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エッセイ

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今までの日々や、ささやかな僕の奮闘を書いていければと思います。
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#小学生

「星に願いを」

「星に願いを」

大阪府枚方市は七夕伝説ゆかりの街として知られている。
枚方市駅のすぐ近くを流れる一級河川の天野川は、天上の天の川になぞらえ平安歌人によって七夕にちなんだ数多くの和歌が詠まれた。
現代でも七夕イベントとして枚方七夕まつりが毎年開催され、七月七日には街中が色とりどり短冊と地元民で埋め尽くされる。

当時、僕は枚方市に隣接する寝屋川市に住んでいたので枚方の七夕まつりを目にすることがあり、その日も

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「日本地図」

大人になってから知り合った人や後輩との会話で「どこ出身?」という話によくなるのだが、いつも僕は困惑してしまう。

「俺、大分出身なんですよ」と言われてもピンと来ず、「どの辺やったけ?」と聞くものの、「宮崎の上ですよ!」とツッコミ口調で教えられた後に、「はいはいはい」と分かったフリをするのが精一杯なのだ。
恥ずかしい話だが、僕は日本の都道府県をほとんど覚えていない。日本地図を見てもはっきり分

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「特殊技能」

「特殊技能」

シチューやカレーをお玉ですくう際、僕はお玉の中に肉を入れずにすくうという特殊技能を身につけている。これは肉嫌いの僕が小学生時代に、魔の給食を乗り切る為六年の歳月をかけて編み出した秘技である。
そんな大げさなことかよ!とお思いになる方もいるだろうが、そりゃ時間をかけじっくりお玉を覗きながらやれば、肉を入れずにすくうこともある程度は可能だろう。しかし僕はたった一回すくう間に、担任の教師が何の違和も

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「生まれ変わる準備」

「生まれ変わる準備」

小学校に上がると学童に通うことになったのだが、初めて学童に連れて行かれた日のことを、僕は保育園に初めて連れて行かれた日と同じように鮮明に覚えている。
保育園の時とは違い、小学一年生の僕は学童がどんな場所なのか、どうして自分が学童に通わなければ行けないのかをちゃんと理解していた。

その日は、家を出るまで降っていた雨のせいでアスファルトは濡れ、空はどんよりとした灰色の雲に覆われていた。

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