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目目、耳耳

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2019年5月の記事一覧

いても、いなくても(よい朝を、いとしい人/plenty)

いても、いなくても(よい朝を、いとしい人/plenty)

4時、23分。
夕方じゃなくて、朝の。
6時どころか5時にもなってない。
早く起きすぎなんだ、僕は。

パートナーを起こさないように、
そっとベッドを出る。
色々と身支度を済ませてから、
PCを開いて、日課の日記を書き始める。
だいたい、6時から6時半には書き終える。
パートナーは、まだ起きてこない。
7時まで、そっとしておくことにする。
「僕の好きな人がよく眠れますように」
そんなタイトルの本も

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いのる(セッちゃん/大島智子)

いのる(セッちゃん/大島智子)

僕のパートナーは、赤ん坊の匂いがする。
もしくは、母親の匂い。

どっちも嗅いだことはないし、
どっちも似たようなものだけど。

それをパートナーに言ってみたら、
あはは、と笑われた。
あはは。

僕は、テレビを見ない。
というか、持ってない。
ラジカセはあるから、
ラジオは毎朝聴いている。
目当ては、7時前の5分ニュース。
いい知らせも、悪い知らせも、1分もしない内に流れていく。
「そんなことが

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そこにいる、そばにいる(ふしぎ荘で夕食を~幽霊、ときどき、カレーライス/村谷由香里)

そこにいる、そばにいる(ふしぎ荘で夕食を~幽霊、ときどき、カレーライス/村谷由香里)

人って、ごはんが無いと生きていけないよなって、つくづく思う。
当たり前のことだろって、言われそうだけど。

僕には『ごはん』っていう言い方にこだわりがある。
『食事』じゃなくてね。
人間の生命維持には、『食事』が必要不可欠だ。
でも、『ごはん』にはそれ以上の意味を孕んでいる気がする。
例えば、誰かとそれを供にするときは、
『ごはん』って言う方が多いんじゃないかな。

というわけで、本題。
「ふしぎ

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どもる、ともる(螢/村上春樹)

あれは、大学に入学したばかりの頃。
僕は、とても美しい人に恋をした。

何かの講義を初めて受講したとき、
その人は、僕の隣の隣の隣の席くらいにいた。

たまたま、視界の端に入っただけだった。
それだけだったのに。
僕は、そちらの方をふり返っていた。

本当に、美しい人だった。
髪の毛は、肩を少し通り過ぎるくらいの長さで、
いくつかの房が、前の方にすべり落ちていた。
僕は、さっそくできた友人と会話に

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かぐわしき(Lemon/米津玄師)

「いきる」は、
漢字にすると「生きる」になる。
「逝きる」になることは無い。

「いく」は、
漢字にすると「逝く」になる。
「生く」になることは無い。

けれど、
「いきなさい」は、
「生きなさい」にも、
「逝きなさい」にもなる。

僕には、
「生きなさい」とも、
「逝きなさい」とも、
促したくなる人はいない。

もちろん大切な人はいるけど、
その人には、そんな言葉は必要ない。
少なくとも、今はま

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