人を、そこにいる何十人もの社員全員が「完無視」する現場に遭遇した話を書いた。↓

暗い闇を感じる、謎の「集団無視」。「こんな会社最悪だな」ぐらいにしか思っていなかったのだが、なんと、この私の身にも起きてしまったのだ!

こうなると、この問題はやはり社会的なものを反映しているのかもしれないと思ってしまう。

それは先日、職場で仕事をしていた時のこと。

プルルルル、プルルルル、電話が鳴り始めた。自分の周辺のグループの電話の着信音ではない。集合電話にも着信の点滅はない。携帯の音ではない。どこの部署の電話だろう。プルルルル、プルルルル、鳴り続けている。

このオフィスは色々な部署が集まっていて、数十人が一つの大部屋で働いている。
プルルルル、プルルル、電話は鳴り止まない。「なんで誰も取らないんだ」「仕方ない、私が探そうか。面倒くさいな」と立ち上がった時、ちょうど目の前の庶務を担当する女性も立ち上がって動き始めていた。他の人も同じように、どこで鳴っているんだとキョロキョロし始めた。

私も、その女性についていく感じで、音が鳴っている場所を探す。そして、突き止めたのが、部屋の奥の奥。そこには、あるグループで責任者をしている高齢の男性がどかんと座っている。その人の目の前の固定電話が鳴っていたのだ。

プルルルル、プルルルル。まだ鳴り続けている。確かにこの電話だ。
庶務の女性がその男性に言う。

女性「あっ、すみません、その電話が・・・」
男性「・・・・」

うわっ!デジャブ感!出た!完無視だ!

確かに仕事がかなり立て込んで追われているようではあるが、この女性に全く目もくれず、黙々と端末を触っている。この男、目の前で鳴り響いている電話を無視しているし、今心配して話しかけてきた女性の存在も完全に無視している。

そして驚くべきは、周囲の人たち。周囲には10人以上の部下がいて、全員が自分の端末をじっと見つめて仕事を続けている。

うわっ、この人たちも「完無視」だ。まさにデジャブ。自分の職場で起きるとは!

庶務の女性は、困り果てて、そこに立ち尽くしてソワソワしている。
「あっ、あのお・・・」

鳴り続けている電話は、その責任者の男の目の前にあるので、彼女も勝手に取るわけにもいかないし、何よりも、彼女はこの男と周囲の十数人に、完全に存在を無視されている。

ちなみにこの男、すでに退職して今は関連会社から来ているのだが、現役時代は、”なんとか局長”とか相当偉い幹部職を歴任した男とのこと。私は直接話したことはなかったが、職場では”デキる男”という立ち位置だった。

「(心の声)そりゃないだろ!もし何か問題があって電話を取らなくていいなら、一言そう言えばよいだけだろ!」私は怒りを抑えられず、前回の配達の友人のことを思い出し、よし、自分もやるぞ、と腹から声を出した。何よりも目の前で庶務の女性が理不尽に無視されて困っているのだ。

私「すみません!電話取らなくていいんですか? ずっと鳴っていて、みんな心配しています。」
男「・・・・・」

うわっ、私も完無視された!しかし、私は見逃さなかった。
私の、どんと構えた低音の声を聞き、周りにいた十数人が、瞬間的にビクッとしてこちらを見て、また気まずい顔で、気がつかないふりをして瞬間的にすぐに自分の作業に戻ったのを。ほんの0.001秒程度の間の出来事だ。

見たぞ!集団無視の正体!周辺の彼らは、今起きていること、自分たちがとっている態度は間違っていることを間違いなくわかっている。全てはこの責任者の男。彼が電話を取らない、という圧を周囲にふりまき、魔法がかかったように動けなくなって、へんてこりんな態度をとっていしまっているのだ。部下の、あの気まずそうな、恥ずかしそうな顔、そして慌ててパソコンの画面に目を戻したあの表情は、しっかりと見た。

いやいや、そんな勝ち誇ったようなことを言っている場合じゃない。私も完全に無視された。そして、庶務の女性は、まだ立ち尽くしてソワソワしている。今起きているこの状況。こんなの絶対に変だ。私は、思わず発声した。

私「おいおい、無視かよっ! ○○さん(庶務の女性)、もういいですよ、席に戻りましょう。放っておけばいい。こんなの完全におかしいだろ!」
男「・・・・・」
周囲の人たち「・・・・・」
プルルル・・・鳴り続ける電話。

あちゃー、やってしまった(笑)

思わず怒りをストレートに表現してしまった。特に昔の上下関係がまだものを言う、この遅れた職場では、目上の人にこの表現は失礼だし、これは、ちょっと感情的すぎた。とっさの時って、気の利いた一言、相手に恥ずかしいと思わせるような紳士の一言を、バシッとはなかなか言えないものだ。

こういう時に、もし彼が直属の上司だったら、私の次の異動や査定に大きく響くだろうというのは想像に難くない。そういう理不尽な左遷をいっぱい見てきた。しかし幸い彼とは部署も違う。そして何よりも、よかれと思って電話を探しに来たこの庶務の女性の困りようを、多くの人が放置している状況は許せなかった。これぐらい言っても何も悪くなかろう。

なんて、考えている間も、プルルルル。プルルルル。何度も電話は切れては、またかかってきているのだった。

この一件で、暗〜い気分になっていた時、例の配達の知人からメールをもらった。

なんと、この前「完無視」されたあの会社で、今度は声をかけたら、不機嫌な顔をした女性が出てきて、彼の手からその商品を黙ってひったくってオフィスの中に消えていったそうな。そう言えば、前回の記事でも、高齢の女性社員が「そんなのは女に言わないとだめよ」と言っていたのを思いだした。前回の一件以来、オフィスでまた何か変なことが起きていたのかもしれない。

もう、手の施しようがないな、と思いそうになったものの、自分の職場でも同じことが起きた悲劇は、私には相当衝撃だった。その余韻はまだ残っている。

これ、属人的なことではなく、社会に蔓延っている空気と関係していないか。問題のある人物よりも、その周囲の人たちの態度がものすごく気になる。しかも、たかが電話の着信をめぐって、なぜこんな空気になってしまうのだろう。

すべてリーダーが悪いというのも違いそうだ。
私たちひとりひとりが、明るい発想で、ちょっと勇気を出して、「”変な空気は”読まなくてよい」と考えたら、こんな状況は変えられるかもしれない。

プルルルル。プルルルル。きょうも電話が鳴っている。
さあ、さっと取って笑顔で応対!まずは隗より始めよ、だ!

あっ最後に中国語でひとつだけ。「まず隗より始めよ」は、

先从隗始(or 先自隗始)

xiān cóng wěi shǐ=シエン・ツォン・ウェイ・シー


・・・というらしいです。

では!

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きょうも最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ😀


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